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魔法と剣とファンタジーと  作者: 華夏オリト
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私の名前

今回は少し短めです。


ドラゴンに名前を聞かれたとき、私は自分に名前がないことに気が付いた。


本当に馬鹿げた話だけど、本当に何も思い浮かんでこなかった。

私は自分に問いただしたかった。自分は何者なのか!って。

唯一思い出せるのは、私が『日本人』だったってこと。

考えたり、喋ったりする元となる知識はそこからきてる。


私が話す日本語はこの世界ではドラゴンのような人間ではないもの達が話す魔族の言葉。正確に言うなら私が発した日本語はその発音ででるわけじゃない。

なんて表現していいかわからないけど、日本語で話したつもりの言葉は私の口から出た瞬間に違う言葉になってでる。

いかにも魔族とかが発していそうな感じの奇妙な言葉だ。

反対に聞くときも同じ。私には日本語の意味になって頭に入ってくる。


で、私が苦手だった英語がこの世界の人間が話す言葉だと教えてもらった。

もちろんこちらも日本語の例にしかり。

実際はきっと英語で聞こえてきても喋ったとしても私がそう理解してるだけだ。


とりあえず、私にもはっきり説明できないことはおいておいて

ここで重要なのが、私が『日本人だった』ってとこ。

『だった』だ。

今の私はその『だった』頃の記憶があるだけということ。

だから今は日本人ではない、ということ。



ドラゴンの住処には足を一歩踏み出しただけだったのに、もう目の前にあった。

雨が降ってやんだ後なのか足元には水たまり。


そこに写った私の姿はお婆さんみたいに真っ白な髪に、病人も真っ青な白い顔、おまけに周りが白いのに黒い瞳だけ異様に浮いててまるでお化けみたいだったのだ。


私の記憶にある日本人とはかなりかけ離れている自分の姿。

でも同時に違和感はない。

今、この水たまりを覗いている少女こそが私なのだと強く思った。


ドラゴンの質問に私は『名前はない』んだと答えた。

それを素直に受け取ったらしいドラゴンは次にこう言った。


『では、今から君に『フィリ』という名前を授けよう』



『フィリ』。私の名前。


その言葉が心に染みわたっていくと私の中で何かがはじけた。

体がズンと重くなった気がした。


私は今初めてこの大地に足をついていることを実感する。



そうだ。私はこの瞬間この世界に産まれたのだ。


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