51、その頃、俺は…… 2
俺はすぐにその2つをテーブルの上に出し、改めて鞄の中に手を突っ込む。
さっきはすっかり家電にびっくりして確認し忘れたので、今度は調味料は何があるのかの確認をしないと。
……なるほど、油、醤油、塩、味噌、料理酒、みりんはもちろん、予定通り唐揚げ粉もあった。
これで大体の料理は作れそうだね!
俺はさっそく唐揚げ粉とラップ、午前中に切っておいたホーンラビットのお肉を取り出す。
ちょうどボウルに入っていたので軽く酒を振って混ぜた後に唐揚げ粉を振りかけてよく混ぜ、ラップをして時間を置く。
実はこの唐揚げ粉は普通と違ってカレー味なんだよ!
大学時代の友達の地元ではこういう唐揚げが普通にあるらしく、食べさせてもらったら俺もはまったんだよな!
味を思い出して涎が垂れそうになって慌てつつ、ふと辺りが静まり返っているので周りを見渡すと、みんなが俺の方を見ている……というか、目の前のテーブルの上のものに目がいっているようだ。
「シエルくん、それって何?」
代表してメアリーさんが聞いてきた。
「これは俺が元の世界で使っていたコンロなんてすよ。あっちにいる友人に、この鞄とつながっている対の鞄へ俺の住んでいた部屋のものを全て詰め込んでもらったんです。他にもいろいろありますが、見ます?」
そう言って今度は冷蔵庫を出す。
あ、ついでにお肉を常温じゃなく冷蔵庫で冷やすか。
冷蔵庫を開けると電気は繋がっていないのに中はしっかり冷えていた。
……ホントに魔道具化してるんだな。
「これは食材を冷やす機能のある魔道具なんですよ。中段にあるこの引き出しには冷凍庫、つまり凍らせる機能があり、一番下の大きな引き出しには野菜や果物を入れるんですよ。」
俺は試しに中に味付けしたお肉を入れる。
中に入れたお肉に味が染み込むのを待っている間、ご飯を炊く準備をすることにした。
案の定、炊飯器が魔道具化しており、米を研いで水を入れてスイッチを入れると炊飯開始した。なんて便利なんだ……!
鍋で米を炊かなくて良いなんて!
料理をしていると突然、ポケットに入れていたスマホから着信音が。
俺はとりあえずスマホを取り出して確認すると、山田から『こちらの肉を調味料とかと一緒に送ろうと思うんだが、何かいる?』とメッセージが。
山田にこちらに部屋にあったものが届いている報告とお肉の希望?を伝えた。
やっぱりちゃんと物品が届いていることは伝えておかないとね!
それから冷蔵庫に入れた味付け肉を出し、代わりにラップをしたビッグディアーのお肉をパーシャル室に入れた。
とりあえず冷蔵庫の大きさがちょっと調理の邪魔になる大きさだったので、一旦鞄にしまう。
それからコンロの上に日本で使っていた揚げ物用の鍋を取り出して油を入れ、唐揚げ用のお肉を1つずつ箸で入れる。
最初は大きな泡が出ているが、その泡が小さなものになったらお皿に取り上げていくと、何枚もの大皿に山盛りになった唐揚げができた。
俺は熱々のままに唐揚げを鞄にしまう。
この頃には、この周辺にはとても美味しそうなカレーの匂いが漂っていた。
う〜ん、なんて美味しそうな匂いなんだ……!
どうやらそう思っていたのは俺だけではなかったようで、滅多に現れないはずの比較的小さな魔物が近寄ってきていたようだ。
それには4人とも気づいており、素早く対処、解体をしているようだ。
さらにお肉をゲットしたが、それも唐揚げにするのか…?
