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『実戦では役に立たないと言われたガンナーさんが異世界入り』  作者: 鼓動大路
二章・あばよゴーマー、こんにちわグラシエラ
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グラシエラと孫市

『グラシエラ、お前に頼みがある』

『転移者の集まりと、王家のつながりを強めたい。当代魔王が、ジャンバラヤが狂ったことに気づいた』

『お前の見合い相手は、八ノ姫が呼んだ蓋世の英雄、鈴木重秀・『孫市』殿だ』


「きゃあああああっ!!!」


 大きな悲鳴を上げ、びっしょりと汗をかいてグラシエラ姫は起き上がった。女性の精鋭近衛が間髪入れず数名寝室に飛び込む。

「だ、大事ありません、下がって結構ですよ」

 グラシエラが右手で頭を抑える。

「んー、どうした伊賀殿ー?」

 グラシエラと同じくらいの歳に見える若い『孫市』が起き上がる。グラシエラ・祐直がこの距離でもミニガンを当てられる気がしない相手は、『雑賀孫市』の『鈴木重秀』しかいない。

「鈴木殿……床で寝てりゃ紳士的振る舞いってわけでもねぇぞ。グラシエラ姫の部屋に気軽に入るんじゃねえ! 『俺』が起きてない時は特にな!」

 当人たちも覚悟しているとは言え、『伊賀殿と姫様がいつ溶け合って一つになるかな、そう長くは持たんぞ』と言ったら流石にS&W M629の神速全弾撃ちが来るので、重秀はそれを言わないことにした。

「そうは言っても俺は姫の護衛だし、雇われたばかりでここ辞めたら職探しめんどいし、俺じゃ勝てない強敵が来たらここの近衛じゃ背中を任せられねえ。なあ、伊賀殿」

「チッ、姫様はお前のレベッカ・リーじゃねえぞ。ったく、これ飲んで寝ちまえ」

「うーい、どうも」

 北大陸製のバーボンに波一つ立てず祐直がグラスを放ると、これまた見事に重秀が受ける。

 

『何でこいつが来ると死人の夢を見なくなるんだ……』

 アスピリンを御典医に処方させることも無くなっている。

 



「今、稲富殿の悲鳴を聞いたような気がする……」

 貫一郎と剣の稽古をしながら、行也が言う。

「気の所為にござりましょう。ささ、稽古を続けますぞ」




「ユキヤは変わっちゃったけど、ボクはどうすればいいのかな……」

 藤原泰隆は、祐直が通った数百年の苦難を突っ走ろうとするユキヤを寂しそうに見ている。


「私が姜伯約に感じたように嫉妬すればいいんですよ、憎めばいいんです、時間をかけていつか惨たらしく殺せばいいんです」

 いつの間にか泰隆のそばに馬謖が立っている。


「できないよ、そんなこと」

「じゃあ、時間をかけて貴方にしか出来ないことを見つけるしかないでしょう。私は『荊州時代を支えた驍将と共にじっくり学べない以上、急造で軍師は出来ません』と丞相(諸葛孔明)にきちんと言えなかった」

「え? 離間を仕掛けに来たんじゃないの?」

 のほほんとした少年に見えて、泰隆は鋭い。引いて正解だと馬謖は思った。

「貴方は何も言わず先主に殉じた兄上にどこか似てますね、忌々しい。眉毛が白いわけでもないのに」

「彼はどうも妥当とは思えない評価を受けた鉄砲撃ちの見た世界を走りたがってますが、貴方はネタ扱いされたアワレな軍師の人生をゆっくり見学してくれそうな気がします」

「元いた世界に帰ったら、三国志演義でも読んでご覧なさい。わかりやすい漫画ではなく文章でね。人生の哀歓と妙諦が詰まってますよ」

 馬謖は去った。




「エルフ族に『伝わらない』ロングスタッフの真髄、お見せしますよ」

 メルセデスは片膝を突き、まず前方に野犬の群れがいるものと思い目線を合わせてから、目を閉じて内力を杖に集中する。

 

 かっと目を開いたメルセデスが、疾風と化した。物乞いは、概ね一人で杖を頼りに野犬や害獣を打たねばならぬ。


「魔法の杖って、こう言うものだったんだ……」

 風と水の魔法を学んでパーティの役に立つはずが、がらしゃの前では何も出来ずあっけなく首をねじ切られ、食われかけた。宮坂敦子には、それが悔しくてならぬ。

「ゴーマーさんには全然及びませんけどね。自顕の水晶玉を壊して、私の頭を吹き飛ばして、何もかも憎んで、『死せる都の血の魔法陣』を誰よりも酷い悪用をするかと思いきやそうでもなくて、お世話になったスラムの人の死を嘆いてソクシンブツになっちゃって……人って、なんなんだろ」

 メルセデスが自分の杖をぽん、と叩くと、今度は三節棍になる。


「かかって来なさい」

 ゴーマーこと祐直がやったしぐさ。ブルース・リーのように手招きする。

「はい!」

 杖を左脇に構え、敦子が走る。




「平原美由紀さん、その顔ください」

 がらしゃが一歩近づくたびに、美由紀が泣きながら後ずさる。

「あ、顔以外もください。たべたいな。ヒーラーになってしまえば、他の人も死んだも同然ですものね」


「いやだいやだいやだいやだこわいこわいこわいやめてどうしてわたしばかりこんなめにいたいのいやちぎられるのいやかじられるのいや……」


 泣きじゃくって、尻餅をついたまま後退り、尊厳も決壊したような気がする。その手が、消毒用アルコールの入った容器に触れた。

 

「こ、こんちくしょうっ!!!」


 ごくっ、ごくっ、ごくっ……ぷはあっ!


「でへっ、えへっ、うふふふふっ……あ~、せいっ!!!」

 これまで何度もユキヤ達の傷を癒やしてきた内力が、龍の形になって両掌から飛び出した。まともに食らったがらしゃが吹っ飛ぶ。

 内力が美由紀を守るように天高く渦を巻き、枯れ葉を巻き込んで隠す。渦の中にがらしゃが飛び込み、砕け散れと言わんばかりに拳を繰り出す。美由紀の掌が受ける。


「アディオスアミーゴ」


 美由紀の空いている方の手にプファイファー・ツェリスカが握られる。砲撃でがらしゃの上顎から頭の天辺までが吹き飛んだ。すかさずジャンバラヤががらしゃの遺骸を抱えて走る。


「や、やったよぉ……」

 やりきった笑顔で、美由紀が倒れて大いびきをかく。


「な、何だ?! 何やったんだ?!」

 後から駆けつけた兵庫と行也には、何が起きたのかさっぱりわからなかった。



「世話が焼けますね……」

 遠くで見ていたグラシエラが一陣の風となって去った。

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