一目惚れは世界を救う。
世界は孤独に満ちている。
誰も私を愛さないし、見つめない。
私は存在しないのと同じだ。
誰よりも強い力を持つが故、私は嫌われた。
避けられた。
閉じ込められた。
この世界の端の塔で、一人寂しく死んでいくのだ。
ずっと、そうだと思っていた。
一人の男(勇者)が来るまでは……
「あれ?ここに凶悪な魔術師がいると聞いたんだけど?」
「…目の前にいるだろう?
私が凶悪な魔術師だ」
「は?君が?嘘でしょ?」
「嘘をついてどうする?
こんな寂れた塔に住んでいるのは私だけだ」
じっと男を見つめ、私は告げた。
男はまだ信じられないようだった。
「…本当に?」
「本当だ。信じないのであれば、信じるような力を見せてみようか?」
男が恐れるほどの力をふるい、塔の壁を吹き飛ばす。
これで男は恐ろしくなって逃げるだろう。
今までの男達のように。
「…すっげぇ!!!!」
吹き飛んだ壁を輝く瞳で見つめて男は叫んだ。
「超かっけぇ!こんなに可愛いのに、こんなに強いなんて反則だ!」
意味不明なことを男は叫ぶといきなり私の両手を握りしめた。
思わず眉をひそめて男を睨んだ。
「お前、私が恐ろしくないのか?」
「全然!むしろ、興味津々なんだけど。
こんなに強い魔術師なんて見たことねぇよ」
ぎゅっと握る手を振り払うことも出来ず、私はただただ戸惑った。
「俺、君のこと好きになっちゃった。
だから俺もここに住んでもいい?」
ていうか、むしろ住むけど。と男はニヤリと笑う。
「……は?」
理解不能の言葉に呆然とする。
「とりあえず、名前教えて?」
いきなり押しかけてきた男によって、私の孤独は破られる。
私は愛される喜びを知り、そして世界の美しさを知った。
もう、世界は孤独ではなかった。
もう孤独には戻れない。