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勇者の言い伝え

  数百年に及ぶ、理不尽な戦争は人間の勝利を迎え、終結したかのように思えたがそれから300年後に不穏な噂を耳にしたと言うのだ。



「魔族がまた戦争を仕掛けてくると言うのですか!?」



それを聞いた私はつい大声をあげて驚いていたがやばいと思い、咄嗟に口を塞いだ。


そんな私を見て、女王陛下は今まで厳しい表情だがふいにクスッと笑っていた。


私は無礼だと思うがそんな姿を見て安心したと同時に可愛いと思ってしまった。



「まだ噂程度ですが、我々としてもそんなことを耳にしてはうかうかとしていられなくなってしまい、会議を行ったのちにもう一度勇者召喚の儀を行おうと」



女王陛下は魔族がいかに恐ろしい奴らなのか、理解している。だからこそ、この手段を選んだわけだったのか。


だがそこで私が聞きたかった答えがまだ聞けてないことに気づいて改めて聞いてみることにした。



「経緯はわかりました。けどそれでなぜ私たちが勇者として選ばれたのですか?」


「そうでしたね。その答えがまだでしたね。選ばれる勇者は神の審議によって選ばれるのです」



女王陛下は私たち三人にまっすぐ見つめてそう言ったのだ。



「勇者様とは古代よりこんな言い伝えがあります。勇者というものは神に選ばれし者で世界を統べる、時代の変革者であると」


「世界を統べる、時代の変革者……」


「神が見定めるその者はこの世界にふさわしいと判断されてからこの世界に送られてくるのです。だから我々は勇者様の召喚の儀に誰が選ばれるかわからないというわけです」



勇者というものの概念がよくわかってきた気がしてきた。


神に選ばれてここに連れて来られるのはランダムというわけで選ばれたものは何をそうしようとその運命に抗えることはできないということ。



「これがこの国に伝えられる我々の世界と勇者様の話でございます。その他に何かわからないことはございますでしょうか?」


「ええっと……私は最初っから、話が見えないんですけど」


「私も……。全く何のことか、さっぱりわからないんだけど」



この世界にきてずっと黙っていたさくらや美琴がようやく口を開いたが、まだこの状況を理解できていないようだ。



「つまり私たちはこの異世界に勇者として召喚されたわけってこと。だからこれからこの世界で生きていくってことになるのよ」


「え…? それって、つまり私たち…お家に帰れないってことなの?」



さくらが不安な表情で怯え、震えた声で私に聞いてきた。



「そうだね。わからないけど、今は帰れそうにないかも」



私がそう答えると、さくらは今まで我慢していた涙が徐々に溢れていき、しまいには座りこみ泣き崩れてしまった。


確かにさくらの言うとおり、異世界に来たからには必ず考えてしまうことだ。


私はどこかでこんなことが起きてしまったのなら、もう帰る術はないと諦めていた。



「さくら、しっかりして。私だって怖いんだから」


「だって、だって……」



美琴がさくらに寄り添うように抱き寄せて支えているがその美琴の表情も暗くて不安な顔を浮かべている。


そんな二人の姿を見て私はある一つの決心をした。



「女王陛下、もし私たちがこの世界を魔族から救うことができた時には元の世界に帰していただけると約束してください」


「承知いたしました。勇者様からの条件ならば、我々も断ることはできません。全力で元の世界の帰還をサポートさせていたします」



この条件のもとで私たち三人は勇者としてこの世界を救うことを決めた。



「さくら! 美琴! 絶対にお家に帰ろうね。私たちなら、絶対にできるから」


「響子…。うん、少し不安だけど、私も協力するよ」


「さくらや美琴がいるなら私も安心だよ。三人で絶対に帰ろう」



私たち三人は決意を固めて、これからの勇者としての使命を全うしていく。


勇者としての私たちが最初に行うこととしてまずは、勇者の魔力測定をすることだった。


この水晶にかざすことで自分の今のステータスと職業がわかるようだ。



「では勇者様方、こちらの水晶に手をかざしてください」



修道服を着た女性が持ってきた水晶に手をかざしてみると私の魔力を感じとったのか、金色と白が混ざった色に輝き出したのだ。


すると周囲の人間が途端にどよめきが起こった。



「素晴らしいです、キョウコ様! こちらの色はまさに勇者様の証です。【魔力】はもちろんのこと、【体力】【知力】にさらには神からのご加護までこんなステータスは素晴らしいの言葉に尽きます」



称賛だらけの言葉にむず痒くなってしまうがしっかりと受け取っておこう。


ステータスを見ると【Lv.10】と表記されていた。


【Lv.10】からのスタートとはやはり勇者ってすごいんだな。


そのあともさくらはピンク色の光が、美琴は青色の光がそれぞれ違う色、違う職業が決まった。


私の職業は【魔法剣士】さくらは【治癒師】美琴は【重戦士】とそれぞれ役割が決まったところで次は鍛錬の日々が待っている。


私たち三人には一人ずつの講師、戦術を教えてくれる人がつくことなった。



「それではキョウコ様、サクラ様、ミコト様。この国に平和を。無事を祈っております」


「「「はいっ!」」」



私たちは女王陛下に跪き、アナスタシアに平和をもたらすことを誓った。



「キョウコ様。勇者の使命を引き受けていただいたことを感謝いたします」



謁見の間をあとにしようとしたところで私は女王陛下に呼び止められた。



「なぜですか? もう後に引けない状況ですし、そもそも断る理由などないはずですが」


「いえ、本当は断られるものだと思っておりました。なにせこちらの世界に勝手に連れて来られて勇者になれと言われたら反発される覚悟もありました」


「そんなことは…。いえ、実際言うと私も本当は断ろうと思ってました」


「そう……だったの、ですか?」



女王陛下とて、驚きを隠せなかったようだった。


そうだった。この世界に連れて来られたときに戸惑いもあったがやはり怒りの感情もあった。



「誰も知り合いがいないところで女三人でしかも勇者って、流石に馬鹿げた話だと思いました。もし断って自由の身になれたら、ここでのんびり過ごしながらゆっくりと帰還方法を探すのもありかな、とか。そんなことも考えてました」


「そうでしたか。ではなぜ心変わりをされたのですか?」



女王陛下の問いに私は少しの間、考えを巡らせていた。


どうして私は心変わりをしたのだろうか? そんな面倒なことはさっさと断ればいいものをなぜ引き受けてしまったのだろうか?


その答えはもうわかっている。



「そんなの決まっているじゃないですか。女王陛下のような美人な方に助けを求められたら断れないじゃないですか」



私はがまっすぐと嘘偽りのない笑顔でそう言うと、女王陛下の顔は綺麗な白い肌にほんのりと赤く染まっていて照れているように見えた。


そんな姿を見ると、後になって私も自分の言葉が急に恥ずかしくなってきた。



「ま、まあ。それに私、勇者ですから。」


「そうでしたね。キョウコ様は選ばれし勇者でしたね」



そう言った女王陛下の表情は明るく少しだけ笑っていた。


これからどんな戦いが待っているかわからないけど、私たちは自分たちができることをやるだけだ。


魔族だろうがなんだろうが、この国と女王陛下は絶対に守ってみせる。

本作品を読んでいただきありがとうございます。

感想・評価・レビューなど受け付けております。

まだまだストーリーを書いていきますので応援、よろしくお願いします。

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