46、これからの予定
俺はみんなに話があったので、一旦俺の部屋に集まってもらった。
部屋に着くといつものように皆が座る。
スコットさんはドア前が定位置らしい。
するとユーリが自分からゴソゴソと鞄から出てきた。
そして俺のお腹に抱きつく。これもまた、定位置だ。
俺はお腹にユーリをくっつけたまま、ユーリのためにさっき貰った御飯を出してカレーをかける。
それを見てユーリは目をキラキラさせて、今か今かとそわそわしていたのですぐにカレーをテーブルの上へ。
するとユーリはすぐさま食べに行った。
一口食べるとユーリもまた、みんなと同じく驚きの表情になった。
『ママ、これぇ、すっごく美味しいねぇ!!』
ユーリがそう一言、話した。
すると今度はみんなが驚いたようだ。
ただ、みんなは俺と違ってすぐに声の主はユーリだと気づいたようだけど。
「おい、いつの間にユーリは話せるようになったんだ!?」
「すっごい可愛い声なのね!って、そういえばまだ産まれたばかりだもの、当たり前よね!」
「でもまあ、これで意思疎通が楽になるな!」
みんながそんな事を言っている間、リリーさんは頬を赤く染めてカレーを食べているユーリを見ている。
……だ、大丈夫だろうか?
しばらくしてユーリがカレーを食べ終わった頃、それは起こった。
リリーさんが素早くユーリのところへ行き、抱っこをしようと手を伸ばす。
だがその手はユーリのすぐ間際で何かに弾かれたようだ。
「えっ!?何、これ!?なんか見えない壁がある……?」
そう言いながらリリーさんがユーリの周りをペタペタ触っている。
……なるほど、首輪はリリーさんを危険人物と判断したんだな。
『あのねぇ、そこのお姉さん、なんだかすごく怖いんだけどぉ……。あんまり近くに来ないでもらえないかなぁ?』
ユーリに近づけないことにショックを受けているリリーさんに、さらなるショックが。
それを聞いたみんなと俺の心は1つだったと思う。
『そりゃあ、そう言われるよねぇ』と。
透明な壁ができている時点でアウトだと思う。
でも他の3人はリリーさんが透明な壁に阻まれていることが不思議なのか、揃ってユーリに近づく。
そして代表してリッキーさんが触ろうと手を伸ばす。
するとリッキーさんは普通にユーリの頭を撫でることがてきた。
多分ユーリに危険がないからだろう。
それを見て、リリーさんはなおさらショックを受けたようだ。
そして涙目になりながら、その矛先をリッキーさんに向ける。
「なんでリッキーが触れて私はダメなのよ!ひどいわ!!」
「いや、そう言われても……。ユーリの話では、多分お前になんかされるかと怖いんだろ?」
「そんなぁ〜!?私はただ、ユーリちゃんが大好きなだけなのに!」
「……その愛情が重くて怖いんだと思う。」
リッキーさんのその一言に皆がうんうんと頷く。
それが効いたのか、リリーさんはしょんぼりとしながら大人しくソファーに戻った。
リリーさんを見ていたリッキーさんが、ずっと優しく撫でていたユーリを見ると、ユーリはリッキーさんを見ながら少し首を傾げて不思議そうな顔をしていた。
『……なるほどねぇ。』
「何が『なるほどねぇ』なんだ?」
『それはまだ言えないよぉ。でもそのうちわかるよぉ!』
ユーリはそうリッキーさんに言うとニッコリ笑った。
リッキーさんは首を傾げながらもソファーへ戻る。
他の2人も軽くユーリの頭を撫でると同じくソファーへ戻った。
俺はユーリが食べた器を片付けに行くと、ユーリは口をカレーまみれにしながら俺を見上げる。
「口にいっぱいカレーが付きまくっているぞ、ユーリ?」
俺は笑いながらユーリの口をティッシュで拭ってあげた。……よし、あとで山田に追加のティッシュも頼もう!
「そういえばユーリ、お前リリーさんの名前知らなかったんだな。もしかして皆の名前も知らないのか?」
『うん、聞いたことなかったよ?』
「なるほど、じゃあ席についたら自己紹介してもらおうな!」
『うん、わかったぁ〜。』
それからユーリは定位置となる俺のお腹にくっつき、一緒にソファーに座る。
座ったら自己紹介をすると話していたから、みんなは早速ユーリに自分のことを話し出した。
スコットさんたち3人は名前だけを教えていたけど、リリーさんはユーリへの愛も追加で話していたけど大丈夫なのかな?
さっきリッキーさんに「愛が重いんしゃないか?」って言われていたのにねぇ……。
それから、みんなが落ち着いたのを見計らって俺は言った。
「スコットさん達はこの後の予定はどう考えてますか?」
するとスコットさんは少し考えてから答えてくれた。
「とりあえずはこの前行ったゴーダの店に行ってリッキーの剣や武器調整してもらっているのを取りに行くのと、ギルドに寄ってオークの買取金を受け取るところまでは予定が決まっているな。まぁ、この2つの予定はどちらが先でも良いんだが。」
「そうだな、それ以降はまだ白紙かな?シエルはなんかしたいことあるのか?」
俺はそう聞かれて頷いた。
「とりあえず俺の方ではこの街で野菜やお肉、調味料、皿なんかの食器が買えたら、と思ってます。旅に出る前にそこら辺は揃えておかないと不便ですからね。この街での用事が済んだら、リッキーさん達の故郷に行ってみたいです。みんなの仲間になったんだから、その挨拶に行きたいんです。」
それを聞いてリッキーさんは少し悩んだみたいだ。
「……もしかしたら、良いことだけじゃないかもしれないぞ?」
「……もちろん分かってます。でも俺は、リッキーさんの両親に挨拶をしたいんです。リッキーさんが大人になるまで心身共に支えてくれたのは、ご両親なんですから。」
「……そういうことなら、俺は反対しない。」
リッキーさんの返答を聞いて、スコットさんは言う。
「じゃあこの街での全ての用事が終わったら、皆で久々に故郷に帰るか。何年ぶりだろうな……7年ぶりくらいか?」
「そうね、リッキーが18歳になった年だものね。」
「そうですね、私が18歳になるかならないかの時に3人で街を出たんですよね。あれから1度も帰ってませんし、みんな元気ですかね?」
3人は故郷にいる家族を思ってか、懐かしいものを見るような優しい目で空中を見ている。
それとは対照的にリッキーさんは目をつぶっている。
やっぱりリッキーさんには辛いよね……。
でも俺は、できればリッキーさんが街の人達に受け入れられるようになってくれれば…という願いがある。
だってそうだろう?
リッキーさんは何も悪いことをしていない。
ただ神から『心を読んだり、感情がわかる』という能力を与えられただけなのだから。
なぜ神がそんな能力を与えたのかはわからないが、リッキーさんはいつかこれが役に立つと思っている。
俺も、そうあって欲しいと心から思っているよ。




