08 正面突破
―――さくらSide
また、次の日の昼休み。
結城さんが私のクラスを訪ねてきた。クラスの男子が一斉に横目で結城さんを覗き見る。
こら、ちらちら見るんじゃありません! 気持ちはわかるけど失礼でしょ!
もしかしたら私に用があるのかもと思ったが、ちらっと私の方を見てわずかに会釈した後、まっすぐに諸星君の席に向かう。
「諸星君、ちょっといいかしら」
「……なにかな、結城さん」
諸星君は表情を変えずに、淡々とそう答えた。
「明日の放課後、話したいことがあるから体育館裏に来てくれないかしら」
そう結城さんが告げると、クラスがどよどよとざわつき始めた。
「おいおいなんで結城さんが諸星に……?」
「知らねぇよ。そもそも一体何の用があるってんだよ?」
「もしかして告白の呼び出し?」
「まさか。そんなわけないでしょ」
まさかの正面突破。周りの目なんて一切気にせず、真ん前から行ったわあの子。
当の諸星君は困ったように、はにかみながら返答する。
「悪いんだけど、明日は用事があって」
「そう、それじゃあ明後日は?」
「明後日もちょっと――」
「明々後日は? その次の日は?」
「ええと――」
「いつでもいいわ。あなたに合わせる。いつでもいいから、あなたの都合のつく日時を教えて」
食い気味でアポを取ろうとする結城さんを見て、ギャラリーの熱はさらに加速する。
「なになにめちゃめちゃ粘るじゃん!」
「マジで愛の告白か!? 諸星に!?」
「うわ、だいたーん」
「結城さんって諸星君みたいのがタイプなの?」
「うっそだろ、嘘だと言ってくれよ」
「殺してやる……殺してやるぞ諸星仁海」
淡々としている結城さんとはうってかわって、諸星君は周囲のざわつきに目を向けながら顔を顰めた。そして観念したかのように口を開く。
「……わかった。明日の放課後でいいんだね?」
「ええ明日の放課後、体育館裏で」
諸星君は一瞬、机の上に目を向けた後、再び結城さんの目を見つめ返す。
「それじゃあまた明日ね」
「ああ、また明日」
わざわざ強調するように、指定した日を繰り返し言って結城さんはクラスを去っていった。
恐るべし結城さん。噂など知った事かといわんばかりの大暴挙。
ああ見えてイノシシ娘なのかもしれない。
「おいおい諸星どういうことだ!?」
「お前結城さんとどういう関係なんだ!?」
「いや、それがなにがなんだか」
運動部の派手目で陽気な男子達が諸星君に詰め寄る。
諸星君は困ったような引き攣ったような笑顔でしらばっくれながら、右腕で机の上にある何かを隠した。
怪訝な目で諸星君を見ていると――
あれ? よく考えれば、あんなに大勢が聞いている前で場所と時間を指定なんかしたら、大勢のギャラリーが当日に押し寄せるのでは?
………………………………………………………
ああ、なるほどそういう……
……私は見届けるべきだと思う。あの場にいた者の一人として、関わってしまった者として。彼らの行く末をしっかりと見届けるべきなのだ。
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