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3話
颯介に座るように、隣をぽんぽんと叩くと颯介は大人しく腰を下ろした。
「祐斗も普通の人とは違う力があるわけで。その力をある一定の範囲なら追えるっていうか、掴めるっていうか、ね」
「あぁ、蜘蛛の時みたく捕捉出来るってわけか…こっそり練習してんの?」
「そりゃ、それなりに」
むつは視線を海に向けたままだった。
短くなったタバコをコンクリートの上に押し付けてつぶすと、浜辺に落ちないよう横に置いた。
「仕事熱心だ」
「ありがと、颯介さんには負けるよ」
大丈夫とは言ったものの、心配なのかむつは、落ち着きなくすぐに2本目のタバコに火をつけていた。
「まぁ祐斗君は狙われやすそ…もしかして?」
じろっと颯介に睨まれ、むつは居心地悪そうに身動ぎをした。
「ちょっと、だよ。ちょーっとさ動くかどうか知りたくて」
「エサにしたのか」
「まぁ、ね。でも大丈夫そう戻ってきた」




