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半分チートな絶対音域  作者: 逢沢 雪菜
二章 人生は巻き込まれる為に有る
11/21

◆十一話

 アクリアから箱を受け取ると、何もしていないのに、カチャッという音をたててカギが開いた。


「!?」

「私が預かったのはその箱ごとですから、彼女が貴女にだけ開けられるようにしたようです」


 そんな事まで出来るのかあいつ。万能じゃないとか言ってたくせに。


「それには、私共は何も手を加えておりません」


 蓋を開け、中に入っていたのは、見事な赤色の石が使われたペンダント。私の髪と対照的でよく映えそうだ。


「これが…能力石?」

「そうです。能力石は普通、使用者を選ばないのですが、この石は例外のようですね」

「分かるの?」

「仮にも彼女の末裔ですから」


 そう言ってやんわりと微笑む。笑顔一つでも高貴さが違う。流石に王女様だ。


 そういえば。


「私…バリバリタメ語してましたよね……」


 王女様相手にタメ語を使っていた。リディアが殴ってなかったのが不思議なくらいだ。そろりと彼を窺うと、白い目で私を睨んでいた。やっべぇ。


 ところが。


「私は構いません。むしろ貴女の方が私より地位が上の方なので」

「…………………………」

「今何と?」


 聞き返したのはリディア。私は驚きのあまり声が出なかった。というか開いた口が塞がらなかった。慣用句の方ではなくリアルに。


 アクリアは気にした様子無く、再び、驚きの言葉を口にした。


「本来なら、日和様の方が、私よりも高い地位にいらっしゃるのです」

「なんで? 私一般人よ? フツーの女子高生よ?」


 女子高生というのがアブソリュート・コンパスに有るかどうかは別として。


「この世界に来てから、“予言”をお聞きになりましたか?」

「予言?」


 その“予言”の内容を答えたのは、意外にもリディアだった。


「いずれこの大地に禍訪れる時、異界より来たりし有彩色の者によって我らは救われる……」


 それは、あの村で言われた内容とほぼ一致する。

 異界より来たりし有彩色の者。なるほど、私をそのまま形容しているようだ。青は立派に有彩色だもんね。


 しかし、アクリアの次の発言ははそれをほとんど否定した。


「一般にはそう伝わっているみたいですね」

「別のが有るの?」


 そう尋ねると、アクリアは言った。


「代々、王家のみに伝わる“予言”は一般に伝わるそれとは少し異なるのです」

「それは外部には出せない、と」

「……はい…残念ながら」


 申し訳なさそうに俯くアクリア。逆にこっちが申し訳なくなるのはなぜだ。


「ですが、一つだけ言わせてください」


 俯いた顔を上げ、真剣な瞳で、アクリアは私にこう告げた。


「“予言”をどのように解釈しようと、この世界の命運は、貴女にかかっているのです。貴女が指揮者(コンダクター)を選ぶか、観客(オーディエンス)を選ぶかによって…この世界は、大きく末路を変えるのです……」



 それを聞いた後、私はしばらく何も言えなかった。


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