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半分チートな絶対音域  作者: 逢沢 雪菜
三章 異世界取扱説明書
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◆十三話

 色々と考え事をしている内に、朝食は抜いてしまった。


 昼食を食べに食堂に行くと、私が普段座っている席の正面の席にリディアが座っていた。


「ヒーヨーリー?」


 明らかに口調が怒ってます。笑顔だけど目が笑ってないです。背筋を嫌な汗が伝います。リディアよ、なにゆえ怒ってるし。


「なんで朝ご飯抜いたかなぁ!!」


 そう言ってばんっとテーブルを力強く叩く。というか殴る。音からしてたぶん相当痛い。


 というか…………は?


「朝ご飯抜いたって…確かに抜いたけど……そんなに怒る事?」

「事!!」


 断言っすか。


「朝ご飯は一日の最初のエネルギー源だよ!? それ抜いちゃってどうするの!? お腹減るだけじゃなくって一日のバランスが崩れる原因になるんだよ!?」


 なんか保健のプリントからコピーしてきたみたいなフレーズ……。


「考え事してたら…ちょっと……」

「だったら尚更!!」


 リディアの髪がメデューサの蛇みたいに見えるヨ。

 朝ご飯パスったくらいで……。


「朝ご飯抜いたくらいで何怒ってんだとか思ったでしょ」

「なんで分かったの!?」


 そろそろリディアが呆れてきた。このまま呆れさせればリディアの怒りも収まるかな、なんて。


「言い忘れた事も有ったのにさ……」

「えっ?」

「王女様の話!」

「………………あぁっ!!」


 理解すんの遅くてごめんなさい。そういう子です、私。


 そして自信満々に言ってた割には言い忘れしたというのにちょっとびっくりしていた。


「んで、何だって?」

「先日はスフォルツァンドがお世話になりましたようで、失礼致しました、って。あの人達相手にしてあんだけこてんぱんにやりゃーねー」

「…………“とても強く(スフォルツァンド)”って何?」


 なにゆえこの世界はこんなに音楽用語ばっかやねん。“コンダクター”だの“オーディエンス”だの“スフォルツァンド”だの……。そもそも前二つは私関連っぽいけどどう解釈していいかさっぱりだし。


 ……リディアは余計に呆れるし。


「ヒヨリさぁ……マジであの人達知らずに戦ったの?」


 戦ったのって言われても……ねぇ。誰よ。


 必死になって今日含むここ三日の記憶を辿る。なんでたった三日でなんかを思い出す為に記憶辿らなきゃいけないような生活してんだ私は。

 この世界来てから戦った事戦った事……まさか。


 当然ながら思い当たる節はただ一つ。


「フォルトとツァンド?」


 こうやって声に出すと確かに響きが似てるが、こんな単純なネーミングでいいのか?


「以外にヒヨリと戦った人居る?」


 単純でいいらしい。そしてそれ以外に戦った記憶はございません。


「この世界最強の二人とたった一人で互角どころか押し気味でやり合えちゃうんだもんなー……」

「……は?」


 確かにツァンドが変な交渉しなければ勝てる自信バリバリ有ったけど。


 だがしかし。重要なのはそこではない。


「アブソリュート・コンパス最強?」

「って謳われてるね、フォルトさんとツァンドさん。二人コンビで“スフォルツァンド”」


 ……それに勝ちそうだった私って何なんだろう。

 まぁいいや。考え込んでも仕方が無い。過ぎた事だと諦めよう。考え事がこれ以上増えるのは正直御免だ。


「とりあえず、明日から朝ご飯からちゃんと食べてねッ!!」

「…はい……」


 年下相手に頷かざるを得ない高校生。悲しきかな。



 そしてリディア父よ、厨房でひっそり笑いを堪えて震えるくらいならもういっそ思い切って笑ってくれ……。


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