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第八話 深まる謎

すみません、出先で更新少し遅れました!


 見覚えのない少女、初めて見る奇妙な楽器、耳慣れない儀式。

 シドは、これ以上ないほど困惑していた。

 頭の中で情報が渦を巻き、整理どころか、それぞれがぶつかり合って混乱を増していく。

 

(そもそも、こんなに目立つ娘のことを僕が知らないなんてことあるのか?)


 改めて考えると、200人ほどしかいない弦族の村で全く知らない顔があること自体異常だと、シドは今になって気づいた。

 

 ――それもそのはず、ここ『無音の森』の周辺には、他の村など存在しないはずなのだから。


 頭ではありえないと否定しつつも、目の前の状況はそれを真っ向から否定している。

 一方ミソラも、まるで難解な楽譜を前にしたように、何度も眉間に皺を寄せていた。


「……君は何者なの?」


 シドの口から漏れ出た疑問に、ミソラは驚いたような顔を見せたが、ミソラはまたもや頬を大きく膨らませてむっとした表情を浮かべた。


「それはわたしのセリフ! わたしなんて、まだ君の名前も聞いてないんだからね!」

「あっ、ごめん」


 言われて気づき、コホンと小さく咳払いをして言った。

 

「僕は、弦族のシド。『十二奏者』ヴァイオリン担当のシドだよ」

「シドね、覚えた! じゃあ改めて、わたしはミソラ! 管族のフルート担当、よろしくね!」

「こ、こちらこそ……」

 

 自己紹介を終えると、ミソラの先ほどの不機嫌な表情は嘘のように消え、無邪気な笑みを浮かべる。その無垢な様子に、シドは思わずたじろいでしまう。

 天真爛漫という言葉は、彼女のためにあるのではないかと彼は思った。

 そして、彼女の言葉を咀嚼するうちに表情が再び曇る。

 管族も、彼女の持つ楽器の名前も聞いたことがなかったからだ。

 

「管族 ……フルート……、やっぱり僕たちは違う村からここに……。ねぇ、管族の村はどこにあるの?」


 シドは、聞かずにはいられなかった。

 

「えーと、あっちにずーっと真っ直ぐ進んで森を抜けるとわたしたちの村だよ!」

「ってことはやっぱり森の周辺にあるのか……」

「シドの村も?」

「……うん」


 静かに頷くシドを見て、ミソラは小首をかしげる。

 

「森の周囲に別の村があるなんて話、わたし聞いたことないな~」

「僕もだ」

 

 不意に、シドの頭に1つの可能性が浮かぶ。


(意図的に隠されている……?)


 だとしたら、それは村全体の秘密である可能性が高い。


「……このこと父さんは知ってるのか?」

「お父さん?」

「えっと、僕の父さんは族長なんだ。でも、あの人のことだ。きっと知ってる」

「え、シドのお父さんもなんだ! 私のお父さんも族長なんだよ、一緒だね!」


 ミソラは目を輝かせながら、嬉しそうに言う。

 

「お父さんとは、とっても仲良しなの」

 

 その無邪気な姿に、シドは一瞬目を伏せた。


「それは、僕のところとは違うね……」


 ボソッと呟くシドの言葉は、ミソラには届かず宙へと消えた。


「村の事、私の友達なら何か知ってるかも! 返ったら聞いてみよ!」

「なんで? 友達じゃなくて、直接聞いたらいいんじゃないの? その仲のいいお父さんに」

 

 思わず皮肉めいた口調になってしまった自分に、シドはすぐ後悔した。

 しかし、ミソラは気にする様子もなく、笑みを浮かべながら首を横に振る。

 

「ダメだよ! そんなことしたら私が掟を破ってるのがバレちゃうもん。私が『無音の森』に来てることは、その友達しか知らないの」

「それは確かに聞けないね。……あれ?」


 シドは、彼女の何気ない言葉の中に、どこか見過ごせない違和感を覚えた――それは、真実に迫る糸口のようにも思えた。



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