53、宿に戻ってきたけど、夕飯は…?
街に戻ってきてすぐさま宿に戻ると、女将さんも皆の格好を見てびっくりしていた。
そりゃそうだよ、着ている服が血だらけだもん。
そんな俺達に女将さんは「早くお風呂に入ってきな!ついでに水でその血のついている服を洗うんだよ?」と言ってくれたので、お言葉に甘えてすぐにお風呂へ向かった。
この宿は男湯と女湯が分かれているので、いつでも入浴ができて助かる。
リッキーさんが言うには、どこの街でも男女別のお風呂がある宿屋は街に2、3軒程しかないそうだ。
この世界ではお風呂は各家庭に必ずあるらしく、衛生面ではみんな清潔なんだろう。
そこはやはり水やお湯の出る魔道具の普及のおかげと、過去にいた異世界人の影響なんだそうだ。
この世界に来て半月ほど経つが、どうもこの世界、異世界人の影響を結構受けている節がある。
例えばおにぎりなどの料理や調味料にしろ、売っている野菜や果物などにしろ、どこかしら『日本』を感じさせるものが多い。
そこは一体なんでだろうと思っていたが、過去にいた異世界人が頑張って食材を探したりして自分の住んでいた世界のものを少しずつでも再現していったんだろうか?
ともかく、そのおかげで俺は快適……とまではいかないかもしれないが、それでもそこまで不自由はしていなかった。
それに山田のおかげで今日からはものすごく快適な生活になれたしな!
ホント、山田様々だよ!
と、いうわけで話は戻るが、リッキーさん達と一緒に俺も風呂に向かう。
ちょうどに夕飯時だからか風呂には人がいなかった。
俺たちはさっさと服を脱いで風呂場へ向かう。
今日は2人にたくさん解体をしてもらったんだからと、俺が2人の血の付いた服を洗うと申し出ると2人からは「自分の服は自分でやるから良い」と断られてしまった。
……しょうがない、自分のだけ洗うか。
それから3人でしっかり体も服も汚れを落とし、お風呂にも入ってから脱衣所へ。
俺はさっそく鞄からドライヤーを取り出す。
コンセントに挿すコードがそのまま下にたれているが、スイッチを押すと普通に使えた。
……なんか、違和感が半端ないんですけど。
「シエル、それってなんの魔道具だ?」
興味津々にリッキーさんが聞いてくる。
「これは髪を乾かすための道具で、こうやって使うんですよ!」
そう言って俺は自分の髪を乾かしてみせた。
その後、リッキーさんとスコットさんの髪も乾かしてあげる。
2人共、とても驚いていたよ。
それから3人で風呂からそれぞれの部屋に戻り、少し休むことに。
俺はその間にスマホのチェックをする。
案の定、山田から着信があった。
どうやらついさっき受信したらしい。
内容は『ゆっくりできるようになってからでいいから、連絡が欲しい。』とのこと。
なんかあったのかな?
その時、ドアをノックする音が。
誰なのか聞いてみると、リッキーさんの声で「腹が空いたから食堂に行かないか?」と言われた。
とりあえず山田には『これから夕飯食べに行くから、その後1人になったら連絡する』とメッセージを送って、俺はすぐに洗った服を部屋に干してから部屋の外に出る。
すると4人が俺の部屋の前で集合していた。
「さっ、食堂に向かおうぜ!あ〜、腹減ったぁ!」
「そうね、今日は私もすごくお腹空いてるわ。」
「やっぱりあの美味しそうな匂いがそうさせているのかもしれません!」
「……と、いうわけで、今夜は食堂に行って今日作っていた料理も少し食べたいな!」
どういうわけなんだと思いつつ、やっぱりみんなも食べてみたかったか。
とてもいい匂いだったもんな。
しょうがない、みんなに少しずつ出してやるか。
「もちろんこの宿の料理も注文して、そこに追加で少しだけ出すくらいなら良いですよ。」
「了〜解!それで良いよ!どうせ旅の途中でも食べられるんだろ?楽しみだなぁ!」
リッキーさんがそう言って食堂の方に歩いていった。
皆もそれに続く。もちろん俺もだ。
食堂に着くとさっそく席に座り、メニューを見る。
今日のおすすめは『オークのステーキ』と『オークチャップ』、『オークのシチュー』だそうだ。
これならどれを選んでも料理がかぶらなくて良いね!
俺はオークチャップが気になったのでそれを注文。
皆からはすぐに俺が作ったのを食べたいと言われたが、さすがにそれは駄目だと言ってこの宿の料理を待つ。
しばらくして運ばれてきた料理がみんな揃うと『いただきます』をした。
俺も自分で選んだ『オークチャップ』を口に入れる。
日本の『ポークチャップ』と少し違うが、それでも玉ねぎの甘みとトマトの酸味が効いた美味しい料理だった。
俺はある程度みんなが料理を食べすすめた頃にコソッと唐揚げを出す。
それぞれの皿に2個ずつ配り、みんなの反応を見る。
「っ!えっ、これあのカレー味がするんだな!周りがカリカリなのに中から肉汁がすごい出てくるぞ!」
「なんて美味いんだ!これはいくらでも食べられる気がする!」
「ホント、美味しいわぁ!」
「……もっとホーンラビット、狩りに行きましょうよ。そしてまたシエルに作ってもらうのです!」
みんなとても美味しかったようで良かったよ!
……ただ、もっと小さな声で言って欲しかった。
俺の周りの席にいる人たちからの目線がすごい。
なんで『俺にもくれないかな!?』的な感じなんだろう。
俺が困っているのを見てリッキーさんがハッとしたように3人に声をかける。
「おい、静かにしようぜ?周りからの目線が痛い。」
そういうと周りに目線を巡らせた。
するとみんなこちらを見るのをやめてくれた。
ありがとう、リッキーさん!
それから俺達はみんな食べ終わるとそそくさと食堂を後にする。
とりあえず俺の部屋で明日の予定の相談をすることになった。




