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いつも通り夜通し

作者: P4rn0s
掲載日:2026/02/02

夜になると、記憶だけがはっきりしてくる。


昼間に無理やり押し込めていたものが、電気を消した瞬間に浮かび上がる。


君の声。

笑い方。

どうでもいい会話の途中にあった、意味のない沈黙。


どれも現実より鮮明で、もう触れられないはずなのに、そこにだけは確かに息をしている。


僕は君に話しかける。

声には出さない。


出したところで、返事が返ってこないことくらい、もう何度も思い知らされているからだ。


それでも頭の中では、君はちゃんとこちらを見ている。

記憶の中の君は、いつも少しだけ優しい。


たぶん、あの頃よりも。


もう会えない。

時間は戻らない。

取り戻せるものなんて、何一つ残っていない。


それでも足は前に出ない。


頭では答えが見えているのに、身体だけがそれを拒む。

感情は、理屈よりずっと重たい。


君がいた頃、僕はよく笑っていたらしい。


らしい、というのは、今の自分からは想像できないからだ。


君が特別なことをしていたわけじゃない。

ただくだらない話をして、意味のない冗談を言って、どうでもいい一日を一緒に消費していただけ。


それだけの時間が、今も僕を生かしている。


人は未来のために生きると言う。


でも僕は、過去にしがみついて呼吸をしている。

君の記憶を手放せば、きっと楽になる。


同時に、全部が終わってしまう気もして、指を離せない。


理由のない夜が、定期的にやってくる。


何かあったわけでもない。

忙しいわけでもない。


ただ突然、胸の奥に不安が溜まって、息の仕方を忘れる。

このまま続いたら、いつか壊れるんじゃないかと本気で思う。


もし君がここにいたら、何て言っただろう。


「君のせいじゃない」って、ちゃんと伝えられただろうか。

それとも、そんな言葉すら必要なかったのかもしれない。


君はきっと、何もなかったみたいに笑って、僕の心配を軽く流した。


それが一番つらい。


君はもう何も言わないのに、僕の中の君だけが勝手に優しくなっていく。

確かめようがないから、否定もできない。


愛していると言ってしまうのも、

許してしまうのも、

全部、僕の一方通行だ。


本当は、進むしかないことくらい分かっている。


思い出を抱えたままでも、新しい時間を生きなきゃいけない。

そんなこと、何度も自分に言い聞かせてきた。


それでも今夜も、僕はここにいる。


君に向けた言葉を書き続けている。

どうせ明日になっても、君を忘れられないと分かっていながら。


答えなんて、出なくていい。


ただ、君が確かに僕の中にいたことだけは、消したくなかった。

今は、それだけで十分だと思っている。

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