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3話
「何だったの?」
「たぶん、霊ですよ。しかも、かなりの量のそれが一気に出ていきました」
祐斗が自信なさげに言った。そして、むつに確認を取るように見ると、むつは人指し指を下唇に当てて考えていた。
「それで、あの嫌な感じがなくなったのね…ふん、コウモリかよ」
「けど、どこに出ていったんだ?」
颯介がそう言うと、はっとした様子のむつが駆け出した。出ていったのだ、来た道を戻ってどこに向かったのか見る必要がある。
むつが走り出すと、颯介と祐斗も少し遅れて走り出した。
あの強風の様な勢いだ。人が走って追い付けるはずないのか分かりきっている。
洞窟を出ると光で目がくらんだ。むつは、掌で日影を作って海の方を見たが何も見つけられなかった。
追い付いた祐斗も辺りを見回した。むつの視線に気付いたが、首を振るしかなかった。
「見失ったね」
颯介と祐斗は残念ながら頷いた。