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3話
その巨大なうねりの上だけは薄暗く、雲がかかっているかのように霧も出ていた。だが、それは霧に見えただけで実際はそうではなかった。
「出てったのって、あれかな?」
霧に見えていたのは、無数の霊だった。辺りを霧のように霞めてしまうほど大量の。
「そう…でしょうね」
「俺には霧に見えるけど」
「普段、視えない颯介さんにも見えてるって事は濃いって事だね」
「多すぎて視えちゃうわけね」
颯介は関心したように腕を組んで、大量の霊と巨大なうねりを見ている。
「あっちは蛇みたいだけど」
相手がどう出るか分からず、手の出しようもなく、様子を見るしか出来ない。
「無害ならほっとく方針ですよね」
祐斗が確認するように、むつを見た。
「無害だと良いな、水着買ったけど泳いであそこまで行くのはちょっと」
「いや、どう見ても宮前さんの持ってきた仕事があれでしょ?」
むつと祐斗は認めたくなかったのか、黙っていた。だが、颯介にじっと見られ、むつは肩をすくめた。
「ですよねぇ」




