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DAY1

わたしの彼は、嘘をつかない。


正確には、つけない。


そういう人だと分かったのは、付き合ってから少し経ってからだった。


最初は、ただ正直な人なんだと思っていた。


でも、そういうのとは少し違う。


分からないことは、分からないと言うし、

曖昧なことは、そのままにしない。


ちゃんと考えてから、言葉にする。


少しだけ面倒だけど、でも、嫌いじゃない。


むしろ、安心できる。


「ねえ」


夕飯のあと、ソファに並んで座りながら声をかける。


「今日、どうだった?」


なんでもない質問。


いつもみたいなやつ。


彼は少しだけ考えて、それから答えた。


「特に変わったことはなかったよ」


「そっか」


それだけで、なんとなく落ち着く。


余計なことを言わないから、変に考えなくていい。


「ごはん、美味しかった?」


「うん、普通に美味しかった」


「ほんとに?」


「うん」


少しだけ間があってから、頷く。


その感じが、なんだかこの人らしい。


「今日ね、ちょっと味付け変えてみたんだ」


「そうなんだ」


「気づいた?」


彼は少しだけ考える。


ほんの短い間。


「なんか、いつもと違う感じはした」


「どこが?」


「そこまでは分かんないけど」


思わず笑ってしまう。


「なにそれ」


「ちゃんと分かってないことは、言えないし」


少し困ったように言う。


でも、それも本音なんだと思う。


「でも、美味しかった?」


「うん、それはほんと」


今度は、少しだけはっきりしていた。


「よかった」


わたしは少しだけ笑う。


「ねえ」


「うん」


「わたしのこと、どう思ってる?」


軽い気持ちで聞いてみる。


特に意味はない。


ただ、なんとなく。


彼はすぐには答えなかった。


少しだけ視線を落として、考える。


「うーん……」


小さく声を出してから、


「一緒にいる人、って感じかな」


「それだけ?」


「それ以上は、うまく言えないかも」


思わず笑ってしまう。


「なんか冷たくない?」


「そう?」


「もっとこう、あるでしょ」


「どのへん聞きたいの?」


やっぱり、少しだけズレている。


でも、それも分かっているから、嫌じゃない。


「じゃあいいや」


わたしは軽く笑って、その話を流す。


彼は特に何も言わなかった。


それでいいと思った。


無理に言わせることでもないし、ちゃんと考えてくれているのは分かるから。


「ねえ」


「うん」


「明日、どうする?」


なんとなく聞いてみる。


予定があるわけじゃない。


ただ、こういう会話が好きなだけ。


彼は少しだけ考えた。


「ここでゆっくりするのでいいと思う」


「ここ?」


「うん、その方が楽だし」


特に不思議なことじゃない。


わたしも、外に出るよりこうしている方が好きだし。


「じゃあ、そうしよっか」


「うん」


それだけで決まる。


簡単で、楽で、ちょうどいい。


彼は、あまり否定をしない。


それが、この人のいいところだと思う。


無理に意見を押し付けないし、ちゃんと合わせてくれる。


優しい人だな、と思う。


「ねえ」


「うん」


「こういうの、好き?」


部屋の中を軽く見渡しながら聞く。


特に意味はない。


ただ、なんとなく。


彼は少しだけ考えた。


「嫌じゃないかな」


「それって好きってこと?」


「まあ、そうなるかも」


また少しだけ曖昧な答え。


でも、それでいいと思った。


ちゃんと嘘をつかないで答えてくれるなら、それで十分。


分かりやすい言葉じゃなくても、ちゃんと本当のことを言ってくれる方がいい。


その方が、安心できる。


時計の音が、静かに響いている。


外の音は、あまり聞こえない。


でも、それも気にならなかった。


こうして隣にいる時間があれば、それでいいと思う。


特別なことは何もない。


でも、それで十分だと思った。

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