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【第五話】おじいちゃんのノート

いらっしゃいませ。


あら、今日はお二人でいらしたのですか?

初めまして、零雪館へようこそ。


彼女さん・・・ですか。

かわいらしい方でお似合いですね。


そしたら、今日はこちらの二名の席へどうぞ。


今、お菓子と飲み物を持ってきますね。


・・・お待たせいたしました。


本日は、ホットミルクティーとシフォンケーキのセットです。

シフォンケーキを作るのって意外と難しいんです。


では、本日のお話を始めますね。


タイトルは・・・


あら、申し訳ございません

彼女さんを怖がらせてしまいましたね。


この零雪館では、温かい飲み物とスイーツを楽しみながら

怖い話を聞くまでがセットになっているんです。


・・・怖い話は苦手?

ふふ、そしたら今回はあまり怖くないお話をしましょう。


タイトルは・・・


『おじいちゃんのノート』


最近、おじいちゃんが亡くなった。

八十二歳だったけど意外とピンピンしてた。


おじいちゃんの家は僕の住んでいる町から一時間ほど車で移動したところにある。

結構な田舎で、もちろんコンビニなんてものはない。


今日はおじいちゃんの家に遺品整理をしに来た。


「カズ~ こっち手伝って」


「わかった」


僕は広井和宏。高校一年生だ。

今名前を呼んだのは、二歳上の姉の春だ。


僕と春はおじいちゃんが使っていた部屋を掃除していた。

おじいちゃんは日記を書くことが日課だったみたいで、すごい量のノートが積み重なっていた。


「このノートどうする・・・?」


「持っていても仕方ないし処分していいんじゃない?」


「これ、何冊あるのよ~・・・」


はあ・・・と深いため息をつく姉。


僕は興味本位で近くにあったノートを手に取った。


表紙には『2003年7月~』と書かれている。今から十年以上前のものだ。


中を見てみると、おじいちゃんの乱雑な字でその日の出来事が書かれていた。

とっても読む気にはなれない・・・


ペラペラと適当にめくるがどのページも字で埋まっている。

すると、ノートから一枚の栞が落ちた。


小さい長方形の画用紙に、おじいちゃんの似顔絵を描いた栞。

それは、僕が昔にあげた栞だった。


なんだか懐かしくて泣きそうになる。


栞の挟まれていたページの日記を読んでいたら、少し不思議なことが書かれていた。


『今日は、カズとハルが家に遊びに来た

 見ないうちに少し大きくなったな

 ハルがハタチになるまであっという間なんだろうな

 わたしは絶対に認めない』


僕がこの文章に違和感を持ったのは最後の文。

"わたしはは絶対に認めない"とは何なのか。


さすがに、孫の成人姿を見たくない人なんていないだろう。

なぜこんなことを書いたのか。


おじいちゃんは優しくて、すごくいい人だった。

だから少し衝撃を受けた。


「カズー 日記読まなくていいから手伝ってよ」


「あ、ごめん まだ日記処分しないで欲しい」


「なんで?まあ、この量の日記片付けるの面倒だから最後にしようとしてたけど」


僕が気にしすぎなのかもしれないが、気になってしまう。

とりあえず、片づけを手伝うことにしよう。


しばらく片づけたころに、お父さんが入ってきた。


「そろそろ夕飯にするよ

 今日はここに泊まることにしたから」


「えーー まあ一時間かけて戻るのも面倒だしいっか~」


