49、ユーリ、おかえり!
しばらくしてユーリが鞄の中からゴソゴソと出てきた。
俺を見つけると嬉しそうに飛んできて定位置の腹にくっついた。好きだねぇ、そこ。
「どうだった、山田はカレー食っていたか?」
『うん、美味しそうに食べていたよぉ!僕も1杯貰っちゃったぁ!』
そんな事を言って『テヘヘ!』と笑っているユーリは、やっぱり可愛いと思う!
「じゃあもう落ち着いただろうし、メッセージ送るかな!」
俺はさっそく山田に「これから話せるか?」と送ってみると、直ぐに返信があった。
そこで俺の方から山田に電話をかけてみる。
「……はいよ!元気か、紫惠琉?」
「ああ、山田はどうだ?」
「俺の方は新商品が出るから、今のところめちゃくちゃ仕事が忙しくてな。まぁ、それもあと数日で俺は担当から外れて、違う商品の方に行くことになるから少しは落ち着くと思うがな。」
なるほど、今ちょうど秋口だもんな
、新商品の発売時期か。
大変だろうが頑張れ、山田!俺は応援しかできないがな!
「それはそうとちょっと試したいことあるから、一旦切って良いか?」
山田がそんな事を言ってきたので、一旦切って山田からかかってくるのを待つ。
すると今度はテレビ電話の方でかかってきた。
そっか、そんな手もあったな、うっかりしてたよ!
電話に出ると、画面には久々の山田の顔が。
あんなに顔合わせていたからか、なんか懐かしく感じる。
「……なんかお前、幼くなってないか?」
電話越しの俺を見ての山田の第一声がそれだった。
そういえばそうだった、こんなに若返ったのは言ってなかった。
「そうなんだよ、こっちに来たら半分の年齢の14歳になってたんだよ。」
「マジで!?通りで幼いわけだ。……そっか、お前もそっちで苦労してるんだなぁ……。」
山田はしみじみとそんな事を言っている。
まぁ確かに苦労はしているが、それでもスノーホワイトのみんながいるから楽しいと、山田には伝えた。
「そういえばお前、すっかり忘れているようだが……お前が住んていたアパート、俺は親戚でも身元保証人でもないから契約解除できないからな?」
山田のその言葉で、すっかり忘れていた事を思い出す。
それはまずい!今ならまだ来月の家賃は支払わなくて済むが、あと2週間もしたら来月の家賃も引き落とし確定する!
俺は慌てたが、山田が「家族の誰かに連絡して解約してもらえ。」と言ったことで姉さんとも連絡をしなければならないことを思い出す。
山田と電話切ったら、今度は姉さんに電話だ!
「そういえばユーリから聞いた『伝言のメッセージ』って一体何だ?」
ああ、それもまだ書いてなかった……。
なんか俺、以前より忘れっぽくなった……?
やばいな、しっかりしなくちゃ!
「実はそっちで手に入れてもらいたい物があって、それのリストを送ろうと思ってな。」
「なるほど、食材とかか?」
「それもあるが、炊飯器やコンロ台にあるようなIHコンロが欲しいんだよねぇ。」
「……なぁ、それってお前のアパートの荷物をごっそり全部この鞄に入れたら、それだけでお前の欲しいのほとんど解決じゃね?」
……なんてことだろう、そんな金のかからない解決法があるなんて!
一石二鳥じゃないか!さすが、山田!
「そうだな、考えてみればそうだわ。アパートも引き払うのに引っ越しのお金やらもかかると思っていたけど、俺の欲しいのと引き払う荷物、ぴったりかも!人手もかからないから姉さんとお前だけでできるな!」
「……なるほど、俺はその時にお前の姉さんに初対面で、さらに問い詰められるわけだな?」
「そっ、それは申し訳ないと思ってる!だからこの後、姉さんに電話してしっかり説明しておくからっ!だから頼むっ!!」
俺が必死に頼み込むと、山田は1つため息をついて「わかったよ」と了承してくれた。ありがとう、山田!
とりあえず山田には姉さんに連絡取った時に都合を聞くから、あとで欲しいものリストと一緒に日にちも書いて送ると言っておいた。
ちなみに山田の休みは聞いてあるからバッチリだ!
山田との電話を切ると、久々に姉さんに電話をかける。
流石にテレビ電話ではない。
何言われるか分かったものではないからな。
「……はい!どうしたの、しーちゃん?珍しいね、しーちゃんから私に電話かけてくるなんて!いつも私からかけてるのに?」
「……いやぁ〜…ちょっと話があって……ね?」
俺の言いづらそうな雰囲気から何か察したのか、姉さんが息を呑んだのが電話越しにも感じられた。
「ま……まさかとは思うケド…まさかしーちゃん、とうとう彼女ができたのぉ!?それとも、突然の結婚宣言!?お、お姉ちゃん、すごいショック!!」
姉さんは泣きながら突然そんな事を叫んだ。
えっ、そっち!?そっちを想像したの!?
「いや、落ち着いてよ、姉さん!そうじゃないから!」
「……ほんと?」
「うん、ホント、ホント!安心して?」
俺がそう言うと涙か引っ込んだのか、電話越しの鼻をすする音が聞こえなくなった。立ち直り、早いな?
「じゃあ、一体何なの?」
「姉さん、気をしっかり持って聞いてほしい。……実は俺、今、異世界にいるんだ。」
「……はっ!?どういうこと!?」
「いや、あのね、俺は地球にいないっていう話なんだ。」
「……嘘なんでしょ?こうやって話してるじゃない?異世界に行ったら電話なんて使えないっていうの、常識じゃない?」
いや、姉さん、そこ常識なの?
とりあえず俺は、この世界に来た経緯や今に至るいろんな事を姉さんに話した。
その間、姉さんは黙って俺の話を聞いていたが、俺が話し終わると「嘘じゃないのね……。」とぽつり、呟いた。
「ごめん、姉さん……。で、でもほらっ、こうやって電話とかできるしっ!それと姉さんに頼みたいことがあるんだけど、お願いできるかな!?」
「……どんなこと?」
姉さんの声はかなり落ち込んでいた。ホント……ごめん。
俺は申し訳ないって気持ちでいっぱいだったが、こればかりは頼まないとどうにもならない。
「実は俺が異世界に来たことでいろいろ弊害があってね。会社の方は俺の会社の友人に頼んで辞表を代筆で提出してもらったからなんとかなったけど、さすがに俺のアパートを解約するのは家族じゃないと駄目だと思うんだ。だから姉さんには俺の代わりに俺の会社の友人と一緒にアパートに行って、俺の荷物をみんな友人の持っている鞄に詰め込んでもらいたいんだ。」
「……途中までは理解できたんだけど、最後のほうが理解不能だわ?どういう事、鞄に詰め込んでって!?普通入る訳ないわよね!?」
「普通はそうだよね?でもその鞄、神様からの贈り物だから何でも入れられるマジックバッグっていう鞄なんだよね。ほら、よく異世界物の本とかででているような鞄のことだよ!」
そう言うと姉さんは半信半疑だけど理解はしてくれたみたい。
姉さんにも休みの予定を聞くと、どうやら明日、明後日が休みでちょうど山田と休みがかぶるみたい。
なので姉さんには明日の昼までに俺のアパートに行ってもらうことにした。
姉さんとの電話を切ってから改めて山田に電話をすると、どうやら風呂にでも入っているのか電話に出ないので、メッセージを入れる。
さて、明日の昼には姉さんと山田が初対面だ。
仲良くしてくれるとありがたいんだけど、どうなるかちょっと心配だなぁ。




