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3話
駐車場が見えてくると防波堤を降りた。むつもようやく腰に差している物から手を離していた。
「ホテル戻る?」
「戻ろっか、待ち合わせロビーにしちゃってるしね。水着も脱ごうかな」
むつは颯介の車の後部座席に日本刀をいれ、バイクにまたがった。
颯介はちらちらとむつの様子を伺っている。いつの間にか、颯介の所に戻っていた管狐がむつのもとに向かっていった。
「あら、どうしたの?」
管狐の頭を撫で、むつは笑っている。管狐は颯介の所に戻ろうとはせず、むつのパーカーの中に入っていく。そして、顔だけ出した。
颯介が何も言わなかったので、むつはそのままエンジンをかけてゆっくりバイクを発進させた。
むつの姿が見えなくなると、颯介と祐斗も車に乗り込んだ。
「むつさん元気ないですね」
「そうだな。色々考えてるんだろうな」
颯介は車のエンジンをかけて、ゆっくりと車を走らせた。駐車場とは言えど、ロープで場所を区切っているだけの簡単な物で、下はコンクリートではなく砂だった。
「これなら毎日、洗車したいな」
巻き上がった砂が車に付くのを嫌ってか、颯介はそう呟いた。




