34 てのひら伝うあなたの温もり
最初に感じたのは、頬に伝わる温かい熱。脈々と一定のリズムを刻みながら、人肌の熱が送られてくるのを感じた。
目の前には真っ白な光以外何も見えない。呼吸と同時に薬品のような匂いが鼻を通り抜け、機械音が均一に並べられたリズムを刻みながら私の鼓膜を揺さぶる。
随分と長い夢を見ていた気がする。
ふと、この温かいのはなんだろうと思い、重い瞼をゆっくりと開いて、熱の主を確認する。
目の前には悲しそうに、寂しそうにこちらを見つめるあの人の姿が見えた。
ああ、まだ夢の中だろうか。
どうせ夢ならせめて笑ってくれればいいのに。
どうせ夢なのだから、文句の一つ言っても許されるはずだ。
「相変わらず……辛気臭い顔ね……」
その顔の持ち主は徐々に目を見開き、口元がわなわなと震え表情を変えていく。
怒ったかしら。それとも傷ついた? こんな表情見たことがない。
これは……どんな感情なのだろう。
「バカ野郎……」
諸星君は俯き、徐々に体勢を下げていく。私が寝ている? シーツ? の上に顔を埋める。
「バカ野郎……」
顔は見えなくなり、背中だけが見えるようになる。
その背中もガクガクと不規則に震え、鼻を啜るような音が聞こえてきた。
「ばか……」
諸星君は震える声でそう一言だけ呟いた。
震えは徐々に収まり、やがて少しずつ面を上げていく。
「……おかえり」
諸星君は鼻水と涙でぐしゃぐしゃになった顔で私に笑いかける。
目元は真っ赤に腫れ、鼻とシーツからは一筋の粘り気のある透明な橋が掛けられていた。
本当に――
「酷い顔ね」
でもまあ、そうね。及第点といったところかしら。
やがて諸星君は私の頭上に手を伸ばす。すると、聞き覚えのあるコール音が流れ始め、諸星君は口を開いた。
「結城が……目を……覚ましました……」
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