閑話 山田の休日 3
「……じゃあ、これからどうする?しーちゃんの都合的には夜にならないとその鞄の中には入れないんでしょ?」
「そうだな、いつもだいたい話すのは夜だし。じゃあ、とりあえず紫惠琉の為に食材と調味料を買いますか!」
それから俺たちは、一緒にスーパーに買い物に行った。
どうせ紫惠琉の鞄は時間停止しているのだから何を入れても腐らないので、いろんな食材を買ってやることにした。
まずは紫惠琉との共用財布を取り出してみる。
先立つものがないと買えないからな!
財布の中身は前回見た時より2万ほど増えていた。
資金はまぁ潤沢な方なので、まんべんなくいろんな物をカートに入れた。
特にあちらでは購入できないような物を多めにする。
例えば卵や牛乳、豆腐、納豆は必須だろう。あ、海苔もいるかな?
他にもデザートの素になるものや中華系の調味料、鍋の素、醤油などの和食用調味料を一式、焼肉のたれやステーキのタレなんかの調味料も多めに買っておく。
やっぱり旅の途中で作るなら、手軽に味付けできるものもいるだろうからな!
そういえばあちらではどんな肉が手に入るんだろう?
でもまあ、ひき肉なんてものは作るの大変そうだから大量に入れておくか!
俺はすぐには返事が来ないのはわかっていたが、それでも一応メッセージを送っておいた。
とりあえず、こちらのお肉もある程度買って入れておくことにしよう。
すぐに使えるしな。
さて、レジに向かおうか!というところで紫惠琉から返信が来たようだ。
『部屋の中身はみんな鞄に入れてくれたみたいだな。無事に契約解除はできたか?あと、今は外出中だから通話はできない。肉はこっちでも手に入るが、やっぱりそっちのもある程度欲しいかな!』
そう返事が返ってきた。
なるほど、今は出かけているんだな。
友梨佳さんに紫惠琉からの返信を見せると「じゃあ夜まで一緒にいなきゃ。買い物終わったらどうする?」って聞かれた。
そうだなぁ……とりあえずどこかのカフェにでも入るか。
何か甘いものを食べたりしていれば、長いこと店にいても
「どこか美味しいデザートを出すカフェとか知ってます?」
すると少し考える素振りがあったが、すぐに笑顔で頷いた。
「じゃあ……連れていきたいところがあるわ!」
そう言うとスタスタと先を歩く友梨佳さん。
一体どこに行くんだろう?
とりあえずしばらくついていくと、カフェというより喫茶店って感じのレトロな店に着いた。
友梨佳さんは中に入るなり店員さんに声を掛ける。
「ねぇ、兄さん居る?」
えっ、お兄さんの店!?なんで!?
俺は突然の事に動揺した。
そりゃそうだろう、確かにどこかカフェに行こうとは言ったが、まさか紫惠琉の兄の店に連れてこられるとは思っていなかったのだから。
しばらくして店の奥から紫惠琉に似てはいるが、より男らしい精悍な顔をした男性が出てきた。
この人が長男なんだろう。
「兄さん、少し込み入った話があるから、店じゃなくて家の方で話せないかな?」
「ああ良いが……いったいどうした?知らない男を連れているってことは、こいつと結婚でもするのか?」
それを聞いて友梨佳さんはビックリしたようで、少し顔を赤らめつつお兄さんに言った。
「ち、違うわよっ!この人は紫惠琉の勤めていた会社の同僚なんだって!私も今日、初めて会ったの!」
「……?『勤めていた』っていうのは、一体どういうことだ?紫惠琉は今、何をしている?」
お兄さんはどうやらそこに気がついたようだ。
「だから、その事で話をしたいから家の方で……ってことなの!上がって良いかしら?」
「わかった、今ちょうど俺の妻もいるから一緒に話を聞いてもいいか?ホント、タイミングが良かったな。」
そう言いながら奥の方に歩いていくお兄さんについて行く。
すると、トイレと思わしき扉の横に『STAFF ONLY』と書かれた扉があり、そこからさらに奥へ。
そこからは渡り廊下みたいになっており、右は壁になっているが、左側には広い日本庭園みたいな庭がよく見えた。
……あれ?
もしかして、紫惠琉って良いところのお坊ちゃまだったのか?
そんな事を思いながら歩いていると、また扉が。
多分ここからが自宅なんだろう。
お兄さんはドアを開けて中に入り、すぐ左手側にある部屋へと入った。
そこからはさっき見えていた庭が見える。
たぶん応接間、ってところだろう。
「ちょっとソファーに座って待っていてくれないか?お茶とか持ってくるから。」
そう言ってお兄さんが部屋を出ていく。
お兄さんご帰って来る前に友梨佳さんに聞いてみた。
「……すごいお家ですね?」
すると友梨佳さんは肩をすくめて「古くて広いだけよ。」と言った。
「うちは昔、武士の家系だったらしいけど、今は普通にお店を経営しているの。ちなみにさっきの喫茶店は兄とお嫁さんの単なる趣味……ってところかしら?」
「……そうなんだ。でもお店からもあの庭が見えるなら、結構人気スポットなんじゃないか?」
俺はさっきの店内を思い出す。
店内は結構広かったが、ほとんどのテーブルは埋まっていた。
特に庭に面したカウンターにはお一人様とカップルで席が埋まっていた。
やっぱりこの庭は見応えあるからな。
俺はこういう店はあまり来たことないからよくわからないが、そんな俺でもやっぱり有名なんじゃないかと思うほどに店内には人が多かった。
「まぁ、料理とデザートが美味しいからね。紫惠琉もここでバイトして料理をしたりしていたのよ?」
なるほど、紫惠琉が料理できるのもバイトでしていたなら納得だ。
あいつの料理は美味いからな。
そんな話をしていると、ドアが開いてお兄さんが入ってきた。