居間に行くと机の上にはご飯が用意されていた。


「冷めちゃうから早く食べなさい」


お母さんが味噌汁を注ぎながら言う。


今日のご飯は焼き鮭とレンコンの和え物。


「近所の高林さんから鮭いただいたの

 結構大きくてびっくりしたわ」


おじいちゃん家の隣は高林というおばあちゃんが住んでいる。

良くお菓子やら野菜やら、いろいろもらっていたな。


「元気そうにしてた?」


「腰は曲がってたけど元気そうだったわよ~」


「ねえ、そういえばおじいちゃんの部屋にある大量のノート捨てていいよね?」


「あー・・・ 明日お父さんが処分しておくよ」


「ラッキー! 重いから嫌だったのよね~ ね、カズ」


「え? あ、うん」



夕飯を終え、僕はすぐにおじいちゃんの部屋に戻った。

明日に処分されるなんて・・・ハル何してんだよ~・・・


さっき見ていたノートは・・・あった、これだ。

一番最初のページから順番に読むが、特に気になるものはない。


あと一ページで最後のページか・・・

ページをめくろうとした時だった。ちょうどノートの右下に"200113"と書かれていた。

二千一年の十三月ということだろうか?


僕はすぐに山積みになったノートから"2001年13月"から始まるノートを探す。


だいぶ下に『2001年12月』と書かれたノートを見つけた。

もしかしたらこの中に"2001年13月"が存在するのかもしれない。


ノートを開き、"13月"までページを飛ばす。


(12月31日・・・ってことは次のページか?)


次のページを開くと僕は"冷汗が出てきた"。

それは、"見てはいけないもの"のような・・・


だって、さっきまで乱雑に書かれていた文字がこのページだけすごく丁寧に書かれていたから・・・。


『2001年13月・・・なんてないんだけどな

 もしこのページを私の孫が見ていたら、どうかこのページだけは最後まで見てほしい』


一体何が書かれているのか、暗号まで作って何を見せたかったのだろうか・・・

唾を飲んでから、深呼吸をする。


『これから書くことはすべて本当の話だ

 広井智也、わたしの息子は狂っている

 昔から生き物を踏みつぶしたり、バラバラにしたり、少し怖い一面があった』


広井智也というのは、僕たちのお父さんだ。

少し怖いところがあったが、そういうことだったのか。


『智也は"研究科"になった

 表向きは"生物の研究" でもわたしは知っている

 "人体実験"をしていることを』


人体実験!?

そんな・・・信じられない。

一体どうして・・・


『アイツは、自分の子供を使ってまで実験をしようとしている

 むしろ"自分の子"だからか・・・

 小さいうちだとできない実験らしく、二十歳を過ぎてから実験すると言っていた

 わたしがアイツを止めなければ』


「何してるの?」


「うわ!!」


心臓が飛び出るかと思った。後ろを振り向くと春の姿があった。


「急に話しかけるなよ・・・びっくりするだろ」


「ごめんごめん こんな暗闇で何してたの?」


このノートのこと、春にも伝えるべきなのかな・・・


「実はさ・・・」


僕は読んでいたノートを春にも見せた。

春は静かにノートを読む。


「何・・・これ」


「僕も今見つけて・・・何が何だか・・・」


「ね、ねえ・・・ここ・・・」


春が指さしたところには衝撃の文章があった。


『ついに智也が兄の"裕也"を実験台にした

 裕也から最後に来たメッセージは"たすけて"

