82、いろんな街へ行ってみよう! 1
俺は驚いて隣にいたルーシェさんを見る。
するとルーシェさんはまるで「ドッキリ大成功!」とでも言いそうな顔で俺を見ていた。
「そう、ここはスノーホワイトの出身地、スノービークだよ。エルフの隠れ里から一番近い場所なんだ。」
それを聞いて門番2人は驚いた顔をした。
「お前たち、スコットたちを知っているのか!?ヤツらは元気にしているのか!?」
あまりに勢いよく俺に向かってくるので、間にルーシェさんが立ち塞がってくれる。
「ああ、もちろん知っているとも。僕はギルマスだからね。それにこの子も最近スノーホワイトに加入した新人君だよ。よろしくね。」
ルーシェさんにそう言われて、門番2人は俺を凝視しだした。
なんか気まずい……。
「挨拶はまた今度彼らと一緒に来た時にでもゆっくりとしてくださいね。今はちょっと時間ないので、入り口ですぐに帰ってすみません。」
ルーシェさんが門番さん達にそう言うと、門番さん達はハッとして俺を凝視するのをやめた。
「そういえばテスト中だと言っていたな。じゃあ自己紹介は次回ここに来た時にでもしてもらうとして、奴らが元気に無事でいるのかだけでも答えてくれないか?」
「そのくらいなら大丈夫ですよ。彼らはとても元気に生活をしていますよ。」
それを聞いた門番さん達はホッとした顔をした。
「いや、それなら良いんだ、それなら。あいつら、ここを出ていってから一度も帰ってきやしなくてな。あいつらによろしく言っておいてくれ。」
「わかりました。ちゃんと彼らには伝えておきますね。じゃあ元の場所に戻りましょうか。」
ルーシェさんは俺の手を握ると転移魔法を使うよう促してきた。
俺は集中して元の光景を思い浮かべて、そこに2人が立っている映像を思い描く。
そして心の中で『転移!』と呟くと、次の瞬間には元の場所へ戻ってきていた。
「はい、よく出来ました!このくらいの距離ではもう出来そうですね。では次はローランの街との中間地点の街です。」
手を繋いだままルーシェさんがそう告げると、休む暇なく次の街へ。
光がやむと、そこは先程とは違って門の目の前付近ではなかった。
正確に言うと、門からこちらが見えないだろう森の縁、である。
こちらからは『街の全体像』とまでは言わなくても『街がよく分かりつつ、それでいてこちらの姿が確認できない』位置にいた。
遠くから見たその街は、どうやら中央に大きな城らしきものが鎮座している、そんな街だった。
「さあ、あれが次の街だよ。あそこはどんな街だと思う?」
急にルーシェさんが俺に質問を投げかけてきた。
俺は城があるというのがヒントとなり、もしかすると?と思った街の名前を言ってみた。
「もしかして……王都?」
するとルーシェさんは1つ頷いて「正解!」と言った。
「そう、城が見えるあの街は『王都』だよ!あの城には王族が住んでいて、それ以外にも王立騎士団や王立魔法師団がいるんだよ。今度、魔法師団長にこっそりと会わせてあげるよ!堂々と会うと厄介だからね。」
え?ルーシェさん、王立魔法師団長に面識あるの!?
俺が驚いた顔をしてルーシェさんを見上げると、苦笑いしているルーシェさんがいた。
「早く元の場所に帰らなきゃね……って、もう見つかっちゃったのか。早かったなぁ。」
苦笑いしたまま王都の方を見ていたルーシェさんだったが、次の瞬間、目の前に眩しい光が現れた。
「ルーシェ、こっちに遊びに来たんなら顔だ……ん?誰か一緒だったのか?」
突然の眩しい光の中から現れたのはルーシェさんよりもだいぶ背の高い、淡い金色の短髪で体のがっしりしたエルフの男性だった。
やはりエルフなので顔はとても整っているが体つきは里のエルフの男性よりしっかりしている。
服装は黒くて長い縁にたくさんの刺繍が入ったローブを羽織っていた。
「あ〜あ、見つかる前に元の場所に戻りたかったのに!早いよ、父さん!」
「なんだ、ホントに寄る予定はなかったのか?母さんもお前が来るのを楽しみにしているのに、もっと頻繁に来いよ?」
「無理だよ、僕もギルマスやっているからめちゃくちゃ忙しいし。」
「そっか、それじゃあしょうがないな。ところで隣のその子はいったい誰だい?」
背の高い美丈夫は俺を見下ろしながらルーシェさんに聞いてきた。
「この子は僕が親しくしている『スノーホワイト』に新しく加わった子だよ。今はちょっと転移のテストをしているところだから詳しく話せなくてごめん。またゆっくりできる時に連れてくるよ!」
ルーシェさんがそう笑顔で言うと、ルーシェさんのお父さんは「しょうがないな、近いうちに連れてこいよ?」と言ってルーシェさんの頭をグリグリと撫でた。
「んもうっ!子供扱いしないでよ!一応もう大人なんだからさ!……じゃあ、もう行くね!シエルくん、元の場所に戻るよ?」
俺はそう言われたのでルーシェさんのお父さんに頭を下げてから転移魔法を使った。
ルーシェさんのお父さんは、俺たちが見えなくなるまでずっと笑顔で手を振ってくれていた。




