◆二話
現状を整理しよう。
私の名前は日和。代海日和だ。
幼い頃からありとあらゆる武道を叩き込まれ、その全てにおいて黒帯を獲得してきた。
中学に入り、武道からは足を洗ったが、それでも体に叩き込まれ続けた感覚は、鈍るどころか逆に磨きがかかっていった。
あと残る特記事項といえば、周りからちょっと“オタク”と呼ばれたり呼ばれなかったりしたり、試験順位で筆頭を逃した事が無かったり、髪が普通では有り得ないくらいの目を瞠る青色だったりする程度の至極普通の現役女子高生である。
ま、時々、「それ普通じゃないだろ」って突っ込みを受けるけど、見事に受け流して見せるよ☆
さて目の前には自称・異世界の女神様。私はこの人(?)によってこの変な場所に連れて来させられた、と。
ちなみに外見は何故か私と一緒。まぁ気にするこたないっしょ。
場所は相変わらずなーんにもない真っ黒空間。
女神様(?)曰く、さっきまで居た世界とこれから行く異世界の間の亜空間、だそうだ。
「んで、私に何しろっての?」
「さぁ」
さぁ!?
んじゃ何で私をここに呼び寄せた!?
「そもそも、あっちの世界で何が起こってるのかも知らないのに何をすればいいかなんて知る訳無いっしょ」
「あんた女神なんじゃなかったの…?」
「女神が万能とは限らんよー」
軽いなー……。
“あっちの世界”とやらはこんな軽い神様でいいのか。
「待てよ…。何が起こってるのか分からないのに、なんで向こうが危機って知ってるのよ」
「そりゃ危機か否かくらい分かるわよ、神様だもの」
そりゃそーでしょうとも!!
なんて正論突っ込みが通用しない事はこの短時間で充分理解したので言わない。
「まーここと連結してあっちで何かしてきなさい♪」
「こことリンクって……何も無いじゃない……」
ちっちっち。っと、女神が右手の人差し指を立てて左右に振った。
「甘いわね。何も無いんじゃない。何もかもが有るのよ!」
胡散臭い、の一言だ。
そう思ってると、女神が続けた。
「貴女が“何も無い”と思ってるから“何も無い”の。貴女が“何もかもが有る”と思えば、ここには“何もかも”が生まれる」
「私が望めば、望むモノが手に入る?」
「イエスそのとーりッ!!」
ビシィッ、という効果音が出そうな勢いで、女神が私を指差した。
「もうこうなると一種の能力ね。勝手に《リンク》って名付けちゃいましょ♪」
「それでいいのか!?」
「いいの!」
ドヤ顔で言われても反論に困るというか。
何を言おうか迷ってると、女神が痺れを切らしたようで、こう言った。
「つべこべ言わずにとりあえず行けーっ!!」
えぇええええ!?
説明足りてないだろーッ!!
なんて反論させる前に、女神は私を異世界へとぶち込んだ。
これからどうなる事やら……。
既に行く末不安なんですケド、私。