34、リッキーさんの事とみんなの事
今日の回はリッキーさんの過去が書かれているので少し重めな内容です。
苦手な方は飛ばしてください。
俺は思い切ってリッキーさんに聞くことにした。
「リッキーさん、ちょっと聞いても良いですか?」
「ん?なんだ、急に?」
「実は俺、前から思っていたんですが……リッキーさんって相手の心が読めたりします?」
「あ〜…やっぱり気づいたか?これは仲間内しか知らないことなんだが、俺、物心ついた時にはこの『人の心が読めたり、感情が流れてくる』っていう能力があったんだ。」
「やっぱり心が読める能力を持っていたんですね!?」
「ああ、今教えた内容はスノーホワイト以外の奴には内緒な?」
「はい、もちろんです!誰にも言いません!」
やっぱりそんな能力があったんだぁ〜!
もし俺がそんな能力持っていたら犯罪者相手に「お前がやったんだろ?分かっているんだ、素直に吐いちまえよ?」な〜んて名刑事みたいな事ができ…る……ん?まてよ?
人の心が読めて勝手に感情が流れてくるってことは、知りたくなくても勝手にどんな感情も流れ込んでくるってことだよな?
もしリッキーさんに対して悪感情だった場合、それもそのまま言葉に出さなくてもリッキーさんに伝わってしまうっていうことでは?
もちろんその逆もあるだろうけど、それって相当精神的にきついんじゃ?
「リッキーさん、その能力って自分で切っておくことはできるんですか?」
「ん?ああ、心を読む能力の方は切ることはできるが、感情の方はどうにもならないな。」
リッキーさんは苦笑いしながらそう答えた。
どうやら俺が言いたいことが分かったらしい。
そっかぁ…感情の方はどうしようもないのかぁ。
それは、子供の頃は大変だっただろうなぁ……。
俺がすっかりしょんぼりしてしまったのでリッキーさんが顔を覗いてきた。
「シエルがそこまで気にすることないぞ?これは神から与えられた能力なんだから、いつかこの能力が必要になる時が来るはずだ。俺はそう思って今までも、これからも生きていくつもりだよ。」
そう穏やかな顔で俺を見つめるリッキーさん。
そんな俺たちを見ていたスコットさんが話しかけてきた。
「シエルは、俺とエミリー、リリーの3人はリッキーの幼馴染だって聞いただろう?」
「はい、街に出かけた時に聞きました。」
俺の答えを聞いてからスコットさんはリッキーさんを見て、彼が頷いたのを確認してから話しだした。
「リッキーは幼い頃からその能力があってな、周りからは距離を置かれて育ったんだ。それはリッキーの親戚も含めてのことだ。両親だけはリッキーのことを大切に愛情を持って育ててきたんだが、周りの他の大人はリッキーのその能力を怖がってな。子供は大人たちの対応を見て真似をしたのか、あまりそばには寄り付かなかったんだ。」
スコットさんから語られたのはリッキーさんの辛い過去の話だった。
だが当のリッキーさんは顔に「しょうがない事だったんだ」という感情を滲ませているだけだった。
「俺たちは最初、そんなリッキーを見て可哀想だと思い、年も近いから一緒に遊んでいたんだ。だがそのうちリッキーの事が分かってくると、心が読めるなんてことは忘れて仲良くなっていってな。大きくなっていくにつれて俺たちは互いにかけがえのない友人になっていったんだよ。」
それを聞いて、リッキーさんは苦笑いをする。
「そうだな……あの当時、俺は表面的には笑ってはいたが心の中では孤独だったんだ。だから両親からの愛情がなかったら、多分とっくの昔にこの世にはいなかったかもしれない。でもな、そんな時にスコットやエミリー、リリーと出会い、一緒に過ごすうちにかけがえのない仲間になったんだ。」
2人は当時のことを思い出したのか、目を合わせて苦いようなそれでいて懐かしい……そんな複雑な雰囲気を出していた。
俺は何もいえず、2人の昔話を聞いていた。
「それからしばらくしてリッキーが成人した年、リッキーが故郷の街を出て冒険者になるって両親に言っているのを偶々俺が聞いたんだ。だからそれを2人にも伝えた。だがそれからしばらく経ってもリッキーからは『一緒に街を出て冒険者にならないか?』っていう誘いが俺たちになかったんだ。皆でヤキモキしていたところ、急にこいつが街から姿を消したんだ。俺たちには声もかけず、たった1人で街を出て冒険者になろうとしたんだよ。」
スコットさんは軽くリッキーさんを睨みながら言う。
リッキーさんは申し訳無さそうな顔で「すまなかった」と謝った。
「だから俺たちはリッキーの両親に行き先を聞き、3人で追いかけたんだよ。追いかけた先でリッキーはもう冒険者になっていたが、俺たちもすぐに冒険者になり、そして4人でパーティーを組んだんだ。それからはずっと4人で行動を共にしているんだよ。」
なるほど、皆にはそんな過去があったんだね。
でも、それだけ4人の絆は深いんだろうと思う。
友情…かぁ……。また山田や姉さんに会いたいなぁ〜……。
俺が寂しそうな顔をしていたのか、2人は俺の頭を撫でてきたり、背中を軽く叩いてきたりして励まそうとしてくれた。
「……ありがとうございます。これからも、俺と仲良くしてください!」
「「ああ、よろしくな!」」
それからしばらく俺たちが部屋でユーリと遊んでいたら、またドアの外から声がかけられた。
今度は夕飯に行こうとエミリーさんたちが声をかけてきたようだ。
俺たち3人は2人に向かって「今、行く!」と声をかけ、ユーリにはまた肩掛け鞄の中に入ってもらい、一緒に食堂に向かった。




