86、えっ、どういうこと!?
俺が山田とテレビ電話をしている時、ドアをノックする音がした。
どうやらリッキーさんがお風呂に行かないかと誘ってくれたようだ。
俺は山田にスノーホワイトのメンバーを紹介したかったから、まずはちょうど良いからリッキーさんを一番最初に会わせることにした。
「リッキーさん、ちょっと入ってきてこっちに来てもらえませんか?」
俺がドアの外にいるリッキーさんにそう答えた。
リッキーさんはお風呂道具を抱えながら中に入り、どうしたのかとこちらに近づいてきた。
「山田、お前さっき話していただろ?うちのメンバーに会いたいって。」
『ああ、そう言ってたな。もしかして、そのうちの誰かが今来たのか?』
「そうなんだよ!……リッキーさん、ここに映っているこいつが、元の世界にいる俺の親友の山田です!」
俺がリッキーさんに山田が映っているスマホを見せると、リッキーさんは最初は何のことだ?みたいな顔をしていたが、徐々に目を見開いていき、そして叫んだ。
「それを貸せっ!」
すぐにリッキーさんは持っていたものを放りだしてスマホを俺からひったくると、何も言わずに通話を切った。
……えっ、どういう事!?
俺はびっくりしてリッキーさんを見上げた。
リッキーさんは痛みでなのか顔を歪め、右手でスマホを持ちながらもう片手は頭を押さえている。
痛みのせいなのか、体中から急に汗が吹き出して着ている服の色が変わっていた。
「だ…大丈夫ですか!?ものすごい汗ですよ!?」
俺がリッキーさんを支えようと駆け寄ると、突然リッキーさんに抱きしめられた。
「うっ!くっっ!!頭が割れるように痛いっ…!!」
リッキーさんは痛みを堪えるかのように俺を強く抱きしめた。
その体はすごく熱かった。
急にこんなことになってしまったが、一体どうしたんだろう!?
すると、いきなりリッキーさんの体から目が眩むほどの光が迸った。
俺はあまりの眩しさに目を瞑りはしたが、力が抜けていくリッキーさんを支えるためにさらに腕に力を込めた。
しばらくするとその光はリッキーさんに吸い込まれるように消え、何事もなかったかのように部屋は静まりかえった。
一体何があったのかとリッキーさんの顔を見ると、彼は俺を見つめながら大粒の涙を流して泣いていた。
「えっ!?どっ、どうしたんですかっ!?どこか痛いんですか!?」
俺は慌ててリッキーさんの身体をあちこち見ながら聞く。
身体の熱はもう下がっているようだ。
だがリッキーさんは緩く首を振って答えた。
「いや、今はもうどこも痛くないよ。熱も、もう下がったようだ。ずっと支えてくれてありがとう、紫惠琉。」
「もう何ともないなら良いんですけど……。」
俺がそう言うと、リッキーさんは自分が右手に握っていたスマホを見ながら苦笑いをする。
「そうか、あの時の奴が『リッキー』だったんだな。あの時はめちゃくちゃ失礼なやつだ!と思ったものだが……フッ、『自称神様』の言った『いつか』は今日だったんだな。それにしても『目印』って、もしかして俺の能力の事だったんじゃないだろうな?まあその能力のおかけで、俺は目覚めたんだが。」
俺にはリッキーさんが一体何を言っているのか理解できない。
えっ、「あの時の奴が『リッキー』だったんだな」って、どういう事!?
自分の名前が『リッキー』じゃん!?
俺もリッキーさんの言葉でだいぶ混乱しているようだ。
「やっと……やっとこっちの世界に来れたぞ、紫惠琉。やっとお前とこうやって会えたんだ。……長かったなぁ。」
「……」
「まぁ、お前にはわからないだろうが、俺はリッキーであり……山田でもある。」
へっ!?どうしたの、リッキーさん!?
俺が目を見開いて驚いていると、リッキーさんは苦笑いをしながら俺に話しかけてきた。
「さっきの出来事だが、スマホに映っていた山田の姿を見て、俺の能力が勝手に発動したんだ。それによってあの後の山田の人生が脳裏にものすごい速さでフラッシュバックされて、そのせいで頭が割れるように痛くなったが……おかげでここに至るまでのこと全てを思い出せたよ。」
えっ……ホントに山田なの?
リッキーさん、山田になっちゃったの?
じゃあ、今の山田はどうなったの!?
死んじゃったの!?
俺は思わずリッキーさんにしがみつき、そう叫んだ。
するとリッキーさんは俺の頭を撫でながら語ってくれた。
どうやら今現在の山田は普通に日本で先程のリッキーさんの対応に怒っているだろうとのことだ。
そしてこの後、スマホに送られてきた俺からの買い物リストを見て、その数に驚きつつもちゃんと買って鞄に入れてくれるそうだ。
その後の人生としては、山田は俺の家族と神様から貰った鞄を通して交流が生まれ、数年後に姉さんと結婚して子供2人に恵まれるらしい。
そして……人生の最後の日、山田が言う『自称神様』という存在が山田の魂を迎えに来たらしい。
そして山田はこちらの世界に来て、リッキーとして生を受けたそうだ。
だがしかし、それを覚えていたのも名付けされるまで。
名付けされてからさっきまで、すっかり忘れていたそうだ。
「そう考えると、お前との最初の出会いもやっぱり『自称神様』が仕組んだことなんじゃないか?と思えてくるよな。」
「そうだな、俺が初めてこっちの世界に来た時、みんなが戦っているところに『偶然』出くわしたんだもんな。」
俺が感慨深くうんうんと頷いていると、山田……リッキー?
とりあえずこっちの世界ではリッキーと呼ぼうか。
リッキーがニヤリとしながら俺を見た。
「そういえばお前、こっちに来たの、俺だけだと思ってないか?」
俺はそのセリフに驚く。
えっ、山田の他にもいるの!?
「いるぞ、俺が知っているのはあと3人だがな。」
「えっ、それ誰!?」
「お前の身近な奴だよ。」
一体誰よ!?
俺はそう思ったが……ふとその内の2人にはなんとなく心当たりがあった。
「……もしかして、兄さんと姉さん?」
すると再びニヤリとした、リッキー。
「正解。義兄さんは俺より何年か早く亡くなり、友梨佳は俺より後に亡くなったはずだ。どちらも何となく誰だか分かるだろう?」
「もしかして……兄さんが『スコット』さんで、姉さんが『リリー』さん?」
「これまた正解!ついでにバラすと、残りのエミリーは惠美さんだがな。」
なんですと〜っ!?
兄弟の世代がみんな来たの!?
えっ、どういうこと!?




