28、街へ戻ろう!
とりあえず俺はさっき確信したことは胸に押し込めて、今まで通りリッキーさんと接しようと心に決めた。
だって心が読まれていようが、俺はリッキーさんに嫌な気持ちは感じなかったからだ。
リッキーさんは常に俺のことを気にかけてくれていて、まるで本当の兄みたいだと思っていたのもある。
それにいつかは話してくれると思っているしね。
だから俺は、これはこれで気づかなかったことにした。
それから俺達はここを出発するために準備を始める。
「なぁシエル、この子竜…ユーリだったか?このままじゃ街へは戻れないが、どうするつもりだ?」
そうスコットさんが聞いてきた。
「えっとですね、実は大きさを変えられるようなんです。だからそれで街には入れるんじゃないかな?と。ただ、街に着いたその足でギルドへ向かわないとだめかもしれません。すぐに従魔登録をしないと、何かあってからでは遅いですからね。」
「確かにな!それにこの指名依頼の達成も伝えなきゃならないから丁度良いな。じゃあ街についたらギルドへ行こう。」
俺とスコットさんがそう話していたのを、リリーさんが今度は聞いていたようで。
「えっ!?ユーリちゃん、小さくなれるの!?見たい、触りたい、抱っこしたい!!!」
と言い出した。
するとリリーさん以外の全員が「やっぱりか!」という気持ちになったようで、代表してリッキーさんが言う。
「リリー、あまりユーリに接触しないようにしろよ?まだ契約したばかりで周りを警戒しているのもあるが、普通契約した従魔は主人以外に触られるのを極端に嫌う傾向がある。それはお前も分かっているだろう?だけどそれ以上にお前、ユーリに信用されてないじゃないか。いつ自分がシエルから離されるかわからないって顔でお前を見てるぞ、ユーリは。」
それを聞いて再びショックを受けるリリーさん。
確かにあそこまでグイグイ来られると俺もつい不安になってしまうしな。
でもまぁ、ユーリには一応どこまで小さくなれるのかやってもらわないと、これからどうするのかが決まらない。
「ユーリ、とりあえずお前が一番小さくなれる大きさになってみてもらえるか?」
するとユーリは一声「キュ〜!」と鳴くとみるみる小さくなっていった。
そして最終的に頭から尻尾の先までの長さが50cm程度まで小さくなった。
そして浮上し、俺の目の前まで飛んでくる。
「キュ〜?」
「あぁ、ありがとう。これで街中まで連れていけそうだ。」
「キュッキュ〜!」
それを聞いてユーリは嬉しそうに鳴くと俺の胸にしがみついた。
するとその光景を見ていたリリーさんが悔しそうに唇を噛んで唸っている。
「羨ましい〜!私もあんなに懐かれたい!…っていうか、私がシエルくんに代わって主人になりたいっ!」
「いや無理だろ。お前は鼻息荒く近寄っていくから、怖がられるんだぞ。それに、この子竜はシエルを親だと思っている。お前はそんな2人を引き離したいのか?」
そうリッキーさんに突っ込まれるリリーさん。
スコットさんもエミリーさんも呆れた顔をして2人を…っていうかリリーさんを見ている。
「いつまでもここにいてもしょうがないから帰るぞ、リリー。シエル、この壁を撤去してくれるか?」
「はい、わかりました!」
俺はスコットさんにそう答えて壁に手をつき、壁に使われた土をバラバラにする。
綺麗にその場を元通りにすると、俺達は入口に向かって移動を始める。
オークの残党がまたこの巣に帰ってきている可能性もあるので、一応確認しながら歩く。
歩きながらふと、気になったことがあったのでスコットさんに聞いてみた。
「スコットさん、そういえばこの洞窟ってこのままにしておくんですか?」
「う〜ん、ホントは壊して帰るのがセオリーなんだが、ちょっと規模がでかいから無理だよな…」
するとそれを聞いていたリッキーさんがスコットさんに提案する。
「じゃあさぁ、入口をシエルに塞いでもらうとか?昨日の夜は寝ても壁は崩れなかっただろ?ってことは作って放置しても壁は崩れないってことだ。」
「…なるほど。確かにその案は良いな。シエル、お願いできるか?」
「はい、わかりました!」
そうして歩いて入口付近まで来た時に、ここまで来る゙間中、隣を歩くリリーさんのユーリを見るうっとりとした目を見て俺はふと思い出した。
そう、あの婆さんから貰った首輪を。
確かあれはユーリを誰にも奪われないように守ってくれる性能だったはずだ!
早速俺は首輪を取り出し、俺の胸にしがみついているユーリの首に着けてあげた。
するとユーリの体が薄っすら光り、その光が首輪の宝石?に吸い込まれていく。
その光が収まるとまるで何もなかったかのように元に戻った。
「シエルくん、それって何なの?」
隣にいるリリーさんが聞いてくる。
「これは例の婆さんからもらった首輪で、ユーリを守ってくれるそうですよ。ついでに従魔ですっていうアピールも兼ねてます。」
「ふ〜ん、そうなんだぁ。こうやって小さいと、誰でも奪えると思っちゃうからそういうのって必要よね〜。」
リリーさんはそう言いながらうんうんと頷く。
…いや、一番危ないと思っているのはあなたなんですけど。
俺はそう思ってはいても口には出さない、大人だからな!
ともかく、これで多分リリーさんのような人からユーリを守れるだろう。
俺はホッとすると、前を向く。
前を歩くのはスコットさん達の3人だ。
特にリッキーさんは常に探査魔法で周りを警戒してくれている。
今のところ何の反応もしてないってことは、このあたり周辺には魔物も人もいないということだろう。
それから俺達は洞窟の入口を出る。
外にみんなが出た後、俺は約束通り入口を土魔法で隙間なくぴっちりと閉じた。
これで入り込める隙間はない。
しかも崖と同じ感じにしたから穴があったとは分からない仕様だ。
「これでいいですか?」
「ああ、ありがとう。それにしてもシエルの魔法はすごいな!崖と一体化しているから、そこに洞窟の穴があったなんてまるでわからない。」
「そうね、見つけた私たちですら、もうわからないものね。」
スコットさんとエミリーさんの2人は崖を見て感心している。
「じゃあ穴も隠したし、街に戻るか。」
スコットさんがそう言い、街に向けて歩き出した。




