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3話
三人は浜辺を歩きながら、つい先程まで居た海水浴客がほとんど居なくなってる事に気付いた。
「随分と人が減ったね」
昼間ほどではないが、まだ遊んでいる人たちがまばらに居たはずだった。
「一気に帰ったんですかね?そろそろ海っても寒いでしょうし」
気温は高いがそろそろ暗くなってくる時刻だ。海から吹く風は、ほのかに冷たく感じた。むつは捲っていた袖をおろして、手の甲あたりまで服を引っ張った。
「カップルにとっちゃあ良い時間でも、そろそろ嫌な時間帯だよ」
パーカーのポケットに手を突っ込み、むつはきょろきょろしながら歩く。
「この薄暗い時間は何か嫌ですよね」
「逢魔が時って言うしな」
祐斗と颯介もむつと同じくなろだろう。少しだけ、歩くスピードが早くなっていた。
「お馬…?」
耳慣れない言葉を聞いたのか、祐斗は説明を求めるように颯介を見上げた。
「魔と遭遇する時間帯って事」
「薄暗くなると相手の顔が見えないでしょ?誰そ彼はって相手に聞かなきゃいけない時刻、それが語源で黄昏時って言うしね」
颯介とむつが交互に説明をしてくれた。




