55、俺の家族は勇気あるなぁ!?
それから俺はしばらくソファーで改めてだら〜っとした後、山田にメッセージを送った。
すると俺の腹の上にいたユーリが、ふと上を向いたかと思うと、なぜかテーブルの上に移動した。
すると、しばらくして山田から『鞄に手を入れてみろ』とだけ返事が来た。
ん?なんだ、手を入れろって……?
とりあえず俺は言われた通りに鞄に手をいれる。
その次の瞬間、リストに『生き物』という欄が表示され、姉さんと兄さんの名前が出ていた!
えっ……どういう事!?
俺は手を入れたまま慌ててその『沖 友梨佳』の文字をタップすると、俺の手に柔らかな手が触れた。
俺は慌ててその手を掴み、鞄から引き出す。
すると姉さんが鞄からスルスルと出てきた。
出てきた姉さんは周りをキョロキョロし、それから手を繋いでいる俺を見る。
俺を見た瞬間、姉さんは目を見開き、次の瞬間には俺に抱きついてものすごく涙を流して泣き始めた。
「……姉さん、大丈夫?」
「……ぐすっ……だ、大丈夫じゃないっ!!」
俺は姉さんの背中をぽんぽんと叩いてやりながら、ふと鞄の中にはもう1人いた事を思い出す。
俺は慌てて姉さんを剥がして鞄に手を入れ、今度は兄さんの名前をタップする。
すると今度はゴツゴツした大きな手の感触がしたので、その手をつかんで引っ張り出す。
すると今度は鞄から兄さんがスルスルと出てきた。
それを見ていた姉さんは驚きのあまり、さっきまで泣いていたのが収まったようだ。
出てきた兄さんも、姉さんと同じく辺りをキョロキョロしている。
そして側にいる俺と姉さんを見ると、ホッとした顔をして俺たちをぎゅっと抱きしめた。
「……良かった、紫惠琉も友梨佳も無事だな。」
俺はその兄の言葉を聞いた途端、なんともいえない気持ちが湧き上がり、思わず涙を流してしまった。
もう二度と会えないと思っていた家族との再会。
それは思った以上に心を揺さぶるものがあったようだ。
「ごめんな、姉さん、兄さん……。勝手にいなくなる気なんて全くなかったんだ。まさか俺が異世界に落ちて、二度と戻れなくなるなんて思ってもみなかったんだ。本当に、心配かけてすまない。」
俺は泣きながら2人に謝った。
2人は俺を抱きしめながら、頭を撫でてくる。
その温かい手のひらが、たった1人でこの異世界に来させられた不安や緊張なんかが入り交じった、なんともいえない感情を温かく溶かしていってくれている気がした。
しばらく3人で再会の喜びに浸っていると、急にユーリが喋りだした。
『ママ、その人たちってまだ皆に会わせる気がないんでしょ?なら部屋の鍵は掛けておいたほうが安全だよぉ?』
確かにそうだ、急にドアを開かれても困るな!
俺は慌ててトアの鍵をかけに行った。
そして2人のいる方を振り向くと、2人はものすごく驚いた顔でユーリを凝視していた。
「……い、今、そのドラゴンの置物、喋らなかったか?」
「そんな気がしたけど……気のせいよね、兄さん?」
なるほど、ユーリは2人が来る前からテーブルの上で身動きしないように息を潜めていたから、2人には置物のように見えていたんだな。
「兄さん、姉さん、2人が置物って言っているのは俺の従魔のユーリだよ。ドラゴンの赤ちゃんなんだ!」
俺はそう言うと両手を開く。
するとユーリが嬉しそうに俺の腹めがけて飛んできて、定位置にしがみつき、頭を俺の胸にスリスリしてきた。可愛ええのぉ〜♪
あまりの可愛さに思わず俺もユーリを抱きしめた。
すると2人はさらに驚いたのか、目をめいっぱい見開き、口もあんぐりと開けている。
俺はくすくす笑いながら2人に近づき、ユーリを間近で見せてやる。
ユーリもその意図に気づき、2人に向かって笑顔を見せた。
『はじめましてぇ、僕はユーリといいますぅ。ママの魔力のおかげで産まれることができたんですよぉ!』
そうユーリが挨拶をすると、兄さんの方が先に正気に戻ったようで、挨拶を返した。
「俺は紫惠琉の兄の悠騎という。ユーリと言ったか?これからも紫惠琉の事をよろしく頼むな。」
すると姉さんも慌てて挨拶をした。
「ユーリちゃん、私は紫惠琉の姉の友梨佳といいます。これからもよろしくね!」
ユーリは2人の挨拶を受けて『うん、僕、ママの役に立てるように頑張る!』と言っていた。
俺は立ち話もなんだからと、二人をソファーへと誘う。
3人と1匹でソファーに座ると、すぐさま2人から何があったのかの説明?をさせられた。
2人は黙って聞きながら、たまに相槌を打ったりしながら最後まで話を聞いてくれた。
「……大変だったんだなぁ、紫惠琉?なにはともあれ、お前が死なないでこうやって無事に会えたのは良かったよ。」
「ええ、ホントにそうよね!私なんてもう二度と会えないのかと思って、目の前が真っ暗になっちゃったもの。もう、電話でしか話せないのかと思っちゃったわ!」
2人からそう言われると、ホント、申し訳ない気持ちになる。
「でもこうやってまた会えたんだから、たまにはこっちに顔を見に来てね。俺はそっちに帰れないからさ……。」
俺がしょんぼりしてしまったので、2人は慌てて「もちろん遊びに行く。なんなら毎日でも!」と言ってくれたが、考えてみればそれは無理なんじゃないかな、山田が鞄持っているんだし。
「それにしてもお前、中学生くらいに戻ってないか?ちょうど今日、山田君にお前のアルバム見せたんだけど、ちょうどそのくらいのお前に、今のお前そっくりだよ。」
……山田に俺のアルバム見せたんかい!まぁ、変なのないからいいけどさ!
「だってステータス上は14歳だからね。まさに中学生に戻ったんだよ。」
「えっ、しーちゃん中学生の年齢に戻っちゃったの!?いや〜ん、もうちょっとで私の天使ちゃんじゃなくなる年齢じゃない!どうせならもっと幼くなってればいいのにぃ!」
いや、姉さん、あまり幼くなると俺が魔物に殺されやすくなるから!
ここ、異世界で危険がいっぱいだから!!
「……姉さん、この世界がとても危険な世界だってこと、忘れちゃった?」
すると姉さんは「あっ!そうだったわね……。」と複雑な顔をした。
とりあえず俺は実際の武器なんかを見せてやった。
日本ではこちらでいう『武器』に当たるものは所持できないからね。
見るのも初めてなんじゃないかな?
「今、俺が持っている武器なんだけど……どうやら過去にこっちに来た日本人が打った日本刀なんだよね!なんか不思議だよね〜、俺たちの先祖も武士だったわけだし。『不思議な御縁』だと思わない?」
俺の日本刀を手にとって眺めていた兄さんが、それを聞いて何かを思い出したように「あっ!」と言った。
「そういえば日本刀で思い出した。お前たちは知らないだろうが、実はうちの蔵には本物の日本刀があるんだ。これは歴代の当主しか伝えられないもので、お前たちは見たことないと思う。で、その日本刀だが、どうせ日本にあってもしょうがないからお前にやるよ。今度来る時に持ってくる。」
……えっ、うちの蔵にはそんな物が眠っていたの!?