 家に行ったときにはもう、遅かった』


「お父さんが・・・嘘だよね・・・」


「裕也おじさんって確か・・・山で遭難して行方不明になったって・・・」


「もう・・・なんなのこれ・・・頭痛くなる・・・」


最後にはこんなことが書かれていた。


『信じられないかもしれないが、本当のことだ

 わたしはハルやカズ、智也よりも早く死ぬだろう

 どうか、ハルかカズがこの日記にたどり着けますように』


次のページからはいつものような日常のことしか書かれていない。

このノートを頼りにどうすればいいんだ・・・


「このことは二人の秘密にしよう お母さんも信じられない」


「わ・・・わかった」


「ノートは僕が持っておくから」



全く眠れない状態で朝が来てしまった。

そんなに物もないし。今日で遺品整理が片付くだろう。


朝食を取り、僕たちはおじいちゃんの部屋の隣の部屋を片付けることになった。


「カズ・・・寝れた?」


「まったく・・・」


「だよね・・・」


いつもくだらない話を振ってくる春も、さすがに今日は元気がないみたいだ。


「ねえ カズ、この掛け軸取れる?」


春は身長が小さいため、掛け軸に手が届かないようだ。

漢"人は人を尊敬し、人は人を支え、人は人を愛する"と書かれた掛け軸を僕が取る。


「この掛け軸、いるかな?」


「一応持っていこう」


グウウウ・・・


「春おなかすいたの?」


「う、うん 朝のパンだけじゃ足りないし・・・」


「てか、もうお昼時間すぎてるじゃん」


「お母さんいつも十二時ちょうどに呼んでくるのにね」


お母さんは時間に厳しい人で、一分過ぎただけでも注意してくる。

そのお母さんが十五分もすぎるなんて珍しいな。


僕とハルが居間にいくと、お父さんがノートを読みながら座っていた。


「あれ、お母さんは?」


お父さんは気持ちの悪い笑顔を浮かべながらノートを読んでいる。なんだか不気味だ。


「・・・2016年7月25日 妻を殺した

 私の作ったテストの薬を投与したら泡を吹いてそのまま三分後に息を引き取った」


「その日付って・・・今日・・・」


「昨日、見たんだろう?ノート・・・」


「な、なんで・・・」


「あんなコソコソ二人でやっているのを私が見逃すわけないだろう」


ノートをパタンと閉じ、立ち上がる。


「でもちょうどよかった バレないようにするのは大変だったし・・・

 本当は二十歳まで取っておくつもりだったが仕方がない

 今すぐ実験しよう・・・!!!」


嫌な予感がして、春の手を掴みお父さんから逃げる。

早く、家の外に行かないと・・・


「きゃあ!!」


悲鳴とともに春が転んでしまう。

振り返ると、足元には白目で泡を吹いているお母さんが横たわっていた。


「うわああ!!」


死体を目の当たりにして叫んでしまった。

後ろにはお父さんが注射を持ってこちらへ向かってきている。


もうおしまいだ・・・


ふと、お母さんの手元を見ると包丁が握られていた。

きっとこれで抵抗したのだろう・・・


僕は、そっと包丁を持ちお父さんの方を目掛けて走る。


「カズ!!危ない!!」


背中にチクッという痛みと、両手に少しドロッとした生暖かい液体が付いた。

こんな時でもお父さんは笑っているんだな・・・


「さあ、目の前で何が起こるのか見せてくれ!!」


背中が熱い。じわじわ熱いのが広がっていく。

視界もぼやけて・・・。


・・・僕はお父さんと一緒に倒れた。



そのままお父さんとカズは息を引き取った。

結局、私だけが残ってしまった。


私は母型の親戚の家で引き取ってもらうこととなった。

警察は、お父さんの研究所を捜査した。

すると研究所の地下から、たくさんの死体がでてきたらしい。


お父さんの実験の目的は、"人の心を変える薬"を作ること・・・。

でもその薬は危険で、投与するとほとんどの確率で死ぬ。


他の研究員たちもお父さんと同じで、人を殺すことに何の躊躇もなかったみたい。

みんな警察に逮捕されて一件落着・・・


「はあ・・・」


私は和室に掛けてある、掛け軸を眺めていた。


「この字・・・やっぱりおじいちゃんの字だよね・・・」


おじいちゃんはきっと、お父さんに向けてこの掛け軸を書いたのだろう。


__"人は人を尊敬し、人は人を支え、人は人を愛する"



・・・おしまい。


あら?彼女さん震えていますよ。大丈夫ですか・・・


・・・申し訳ございません。

私なりに怖くないお話を選んだつもりだったのですが。


そうですか、ロイヤルミルクティーもお口に合いませんでしたか。


・・・お待ちください!


行ってしまいましたね。

ふふ、貴方はいつも私の話を褒めてくださいますよね。

ありがとうございます。


彼女さんの残したロイヤルミルクティーはそのまま置いておいて大丈夫ですよ。

・・・あっ、飲まないでください!


・・・割れてしまいました。けがはありませんか?

申し訳ございません。


・・・


明日も・・・お待ちしておりますね。

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