35、なんですとぉ〜!
みんなで夕飯を食べに食堂へ降りていった。
相変わらす食堂は混んでいたが、1つだけ『予約席』と書いてあるテーブルがあった。
食堂に顔を出すと女将さんが「こっち、こっち!」と言ってその予約席まで誘導する。
「女将さん、俺達のために席を取っておいてくれたのかい?」
リッキーさんが女将さんにそう聞くと、女将さんは嬉しそうに頷いた。
「当たり前じゃないかい。無事に帰ってきてくれたのもあるが、街の脅威になるところだったオークの巣を退治してきたんだろ?ギルマスから聞いたんだよ!」
えっ、ギルマスと女将さん、そんなに仲良いの?
俺は思わずリッキーさんを見たが首を振られてしまった。
「女将さんってそんなにギルマスと仲良かったっけか?」
「仲が良いっていうか、うちの食堂の常連さんだからねぇ。うちに泊まっているあんたらがどこに行ったのか知ってそうだったからちょっと聞いてみたのさ。」
なるほどねぇ〜、常連さんかぁ!
この食堂、何を選んでも美味しいもんね!通いたくなるよ!
それから女将さんは俺たちをテーブルに案内するとメニューを置いて一旦立ち去った。
どうやらすでに街ではオーク肉が結構出回っているらしく、この食堂でも新鮮なオーク肉を使ったメニューが手頃な価格で何種類もあったので、みんなでそれぞれ違うオーク肉の料理を頼んでシェアすることになった。
運ばれてきたのは、日本では豚肉といえばでおなじみの『角煮』と『野菜炒め』、『シチュー』、『ソテー』 だ。
シチューやソテーは調味料に関してはこちらにもあるのでまだわかるが、角煮に使用する醤油ってこの世界にあるのかな?
まあ、あるからこうやってメニューに角煮があるんだし、あとでどこで入手できるか女将さんに聞いてみようかな?
そういえばこの野菜炒めやシチューに使われている野菜もよく考えてみれば日本でおなじみの野菜ばかりだ。
野菜炒めには人参に白菜、キャベツ、玉ねぎ、それに…これはチンゲン菜?いや、小松菜か?
ともかくそんな野菜が入っているし、シチューにも人参や玉ねぎ、じゃがいもが入っている。
あまりに普通にこれらの野菜が出てくるから食事の時は全く違和感を感じていなかった。
まさか醤油の存在に気付くまで違和感を感じないって、俺も疲れてんのかなぁ〜?
そんな事を俺が考えながら食べていると、ふとリッキーさんと目があった。
「シエル、明日は街に買い物に行くか?」
「えっ、良いんですか?じゃあギルドに行ったあとにでも案内頼めますか?」
「おう、任せな!」
リッキーさんはそう言ってニカッと笑う。
それを聞いてスコットさんがそういえばとみんなに話しだした。
「さっきシエルの部屋に行った時にユーリの従魔登録をしてなかったことに気づいてな。それに明日はシエルのパーティー加入の手続きもしに行こうかと思うんだが、お前たちも来るか?」
「う〜ん、私はパスかなぁ。部屋に籠もってゆっくりしていたいし。」
「私は…どうしましょう?別に用事はないんですけど…でもそうですね、宿にエミリーを1人残していくのもなんですし、私も宿に残ります。」
エミリーさんとリリーさんはそうスコットさんに返事した。
「じゃあエミリーとリリーは宿にいるとして、男3人で明日は出かけるか。あ、そうだ、出かけたついでに俺も武器屋に寄って良いか?あれだけ戦闘したんだから武器が傷んでいるとまずい。ついでにお前たちのも見てもらうと良い。」
「あ、そういえば私の武器も今回は使ったものね。持っていって一緒に見てもらっても良いかしら?日にちかかってもどうせ予備の武器もあるし。」
「分かった、一緒に持っていく。リリーのはどうする?」
「私のは多分大丈夫です。魔石にヒビは入ってないですし、周りの金属に多少傷があっても使うのに何ら問題は有りませんから。」
「じゃあエミリーのだけ持っていって見てもらうな。」
「お願いするわね。」
それから俺達は食事を終え、食堂を出る時に女将さんに礼を言って各自の部屋に戻る。
俺が部屋に入る時にリッキーさんから「明日の朝は食堂で早めに食べてからギルドに向かうから、シエルもそのつもりで早めに起きてくれな!」と声をかけられた。
俺は「わかりました!」と返事をして部屋に入る。
部屋に入るなりユーリが鞄から飛び出してきた。
「キュッキュ〜!」と鳴いて俺の胸に飛び込んで抱きついてくる。ホント、可愛いなぁ〜!
俺はユーリを抱っこしながらスマホを取り出す。
今の時間は夜の8時半……今なら山田も帰宅してゆっくりしている頃かな?
今回は思い切って俺の方から山田に電話をかけてみる。繋がるかな?
数回のコールの後、山田が電話に出た。
「シエルか?ここ何日か既読がつかずに、何の音沙汰もなかったからどうしたのかと思っていたぜ。大丈夫だったのか?」
「ああ、怪我とかは全くしていないし元気ではあるな。ちょっといろいろあったけどね。」
「何だ、いろいろって?」
「いやな、実はこの2日ほどオークの巣を探し出して潰すのに出かけていてな。流石に一緒に行動している人の前ではなかなかスマホを取り出せなかったんだよ。」
そう俺が言うとしばらく山田から返答がなかった。
「お〜い?どうした?」
「……そうだよな、お前、異世界にいるんだもんなぁ。なんかこうやって普通にスマホで会話していると同じ世界にいる気がしてしまうよ。それにしてもオークねぇ〜…二足歩行の豚?という感じで、やっぱ違和感すごいんじゃないか?」
「そうだな、初めて見た時はなかなか戦うにしても人に対して武器を向けているみたいで怖かったなぁ。」
「やっぱそうなんだ。そればっかりは頑張れとしか言ってやれないなぁ。」
そんな話をしていたんだが、山田が思い出したかのように言ってきた。
「そういえばお前、鞄の中身は確認したか?」
ん?どういう事???
「実はこの何日かで俺の方もいろいろあってな。多分お前の言っていた『怪しいお店の婆さん』っていうの、俺も会ったわ。」
な、なんですとぉ〜!!!




