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【6】魔法少女の休息

 

 

 その後のことを、簡潔に記す。

 こころは月子を連れて如月たちと合流し、リムジンで月影家に帰った。

 月子の言ったとおり、こころは徐々に“ココロ”を取り戻し、月影家に着く頃には、“ココロ”も髪の色も、すっかり元に戻っていた。――結果、こころは傷ついた月子にすがり、号泣することとなった。

 リムジンが到着すると、月影家の使用人がわらわらとやってきて、担架で月子を部屋へと運んだ。

 回復魔法が使えるという月子の母がやってきて、「あとは任せなさい」と、泣きじゃくるこころを諭した。

 月子と月子の母は回復室と呼ばれる部屋にこもり、こころは別室で待機した。

 こころは使用人が持ってきた服に着替えることだけはしたが、月子が心配で気が気ではなく、出されたお茶に手をつけもしなかった。

 しかし、心配は杞憂に終わった。三時間後、月子は母とともに擦り傷ひとつない身体でこころの前に現れた。ホッとしたこころはまた月子にすがって泣いた。

 その後、こころは自分の家に電話を入れ、今日は月子の家にお泊まりすると連絡した。

 いろいろと積もる話をするつもりだったのだが、こころは夕食の最中からうつらうつらして、食べ終わる前に椅子に座ったまま寝入ってしまった。

 月子はこころを抱きかかえ、自室のベッドに連れて行った。お泊まりのときはいつも一緒に寝ているのだ。

 

 天蓋のついた巨大なベッドにこころを寝かせ、月子は布団をかけてやった。安らかな寝顔を愛おしそうに見つめる。

 かたわらに立つ如月が、こころを起こさないよう抑えた声で言った。

「こころ様は、まことに素晴らしいご活躍をなされました。初陣でしたし、さぞお疲れだったのでしょう」

「そうですね。話さねばならないことがたくさんあるのですが、明日にしましょう」

 すぅすぅと穏やかな寝息を立てるこころの髪を、月子は優しく撫でた。

 そして、こころの額に、そっとキスをした。こころは「ん……」と身をよじったが、眼を覚ますことはなかった。

 思わず頬が緩んでしまい、如月は軽く咳払いして姿勢を正した。

 月子がスッと立ち上がり、振り返る。いつもの引き締まった顔に戻っていた。

「如月、報道関係をチェックします。ニュース番組は録画していますね?」

「全チャンネル録画できています。各新聞社の号外も入手済みです」

 ご苦労、と言って月子は、先に立って部屋を出た。如月が後に続く。

 ひとりになった部屋で、こころは安らかに眠っている。

 二百年の時を経てドリスの意志を継いだ魔法少女は、しばしの休息を取るのだった。

 

 

 

 

    つづく






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