133、避難民の帰還
それから大体1時間ほどでグリーさんは帰ってきた。
帰りは前に何度か見たことあるけど、何の気配も光もなく一瞬で帰ってきたよ。
それにしても……めっちゃ早くない!?
つまり、この国の王都まで1時間で往復できるって事だよね!?
この分なら他国でも1日で皆を帰国させられる気がするよ!
「さぁ〜て、お次は何処でっしゃろ?ヒュサカ行きでっか?」
「そうだね、次は普通の人族とドワーフの国、ヒュサカへ送ってくれるかい?でもここは人数多いから、一度は無理なんじゃないかな?」
ルーシェさんのその言葉を聞いて、グリーさんはにやりと笑う。
「そう思ったやろ?今の自分はちゃうねんで?なにせユーリ様と繋がっとるからな〜。見とけよ、ルーシェ!」
そう言うとグリーさんは一声吼えた。
すると身体が急に眩しく光だし、その光が収まるとなんだか身体が縦横にそれぞれ2倍……いや、3倍ほどにデカくなっていた。
その背中はまるで小学校の体育館ほどの広さはありそうだ。
「これなら一度に50人程は軽く運べると思わへん?」
グリーさんがそう言ってウインクをした。
確かに、それぐらいの人数は軽く運べるだろうし、なんなら100人はいけるんじゃないかな?
それからの準備は早かった。
さっきエルフ達を運んだから、あとに続く避難民達も安心して乗り込み、少し緊張しつつもリラックスしているようだ。
グリーさんは先ほどと同じく一度大きく羽ばたいて空中へと浮かぶと、あっという間に南の方へ飛び去った。
「彼は約束したら必ず守ってくれるから安心していいですよ、シエルくん。」
俺がジッと彼らの飛んでいった方向を見ていたからか、ルーシェさんがそう言って安心させようとしてくれた。
いや、別に不安で見ていたわけじゃないんだけど……まぁ気になっているのには違いない。
「今度行ったのは大陸でも南の方の国ですよね?人数も多かったし、住んでいる場所もヒュサカの中でバラバラだった。今回は結構時間かかりますかね?」
俺がそう言うと、なんで俺が見ていたのか理解したようだ。
「ああ、次に帰ってくる時間について考えていたんですか。そうですね……今度は先程と違って5つの村や町に送り届けなければならないんですが、そのうちの3つが神聖法国の奴隷確保のための誘拐によって廃村に追い込まれているので、そういう方は近隣の町や村に連れて行く予定ですね。まぁ、王都や他に親戚のいる地域へ行きたい方は先に申請してもらっているので、そうは多くないはずです。」
なるほど……廃村かぁ。
前にグリーさんからそんな事を聞かされたなぁ。
確か神聖法国が森の切れ目から侵入して、土地の強奪やその地に住んでいる人の誘拐をしているって。
みんな希望する場所へ連れて行ってもらえると良いよね!
「さて、残るはこの国の森の切れ目の土地に住んでいた村の人達やネシアの獣人達なんだけど……この国の住民は私が転移魔法で送り届けるよ。その方が目立たず、早そうだしね。そして残るはネシアの獣人達なんだけど、シエルくんも一緒に行ってみるかい?人族とはまた違った文化があると思うし、見てくるのも楽しいかもよ?それに行ったことない私では連れていけないしね。どうする?」
なるほど、ネシアかぁ……行ってみたいけど、皆も観てみたいんじゃないかなぁ?
「ルーシェさんはスノーホワイトがネシアに行ったことあるのか知ってます?」
するとそれを聞いてピン!ときたらしく、笑顔で頷いた。
「うん、知ってるよ。彼らはまだこのクレイン国から出たことはないね。いや、別に国外に出てはいけないっていうことは全く無く、逆に冒険者ギルドカードさえ持っていれば世界中を冒険できるよ。それが身分証明書になるからね。……もしかして皆と行ってみたいの?」
「ええ、今いるのは俺だけですからね。俺だけ楽しむんじゃなく、仲間みんなで楽しみたいんです。」
「なるほど、それは良いね!じゃあ、今のうちに迎えに行っておいでよ。ここは私がいるから大丈夫。」
「……すみません、じゃあ少しだけ待っててください。」
「そんな焦らなくても、まだグリーは出発したばかりだよ?今行ってる場所は遠いし、国内を何か所も回るから時間かかるよ。」
「分かりました、でも早めに戻ってきますね、グリーさんを待たせないで済むように。」
ルーシェさんがそう言って背中を押してくれたので、俺はスノービークに戻り、6人を連れてくることにした。
早速スノービークの俺の部屋に転移すると、ちょうど良く6人が集まってソファーに座り、お茶を楽しんでいるところだった。
良かった、あちこち回らなくて済んだよ!
いち早く俺に気づいたユーリが俺に向かって走ってきていた。
俺はそれをしゃがんで胸で受け止め、抱っこする。
「ママ、おかえり!僕いい子にしてたよ!」
「ごめんな、今回置いていって。転移する人数が多かったから俺だけじゃないといけなくてな。」
すると他の皆も同じく歩いて俺のそばに来た。
「お前が帰ってきたってことは、もう皆を自国へと帰国させることができたのか?」
「いや、まだ半分……ってところかな?今、グリーさんはヒュサカに住んでいた避難民たちを連れて行っているよ。あそこは一か所にポンと置いてくるわけに行かないからさ、何か所か回らないと。」
「そっか、それは大変だな、グリー殿は。」
「それで?なんでシエルは今、戻ってきたの?」
リリーさんはそう言って首を傾げた。
「それはね、最後に行くのが川を挟んだ隣国のネシアなんだ。獣人の国って、興味ない?」
俺が皆にそう言うと、セバス以外は「興味ある!」と答えた。うんうん、そういうと思った!
「次のネシアに行く人たちは人数が少ないから、一緒に行って見てくるのはどうかって、ルーシェさんが勧めてくれてね。俺だけはなんか抜け駆けみたいで嫌だったから、それでみんなを誘いに来たんだよ。どうかな?」
「もちろん行くわよ!どんな国か楽しみだもの!」
リリーさんの言葉に、他の3人も頷く。
……あとで聞いてみたところ、セバスは1度先代神竜に連れて行ってもらったことがあるらしく、みんなの楽しみな感じを見て黙っていることにしたらしい。
皆が行くことに合意したので、早速4属性竜の長達のいる広場に転移した。




