第十二話 助けなきゃ
表記揺れと、一部セリフを変更しましたのでお知らせします!
活動報告に詳細を記載しました!
ミソラの言葉に引き寄せられるように、シドも崩れた場所に近づき、青く輝く結晶の中を恐る恐る覗き込んだ。そして――その場で腰を抜かしてしまった。
「ほ、ほんとに女の子が!……」
結晶の中には、10歳くらいの白く長い髪をした少女が、目を閉じたまま静かに眠っていた。
驚きで硬直するシドとは対照的に、ミソラはさらに結晶に近づき、中をじっと見つめた。
「……わぁ、綺麗な女の子」
ミソラは結晶を触ったり、手の甲で軽く叩いてみたりする。
その無鉄砲とも言える行動に、立ち上がりかけたシドは背筋が寒くなった。
「よくそんなことできるな……」
つぶやくシドに、ミソラが振り返る。
「なんかこの子、すごく苦しそう。どうにかして助けられないかな?」
そうシドに問う彼女の瞳には、既にまっすぐな決意が宿っていた。
「大樹様に関係することだし、下手に関わるのはよくないと思うな。それに、もしかしたら本人が望んでこうなってるのかもしれないし」
「そんなわけない! 誰も来ない場所で、独りで結晶の中に閉じ込められたい人なんている?」
「それはいないかもしれないけど。だからと言って、僕らにできることある?」
2人の間で言い合いが始まる。
だが、ミソラの言葉には一切の迷いがなかった。
「助けたいと言ったって、どうやって助けるんだよ」
「わたしだってわからないよ! でも、やれることをやらなきゃ、何も変わらない!」
そう言い放つと、ミソラは地面に落ちていた石を拾い上げ、結晶に力強く叩きつけた。しかし、青く輝く結晶はびくともせず、表面に傷ひとつつかない。
ミソラはそれでも諦めず、何度も石をぶつける。だが、無反応な結晶に彼女の動きが徐々に焦りを帯びていく。
(ミソラを止めないと!)
その姿を見て、シドは拳を握りしめた。
(物理的な衝撃じゃダメなのかも……この結晶、大樹様に関係があるものだとしたら……『音の実』なら……!)
シドは、静かにヴァイオリンを構えた。そして弦に弓を当て、音を奏で始める。
柔らかくも澄んだ旋律が空気に溶け込むと、ミソラも手を止めてシドの行動を見守った。
シドの周りが淡く輝き出す。
光はやがて、6つの『音の実』となり、演奏と共に成長していく。
十分なほど大きくなった『音の実』をみて、シドは演奏を止める。
すると『音の実』たちは、青い結晶の方へとまるで吸い込まれるように入っていった。
――が、何も起きない。
「ダメか……」
シドが肩を落とした、そのとき――。
カキン――ッ!
音を立てて結晶にひびが入った。
お読みくださりありがとうございます!!
今日は試験的に7時半更新にしてみました!
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