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3話
むつと颯介も祐斗同様に振り返ると、確かに海の家の方はぼんやりと白身がかっていた。
「気付かなかった」
「うん、ちゃんと見えてるし…祐斗が戻ってくる時にはもう霧出てた?」
「行った時から少し出てましたよ。今は少し濃くなったかな、って気がします」
むつは、ろくに吸えずに灰が長くなっていたタバコを一口吸うと火を消した。
「どう思う?」
颯介も祐斗も何も言わなかった。流石のむつも不安げに辺りに視線をさ迷わせた。三人は黙ったまま、静かに腰を浮かせていつでも動ける体勢を取っていた。
視界があまりよくない分、どこから何が来るのか分からない不安があった。だが、そんな不安をよそに霧は少しずつはれていった。
「普通の霧じゃないみたいだ」
「海にいるやつの仕業って考えたら良いのかしら?」
むつは、方膝をついたまま霧のかかっている海の方を凝視していた。左手は、自然と腰に差している物に触れている。
「だろうな…このまま霧がはれたら戻る?」
「うん、下見に来たつもりだったけど何も分からずってのはあれだけど」