俺がニオイ対策と魔物よけをどうするかを考えていると、ユーリがテーブルの上に置いていた鞄から頭を出していた。
『ねぇママ、僕がここら周辺に結界を張ろうかぁ?』
ユーリがそんな事をいうので、みんなで思わずユーリを見てしまったよ。
なるほど、ユーリは神聖魔法と時空間魔法がどちらもMAXだったから、結界なんて簡単に張れるんだろうか。
とりあえず俺はユーリにお願いしてここら一帯を結界で覆ってもらった。
これで結界内に元からいる魔物だけ相手すれば良さそうだ。
そうこうしているうちに炊飯器からご飯の炊けた音がした。
中を見てみると艷やかな粒の立った美味しそうなご飯が炊けていた。
俺は炊飯器の蓋を閉じ、そのまま鞄に入れておく。
こうすれば少なくとも次にご飯を食べるときにはすぐに食べられらからな!
さて、そろそろ続きの料理をしよう!
とりあえず、まずは先程のとれたて新鮮なお肉をカットし、唐揚げ粉をまぶして冷蔵庫へ。
そういえば山田がもしかして何かしらの肉を買ってくれているかもしれないと思い、下味つけている間に鞄の中のリストを見る。
ちなみにユーリはもう鞄の外に出てきて、あちこちにある家電を不思議そうに見ているよ。
どうやら買ってくれたものはかなりたくさんあるけど、お肉類だけを見るなら鶏もも肉、合挽き肉がめちゃめちゃ多いな。よし、ハンバーグにするか!
俺は鞄から大量の挽き肉とパン粉、卵、牛乳、フライパンを出した。
それから玉ねぎをみじん切りにしてフライパンで飴色になるまで炒めて粗熱をとっておく。
少量のパン粉を牛乳に浸しておくのも忘れてはいけない。
その間に大きなボウルに挽き肉と塩少々を入れしっかりと粒がなくなるまで練り、そこに飴色の玉ねぎと牛乳に浸しておいたパン粉、卵を入れてさらに練る。
それが完了するとあとは形を整えて焼くだけだ!
形を整えるときに中の空気を抜くのは忘れてはいけない。
フライパンに油を引いて、大量のハンバーグを焼いていく。
冷めると悪いので次々と皿に盛った分からラップをして鞄に収納しておかないと!
そういえば今回は山田と姉さんに多大なる迷惑をかけたので、2人の分……にしては多めに、焼いたハンバーグをまとめて皿に置き、ラップをかけて一旦鞄に収納。
肉汁が残っているフライパンに鞄から出したケチャップとソースを入れて弱火で加熱する。
煮詰めたら山田たちのハンバーグを取り出し、ソースをかけてラップを戻し、また鞄に収納する。
それから山田に『焼きたてのハンバーグを入れておいたから食べて良いよ。ソースがかかっているのが山田たちのね!』と連絡する。
その後に冷蔵庫に入れていた味付け肉を唐揚げにしたら、今日は終了だ!
この頃になるとちょうど日も暮れてきたので、全て綺麗に元通りにしてから解体しているスコットさん達の方に向かう。
もちろんユーリはとても良い子に、ハンバーグを焼き始めた頃からずっと俺の腹にくっついている。
時々『ジュルッ!』という音が聞こえたが、そこはご愛嬌だ。
どうやらスコットさん達の方もあらかた解体が終了したようで、4人で集まって何やら話していたようだ。
「その骨やら皮なんかはどうするんですか?」
俺は『解体後の残骸』を指さしていう。
「ああ、これは売れないから焼却処分だな。人もここらにはたくさん来るだろうし、後に残しておくわけにいかないしな。」
そうスコットさんが言っている側で、エミリーさんがそれらをまとめて焼いている。
それが全部終わるとみんなの手や顔を水で洗ってから街へ戻る。
この段階でユーリには鞄に戻ってもらった。
街へはすぐ近くなので、まだ明るいうちに門にたどり着いた。
その後、問題なく街の中に入り、宿へ向かう。
いや〜、今日は大量の唐揚げとハンバーグを作って疲れたよ!
ホントはもっといろんな料理を作る予定だったが、一品一品を大量に作ったので時間がかかってしまった。
でもこれで旅の間に何回かは作らなくてもすぐに食べられるね!




