565、真夜中の襲撃 2
俺はそんな事を考えて顔を顰める。
そして、世界樹の記憶で得た情報を思い出した。
「そういえばリーシェさん、この国の宝物庫に『隷属の魔法』を無効化する魔道具なんて無かったですかね?」
俺がリーシェさんにそう聞くと、リーシェさんは少し考え込んでから「ちょっとロイに聞いてみないと分からないかも」と言った。
そりゃそうか、いくら国王と友人でも宝物庫の中身なんて知らないよね。
そこで俺は世界樹の記憶で見た形や色の物の特徴を伝え、それと同じ物がないかを聞いてもらうよう伝えた。
それを聞いたリーシェさんはすぐさま国王へと連絡をした。
しばらくすると国王からの返事が飛んできて、どうやら同じ特徴を持っている魔道具が存在することが確定した。
国王とは宝物庫の前で待ち合わせをすることにし、俺達もすぐに向かう。
宝物庫の前にはリーシェさんの転移魔法で向かったので、城内を迷うこともなく一瞬で到着した。
宝物庫の前で国王を待つと、案外国王のいた所から遠くなかったようで、意外とすぐにやってきた。
宝物庫の鍵は国王の魔力だったようで、彼が扉の一部に手を当てると、カチャリと開錠した音が聞こえた。
宝物庫の中を国王先導のもと、3人でその目的地の場所へと向かった。
国王が案内してくれた先には、確かに透明な虹色の魔
導具が棚にあった。
それは間違いようがないほど、世界樹の記憶で見たも
のと同じ物に見えた。
「……確かにこの品はクレイン国が建国される前からある古い魔道具で、『隷属の魔法』に対する無効化の能力があると記憶している。それを何故、君が知っているのかね?」
国王はとても不思議そうな顔で訪ねてきた。
そこで俺はとても簡潔に世界樹の記憶から得た情報を教えてやった。
「……なるほどのう。現在我が国に起きている問題に対処するには必要である。では早速これを使おうではないか。」
国王はそう言うと、すぐに使おうとしたので、俺が止めた。
「これは魔力を流すと自動で『隷属の魔法』を無効化させる魔法を発動するのですが、使う場所によって範囲が変わります。これは元々屋上の広い場所で使われていたものです。まずは屋上へ行き、正しい場所で起動しましょう。」
俺がそう言うと、リーシェさんの転移で屋上へと移動した。
そして屋上に着くと、俺はすぐに世界樹の記憶で見た場所まで持っていき、起動させた。
その魔道具は一瞬だけとても眩しい光を放ち、その光に『隷属の魔法』を無効化させる能力を乗せて一気に広がった。
すると辺りの雰囲気が一変し、とても清々しい空気に包まれた。
屋上から下を見下ろすと、それまで暴徒化しそうになっていた国民が、みな不思議そうな顔で互いを見合わせているのが見えた。
良かった、上手くいったようだね!
「……貴様、その魔道具をどこで手に入れた?」
俺が下を見下ろしていると、ふとそんな声が前方の上空から聞こえた。
俺はハッとして顔を上げると、そこには神官服を着た者が3人ほど空に浮かんでいた。
……なるほど、こいつらがこの街の『隷属の魔法』を発動させた奴らなんだな?
「これは元々この国に所蔵されていたものだ。俺のものではない。」
俺がそう答えると、その3人の内の1人が「そんな物がこの国にあったとはな……」と苦い顔をして呟いた。
「まぁ良い。丁度そこに国王がいることだし、国民を暴徒化させてクーデターを起こさずとも目的を果たせそうだ。」
そう1人が話すと、その3人は一直線に国王の下へと飛んでいった。
国王の側にはリーシェさんがいる今、安心はしてはいるが念の為、俺は遠隔で国王とリーシェさんに結界を張った。
もちろんこの結界は外からの攻撃は弾き、内側にいる者の攻撃は結界を通るように設定してある。
俺の結界が張られた瞬間、3人の神官から風の魔法や火の魔法が放たれ、国王たちを中心にファイアーストームが発生する。
「フハハハハハッ……!これで我々の仕事も片付いたな。何とも簡単な仕事であったな!」
先ほど俺に向かって話していた神官が高笑いをして国王たちのいる方を見やった。
そこはまだ土埃が舞い上がっていて辺りは視界が良くない。
俺は2人が無事なのを確信していたが、そいつらはもう既に俺を次なる標的に定めているようだ。
俺はそれを見て、戦闘態勢へと移行した。




