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『実戦では役に立たないと言われたガンナーさんが異世界入り』  作者: 鼓動大路
二章・あばよゴーマー、こんにちわグラシエラ
13/22

物理的退魔行

特になし

『静かの森と思わせて中は桃源郷、その実、太夫の道中は百鬼夜行、酒は毒水・肴は毒虫……この遺跡ってかなり古いよね。不注意な旅人がカビの生えた恨みに巻き込まれて何人死んだのさ?』

 嘆きの谷内部に、いかにも騙されたマヌケと言ったツラで入った泰隆は再び視力を戻してしまった。

「こう言う時あのおじさん(祐直)なら何ていうのかな……」


「『イピカイエ、くたばりやがれ』だと思いますよ」


 泰隆の影の中から、酒井兵庫が出てきた。

「わかった、あの太夫のダークエルフさんにちょっと喧嘩売ってくる!」

 タンクトップとボロボロのジーンズに着替えた泰隆は元気に走っていった。

 

「えっ?」

 祐直が数百年分溜め込んだ怒りが泰隆に受け継がれたことに、兵庫は気づいていない。

 

 しゃなり、しゃなり、と死の花魁道中は進む。

「こいつはウインザー114便の分だ!」

 花魁道中の主役にして、悪鬼と化したダークエルフの元女将軍・タカオ(高尾)が横合いから渾身のパンチを顔面に食らって吹き飛んだ。

 

「な、何をするの?!」

 口の端から血を流して、折れた歯を吐き出して太夫が立ち上がる。

「人に憑いて取り殺すなら、殴られる覚悟ぐらいしとけクソッタレ」

 何故かタカオより満身創痍の姿で泰隆が言う。

「一万五千の幽鬼の軍勢が居るのよ?! 馬鹿じゃないの?! 本当に馬鹿じゃないの?!」

 泰隆の周りに伏兵の気配が一切ないことに、タカオは驚愕した。

「殴る・蹴る・怨念の核を握り潰す、これを一万五千回やりゃあいいんだろう? 最近のフィットネスクラブじゃ近所のおばちゃんがやってるぜ」

 泰隆がにいっ、と笑みを見せる。

 

「この世界が好きだ、滅んでほしくない」


「いや、それ言う人はこんな蛮勇に任せた分の悪いステゴロ勝負しないと思うんですが……」

 嫌な脂汗を拭う兵庫こと貫一郎の腰にも、グラシエラから贈られた丹後祐直の二振り目がある。とりあえず3000体くらいは怨霊兵を引き受ける気でいる。

「お大尽クラッシュ!!!」

 泰隆は王国金貨が一杯に詰まった袋で怨霊兵の頭をぶん殴り、更に蹴りを入れ、予告通り肋に手を突っ込んで怨念の核を握りつぶす。

「あと14999回だな!」

 死んだ目で敵兵を撃ち続けた祐直と一つ違うところは、クリスマスにツイてない刑事のテンションを最期まで維持する気であるところだ。


「若いってイイねえ……」

 慟哭の谷の外で泰隆の怒号を聞いて、グラシエラは笑いながら頷く。

「自分も混ざりたくてたまらないくせに何言ってやがる」

 大軍相手の戦いとなると配下の部隊運用あっての孫市は、流石にちょっとためらってしまう。

 

 この世界におけるマジックミサイルとは。

 基本の術であり、ダメージが極わずかしかない分ほぼ確実に当たる。詠唱もいらず、ホーミングもする。

 要するに行也はひっきりなしに小刻みにヒットポイントを削られながら、スカッドマン・ジョン相手に刀とマイクスタンドをぶつけ合っている。

「き、君まで通せば、中の仲間たちは確実に敗れるだろう、と、通すわけにはいかないなあ」

「いや、泰隆が勝つのは間違いないよ。問題はその時あいつが生きてるかどうかだ」

 

 スカッドマンは令嬢じゃない

 スカッドマンは追放しない 可能性は誰にもある

 スカッドマンは模索する

 職業に貴賎はない いらない職もないだろう?

 ブルーチーズに白カビチーズ でもカビたチートはない

 この世の全ては使いよう とにかく一度考えてみなよ

 君にないのは応用力 表現力もないんだろう?

 スカッドマンが補おう

 スカッドマンは誰かって?

 みんながスカッドマンだ

 

 相手がどうあろうとひしゃくの形に足を運びながら歌い、マイクスタンドを振っているだけなのに行也の刀が微塵も通らない。

『まさか……いやいや、ないだろ……』

 行也が刀を抜くと、マジックミサイルの本数が増えて勢いを増している。

 

 ならば。

 

「戦意抜きで通るよ、泰隆を助けに行かないと」

 行也は刀を収めて、スカッドマン・ジョンの傍を通った。

「スカッドマン・ジョンのメッセージが伝わったようだね」


 戦わずに済めば、その方がいいこともある。

特になし

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