両極端
あらすじ:変な…変態に、「美しい」って、言われました。
逃げろー。主人公、軽くパニック中。
「…美しい。」
そう呟いた美形な男の人は、まるで夢遊病者のようにこちらに近づいてきた。
…手を前に持ってきて、触ろうとしてくるな!!顔赤く染めてんじゃねぇよ!
男嫌いなんだって!いや、女の人にコレされても引くけどさ!?
とりあえず近寄らないでー!!
私が少々パニックになっていると、やや後ろの方からカナちゃんがこっちに身を寄せてきた。そして、男の人をきっと睨む。
小さい位置から背の高い男の人を見上げる形のはずなんだけど、どうやら威嚇には十分だったらしい。
男の人の歩みが止まった。
だけど、さっきから延々と座っていたもんだから、そろそろ足が冷たくなったよね。
このまんまだと風邪引いちゃうんじゃないかな。…いや、そこに突っ込みたいんじゃなくてね?
…座っている人間の威嚇に足を止めるなよ、王族!
いや、助かったよ!?助かったけどさ!?
「…あなた、誰なんですか?」
怯えた、今にも泣き出しそうな声。
震える手で肩を掴まれたので、とりあえずその手に自分の手を重ねてあげる。それに安堵したのか、ふぅっと息を吐いて、カナちゃんはこの超イケメンの残念な人にさらに言葉を続けた。
「な、名前も言わない人に、近付かれる覚えはないです。そ、それに、魔王とか、魔族とか、敵がいるんでしょう?私たちじゃないと、倒せないから喚んだんですよね。だから、私たちの機嫌は損ねないほうがいいと思います。もともと、私達はどうしてもというから仕方なくこの役目を引き受けたんです。…気が変わるようなことを、しないでください。」
カナちゃんすごい!カナちゃん可愛い!
震える声でも、どもってても、しっかり最後まで言えたね!
ねぎらいに、肩に置かれた手を二度ポンポン、と叩いてあげる。
彼女が笑った気配が伝わった。
さて、カナちゃんが頑張ったんだし、私も頑張りますか。
…話したく、ないけどね。
「彼女の言うとおりですよ。」
さっきまでのパニックを無理やり押し込んで、もう一度男の人に話しかける。
反応してバッとこっちを見るその姿は、…なんでだろう。
呆れよりも哀愁を誘った。
「まずは私の質問に答えてください。嘘なんて付いたらどうなっても知りませんよ?
その後、もしそちらから何か質問があればもちろんお答えします。よろしいですね?」
答えなんて聞かない、断定口調。
どうやらこの人以外は分をわきまえているみたいだね。
かろうじて敬語は使っているものの、まともに敬意を払う気は全くないこの言葉。
もしこの人が王族じゃなくても(むしろそうであることを願いたい)少なくとも貴族だろう。こんなフロアで、勇者に話しかけられるような存在なんだから。
それなのに、誰も文句を言う人がいない。
いや、この男の人の反応が失礼だと分かっているのかな?
…だったら代表者にするなよ。
なんとなく、周りのローブの人達に気を配ってみる。…身じろぎもしてないんだけど。あれ、実は人形なんです~、なんてことにならないよね。
…それ、なんてホラー。
あ、何人かローブじゃない人もいる。
帯剣しているけど、騎士?いや、ないない。
だって、ほら。鎧着てないじゃん。
あ、一人と目があった。ん、笑われた?まぁいっか。男子なんて興味ないし。
白を基調としたコートみたいなのを着た人もいる。フード付きだ。可愛いな。
…っと、男の人の存在を忘れてた。もう一度彼に向き直る。
その目を見ると、私の要望にどうやら賛成してくれたようだ。
じゃあ、遠慮なく質問ぶつけるか。
「まずはあなたの名前を教えてください。次にこの国の名前。そして、ここはその国の中でどこなのか。どういう国なのか。しっかり、私たちに分かりやすく教えてくださいね?」
男の人は私の言葉をしっかり聞き取ったあと…跪きました。
おおう。両極端!
変態に、跪かれました。
今回のサブタイトルの両極端は、レナちゃんとカナちゃんの発言と、男の人の態度をさしたものです。
分かりにくいったらありゃしない。