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プロローグ

——それは、ある日突然の出来事だった。


いつものように高校に通う通学路を歩いていると、足元から謎の青白い光と何かの紋章が現れ、私たちを包み込むように強く輝き出した。


目を開けるとそこは見たこともない光景が広がっていた。


目の前に座っていた高貴で綺麗な冠と高級な衣装を着飾っていた女性が私たちにこう言ったのだ。



「我が王国へようこそ。勇者たちよ、どうかこの世界を救っていただけないでしょうか?」



私たちはいわゆる異世界召喚という、ありきたりな展開に巻き込まれたようだった。


この波乱の出来事は私と彼との出会いに何かしらの運命があったのだろうか?


私は四宮 響子(しのみや きょうこ)、17歳。都内の高校に通う女子高生。


学校では友人が多く、割と誰とでも仲良くしているほうだ。そんな私のことを皆は女神と噂しているらしい、だけど私はそんないい者ではない・・・。


別に自分では普通だと思っているし、特別な能力があるわけじゃない。


家族や周りのクラスの人は口を揃えて私を褒め称える、私にとってそれは苦痛でしかない。


今もそう、この通学路も私にとって、好きな場所ではないし、特別いい思い出もない。


それよりも心の奥底から湧き上がるのはずっと重たい、苦しくて罪悪感が心を蝕んでいくようだった。


この通学路の途中にある十字の道路の横断歩道を渡ろうとすると、あの嫌な記憶が蘇ってくる。


それはまだ私が高校入学の時だった。


入学式の日にウキウキ気分で向かっていると、その時の私はとても嬉しすぎて気持ちが昂っていたことだろうと思う。


あまり車が通らない道だからと油断していたと、安全確認もせずに横断歩道えお渡ろうとした瞬間、私の横からスピードを出して走ってくるトラックに気づかずに飛び出した私は呆然としてしまい、その場に立ち止まってしまった。


私、ここで死ぬんだと確信した時に前から突然勢いよく押されて後ろに倒れた。


そしてそれと同時にけたたましくクラクションが鳴り、凄まじい衝撃音の後に何かが強く潰される音が聞こえた。


私はその間、頭を打って気を失っていたことで何が起こったか記憶が定かではなかった。


けれど、意識を失う前に一人の制服を着た人がぴくりとも動かないことだけははっきりと記憶の片隅に焼きついていた。


私が次に目を覚ました時には病院のベッドの上だった。


医者の話では私は軽い脳震盪だと話してくれた時はホッと安心して胸を撫で下ろした。


けどそれと同時に私を助けてくれた高校生の男の人はどうなったのだろうと気になって聞いてみると私を助けた人はもうすでに亡くなっていたのだった。


私はとても深い絶望感に苛まれた。


私のせいでせっかくの高校人生を終わらせてしまったのだと自分を責めていた。


当時の私はそんな深い絶望から立ち直るのに時間がかかっていたけど、そんな私を支えてくれたのは同じ高校に通う女友だちの藤原 さくら、白石 美琴の二人のだった。


引きずっていた私に寄り添ってくれたことで徐々にいつも通りの性格を取り戻していき、学校に通えるようにまで立ち直ることができた。


だからこそ私は今こうして、普通に高校に通えることができているのだ。


今は亡くなってしまった見ず知らずの恩人にありがとうと伝えることはできないけど、もし伝えられたら感謝を伝えたい。



「おはよう、響子!」


「さくら! おはよう」



後ろから元気よく抱きついてきたのは私の大切な親友の一人、藤原 さくら。


絵に描いたように明るくて、スポーツが得意な女の子で誰にでも優しく話すことで男子人気も高いのだ。



「おはよう、響子」


「おはよう、美琴」



歩道の反対側にはもう一人の親友の美琴が立っていてこちらに手を大きく振っている。


遠目からでも彼女は女子の平均身長が高く、綺麗でかっこいいと有名だ。


だからこそ美琴は女の子から絶大な人気がある。


そんな二人がこんな私と友達になってくれるのが本当にあり難いと思う。


私たちは通学路の途中で合流して、そこから仲良く並んで話しながら学校に向かって歩いていく。


今日もいつもの学校生活が始まるんだと、そう思っていたときだった。


途端に私たちの足元に何かが光り出したと思った瞬間、その青白い光は何か文字が刻まれていて紋章のようなもだった。


さらに紋章は次第に大きくなり、私たちを包み込んでいた。


とても眩しすぎるため、不意に私は目を瞑ってしまった。


そして何かふんわりと浮かんだと思った時、地に足がつく感覚があり、ゆっくりと目を開けるとそこには今の今ままで私たちがいた景色とは違う光景が広がっていた。


目の前には明らかに日本とは違うところというよりもどこかの建物の中か、どこか。


周りはコンクリート造られた部屋で床から天井まで続いていて、その部屋の中には白く綺麗な衣装で修道服を纏った者が数人とその真ん中にはさらにその者たちを束ねる長のような人がものすごく感動に満ち溢れた表情をしていた。



「やった……。やったぞ!」


「素晴らしい! ついに……ついに勇者を召喚できたぞ!」


「やりましたね神父様。これで陛下にもいい報告ができますね」



呆気に取られる私たちを置き去りにして何の説明もないまま、互いに肩を抱き合って成功を喜んでいる。


私たちは一体何を見せられているのだろうか?



「急な呼びかけに応えていただきありがとうございます、勇者様。謁見の間で女王陛下がお待ちです」



やっと私たちに話しかけてきたかと思ったら、このようなことを言われた。


修道服を着たメガネをかけた女性の人が優しく微笑みながらそう言う。



「呼びかけに応えたというより、勝手に連れてこられた感じですけど」



だから私は少し嫌味な感じで言ってしまった。


そんなことを言われると思ってなかったのか、ここの人たちは少し困惑したような表情をしていた。



「確かに。あなた方にとってはとても不服なことでしょう。そのことも踏まえて女王陛下とお話ししていただけるとありがたいです」



修道院の長であろうらしき女性が申し訳なさそうな顔をしながらそう言われてしまうと私も強く言い返すことはしなかった。


それから私たち三人とも修道女の人たちに囲まれて女王様とやらが待つ謁見の間へと向かい歩いていく。


歩いている途中に色々と建物の中を見ていると本当に私たちがいた世界とは違うということがわかる。


女王様が住む城ということもあり、全てが高級品で揃えられていて、通路でたまにすれ違う甲冑を纏った兵士や、メイドさん、そして明らかに国の中枢の人物であろう人も私たちを横目に見てくる。


別の世界からやってきた者だからあまりいいことは思ってないのだろう。



「勇者様、つきましたよ。こちらで女王陛下がお待ちです」



そんなことを思っていると、謁見の間にたどりついていた。


大きな扉がゆっくりと音を立てて開けられると、大きくて広い部屋の奥の方で女王陛下であろう綺麗で美しい女性が私たちを待っていた。


そこでやっと確信した。本当に私たちは異世界にやってきたのだと。

本作品を読んでいただきありがとうございます。

感想・評価・レビューなど受け付けております。

まだまだストーリーを書いていきますので応援、よろしくお願いします。

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