◆三話
えっと……これは、俗に言う“修羅場”ですか? ちょっと違うか。
現状を説明しましょう。
私が降り立った村と思われる集落の皆さんが、四方八方から驚きの目で私を凝視しています。
以上、説明終了。
私の説明力不足を呪うばかりですね、ハイ。だって国語好きじゃなかったもん。
とりあえず、今するべきは弁解だろう。そう思って口を開いたのだが――
「あーっと…私、怪しい者では……」
「勇者様!?」
村人(?)の中の一人が、私の言葉を遮って言った。
ゆうしゃさま?
その言葉を合図にしたかのように、人々がざわざわと騒ぎ始める。
皆口を揃えて“伝説の勇者様が現れた”だの“有彩色の者が来た”だの言っている。
私を囲む人々は皆、無彩色の髪。
白、灰色、黒。濃度は違えど、いずれかの色をしていて、私のような青はおろか、茶髪すら居ない。
周りの態度に少し不機嫌になっていると、服の裾を引っ張られる感触を感じた。
振り向くと、十歳前後位の歳の少年が、私の制服の裾を引っ張っていた。
「ねぇ、ボール投げしようぜ!!」
「リディア!! 勇者様になんて事を言うの!!」
少年の母親と思われる人物が、少年――リディアを叱りつけた。
私は、その人の言葉に思わずカチンときた。
「あの、私、勇者じゃないです」
人々がまたしても揃って驚いた顔をする。驚きすぎだろ、皆さん。
まぁ構わず話を続けますが。
「ここの世界の伝説で、私みたいな容姿が勇者ってされてても、私は勇者じゃない。勇者って、世界を救うような何かをしたから勇者って呼ばれるんでしょう? だから、私は勇者じゃないわ。私、この世界に来てから何もしてないもの。私としては、リディアの態度の方がよっぽど正しいと思う。違いますか?」
騒いでいた人々が静まり返る。
今の隙に!!
「よしっ、行くよリディア!!」
「おうッ!!」
私はリディアと一緒に駆け出した。