◆十七話
何から聞きたいか、と言われても、ぶっちゃけ聞きたい事が多すぎる。
「えっと……じゃあ、二人のプロフィール」
「僕ら? いいよ。とりあえず僕からね。名をツァンド・ナスレート。齢二十二の純ビーンギス」
「ビーンギス?」
早速聞き覚えの無い単語。この世界特有の言葉であろう事は容易く推測出来るが、しかしその意味が分からない。
「“ビーンギス”ってのは、この世界に居る種族の内の一つだよ。んじゃ、次の説明は種族の事にしようか」
「お願いします」
「僕の事はそんなもんかなー。強いて言うなら攻撃手段が近接攻撃ってぐらいお次はフォルトだね。自分で言う?」
「いい」
一言で終了とか。いや、確かに断るのは一言有れば充分だけど、ちょっと無口とかクールとか過ぎないかと思うんだが。
「さて。フォルトことフォルト・プライノス。歳は十八」
「ちょっと待って」
思わずツァンドの言葉を止めた。それは暗に聞き捨てならない数字が聞こえたからなのだが。
「十八って言った?」
「言ったねぇ」
「コイツ……年上なの!?」
この言葉で私とフォルトの二人が固まった。
「年下?」
「今年で十七になるところですからねぇ。今現在は十六よ」
当たり前だが表情は固定。ほとんど動かない。表情筋は生きてます、一応。
そして私は微妙な沈黙をぶち破る。
「えぇぇぇぇぇぇぇッ!?」
「五月蠅い。驚いたくらいでいちいち大声を出すな馬鹿」
こういうトコだけよく喋る、と。なんかコイツの性格分かってきたかも。
いや、それにしても。
「……同い年かちょい下かと思ってた…」
「その逆だな。本当に年下か?」
「それ意味逆にしてこっちの台詞。アンタ大人げないって事になるねー」
「それなら精神年齢老けてると言い返すが」
「あんだって?」
「はいはいはいはい終了終了。喧嘩両成ばーいでていっ」
「あぎゅっ」「っ……」
すごい勢いで進んでた口喧嘩をチョップで成敗された。ちょっと痛い。
っていうか、むしろ物理的なダメージよりもフォルトと一緒くたにされたっていう事実からなる精神的ダメージの方が酷い。気がするんじゃなくて確信で。口が裂けても言わないけど。
「続き、聞くの? 聞かないの?」
「ツァンドさん…目が笑ってないっすよ……。もちろん聞きます」
そして少し姿勢を正す。なんか授業か何か受けてる気分。
「既にヒヨリちゃんの知るところだけど、ハーフエルフね、コイツ。んで、遠距離攻撃型ね」
「そういやさ、前から気になってたんだけど、フォルトってエルフと何のハーフなの?」
「“アキエス”」
答えたのはツァンドさんではなく、横槍を入れる形で乱入してきたフォルトである。
「アキエス?」
「当たり前だがそれも種族の一つだ。後でツァンドが言うだろう」
そう言われたので、ツァンドさんを伺うと、変わらず飄々としたような笑顔でこっちを見ていた。なんかツァンドさんのこの笑顔はちょっと苦手だ。なんでかは分からないけれど。
それでも一応、この世界に最低でも三つ以上の種族が有るということは分かった。
……こんな調子で説明進んだら、最終的な情報量に追いつけるかなぁ、私の脳ミソ。