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王都の見学

  今日は一日、休日を女王陛下から頂いた。


毎日、鍛錬のしすぎでいざという時にバテてしまっては元も子もないと言われた。


それにこの世界に来てからろくに王都の街を見学できてないだろうということで私とさくら、美琴の三人で王都を見学してこいと。


せっかくの機会なので、素直に休日をいただくことにした。


それでは王都に出向いてみるかと思って、歩き出した時にリーシアさんに呼び止められたのだった。



「待て、キョウコ」


「どうしたのですか? リーシアさん」


「これを着て、王都に行け」



リーシアさんは私に手渡しで何かの布を渡してきた。


これはなんだろうと思ってリーシアさんに聞いてみる。



「これは一体、なんですか?」


「それは幻影魔法が付与されたローブだ。お前たちは一応、勇者なんだ。もしその格好で出ていけばどうなるかくらいはわかるだろ?」



そこまで言われて私は頭の中でそのことを想像してみた。


想像の中で勇者の私たちはこの世界の人たちからは手厚くもてなされ、多くの人たちに囲まれ、とても見学どころではない。


勇者の召喚はこの王都にはすでに伝わっている。ということは異世界の私たちが出れば、人々から声をかけられるに違いない。



「わかりました。ではありがたく頂戴いたします」



私はリーシアさんから花束を贈呈されるように深くお辞儀をしながら受け取った。



###


  

幻影魔法が付与されたローブを身に纏い、王都の街を三人並んで歩いていた。



「それにしても響子ってさ、なんかリーシアさんに弱みでも握られてるのってくらい丁寧な口調だよね?」


「えっ!? そ、そう……かな?」



美琴にそう言われて私は少し確信をついてくるようでびっくりした。


リーシアさんに弱みを握られているというより、あの人は怒らせたら鬼のように怖いから丁寧になっているだけなんだけどね。



「まあ、あたしの講師もすごく熱心に指導してくれるから、めちゃくちゃ鍛えられてるし」


「確かに! 美琴、最近なんかたくましくなったよね!」


「なんだか、その言い方ちょっと凹むな……」



そんな近況の会話をしながら私は王都の街並みを感じていた。


さすが王都とだけあってか、人口は多く、人の行き交い、商人の出店が多く立ち並んでいて、商品の種類も豊富で購入しようかどうかと迷っている主婦らしき人もいる。


さらには屋台などのお肉の香ばしい匂いが鼻に無意識に入ってくると、お腹が空いてきてしまう。


こうやって歩いている間にだんだん食欲が湧いてきた。



「もう我慢できない! ちょっと、私なんか買ってくる!」



私より先に食欲に負けたさくらが勢いよく、飛び出して屋台の方へと走っていった。



「私たちもなんか買おうか?」



私がそう言うと美琴も「そうだね」と言ってさくらの後についていく。


そこで私たちは出店に並んでるありとあらゆる食べ物を買い漁り、食べ比べをしていた。


こんなことをしているとこの世界に召喚される前の学園に通っていた頃を私は思い出していた。



「なんだか、ここに召喚される前の生活思い出すよね?」



そう思っていたのはどうやら私だけではなかったらしい。


さくらも同じようにその時のことを思い出しているんだと少しだけ心が温かくなる。



「ああ。さくらがソフトクリーム落として泣いたやつね」


「もう! それは言わんといてよ、美琴ちゃん!」



美琴に暴露されたくないことを言われてさくらは顔を真っ赤にして照れて怒っていた。


王都の街を散策して、と言ってもほぼ中心街だけだから全部とまではいかないが、ある程度王都のことは知れたので帰ろうとした時だった。



「ちょっと、離してください!」



どこからか誰かが揉めてる声が聞こえてきた。



「今なんか、聞こえた?」



美琴やさくらも同様に聞こえたようで確認してきた。


どこから聞こえてくるのかわからないため、声のしてくる方向を探って辺りをキョロキョロと見回しいると。


さくらが私の肩をトントンと叩いてきたのでさくらのほうをみると、ある場所を指差していた。



「あの狭い通路の奥から聞こえてくるよ」



と言われてその方向を見ると、薄暗くあまり人気がないように思える狭い道がそこにあった。



「いってみよう」



そう言うと同時に私は体が先に動いていた。


さくらが指差した方向の道を道なりにそって急ぎ足で走っていくと奥の方に人影が見えてきた。


途中から立ち止まってゆっくりと音をたてずに進んでいくと一人の女性を壁に追い込んで、男二人が囲むような形になったいた。



「何しているの!」



その光景を見て私はいてもたってもいられず、真っ先に男たちに向かって大声で聞いていた。


その声に気づいて取り囲んでいた男たちがこちらを振り返り睨みつけてくる。


振り返った男たちはまさしくチンピラ顔と言わんばかりの悪人面をしていた。



「なんだ姉ちゃん。俺たちになんか用?」


「おい、てかこっちの姉ちゃんもなかなかいけるぞ?」



まるでこっちに聞こえるように言う男たちに私は軽蔑する視線を浴びせる。


それでも男たちは怯むことはなく、むしろ興奮していやらしい笑みを浮かべている。



「そんな怖い顔しないでさ、姉ちゃん。俺たちといいことしない?」


「言っとくけど、私あんまり手加減できないかもしれないですよ」


「それって、そういう意味なの?」



そう言って男の一人が私の肩に手を置いた瞬間、その男の手をとり、思いっきり背負い投げをお見舞いしたのだ。


すると男はただされるがまま、空中の浮いてかと思えばそのまま背中から地面に叩きつけられた。


鈍い音がした後、男は悲痛な叫び声を上げながら、痛めた背中をおさえていた。



「こういう意味です」



そう一言そえて、もう一人の男のほうを見ると姿はなく、尻尾を巻いて逃げた後だった。


…なんだ、逃げ足の早いこと。


私はこれでも武道の経験はあるのだ。


一対一だったら、たとえ男でも応戦することはできる。


そんな私に牙を向いたそこに寝転んでいる男には悪いが運が悪かったとしか言いようがない。


そんなことよりも私は絡まれていた女性の方を見ると、もうさくらと美琴が駆け寄って安心させていた。


二人ともなんて仕事が早いんだ。



「大丈夫ですか?」



私が声をかけると、その女性の人が顔を上げて安心したように微笑んでくれた。


そんな笑顔を見て私は心の中で可愛らしい女性だと思った。


この世界特有の金髪に青色の瞳に白すぎる肌、そして豊満なナイスバディ。


同じ女性でありながらこうも違うのかと自分の体型に少し不満を抱く。



「あの…、ありがとうございま…す」



彼女はまだ怯えているのか、震えた声で小さい声でお礼を言ってくれた。


うわぁ、声まで可愛いときた! これは可愛い渋滞が多いぞ!


と、私は心の中で悶えていた。



「よろしければ、家までお送りしましょうか?」


「え…。そんな…いいんですか?」



遠慮しがちな彼女に私たちはこの後もまた変な男に絡まれたりしたら大変だからと説明すると彼女は快く快諾してくれた。


そこから彼女の護衛という形で家まで送っていくことになった。


だがそこで思わぬ出会いがあることにこの当時の私は思っていなかった。

本作品を読んでいただきありがとうございます。

感想・評価・レビューなど受け付けております。

まだまだストーリーを書いていきますので応援、よろしくお願いします。

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