317、そうだ、ダンジョンへ行こう!
翌朝、俺は朝食を食べた後に部屋に戻り、この後の予定を考える。
スコットさんとリッキーは朝食後に学校へ向かい、残った2人も部屋でまったりと過ごすと言っていた。
部屋に戻ってきてユーリに「今日はどうする?」って聞いたところ、「僕たち3人だけでロックさんのところは行かない?」と言われた。なるほど、現状確認かな?
俺達はとりあえずエミリーさん達に声をかけて、ちょっとダンジョンのロックさんに会いに行ってくると告げた。
2人とも「それならついていく!」と言ったのだが、皆いなくなってしまうと帰ってきたスコットさん達が心配するので残ってもらった。
俺たちは自分の部屋に戻ってくると、早速ダンジョンの前まで転移する。
ちょうどダンジョン前の小屋には誰もいなかったので、すぐに冊子とノートに記入をしてギルドカードを渡すと、受付の人に「大人は1人だけですか?」と聞かれたが「はい、大丈夫ですよ。あまり深くは行かないので」と答えておく。……本当は最上階に行くけど、戦いはしないから良いよね!
それから俺達は1階の転移陣から30階層へと転移する。
「おや、しばらくぶりだね?元気していたかい?それと……他のメンバーは今日はいないんだね?」
30階層に転移すると、砂浜でテーブルセットを出してティータイムを楽しんているロックさんがいた。
……あれ?
誰もこないからっていつもはそんな感じなの?
「はい、スコットさんとリッキーはちょっと用事で学校へ行き、エミリーさんとリリーさんはついてきたがったんですけど2人が帰ってきた時に皆いなくなっていたら不安がると思って置いてきました。」
「……学校?」
「あ〜……実は俺、今度国立学校へ短期間だけ通うことになっているんです。それを心配して4人は母校であるその学校の臨時講師になることになり、その講義内容を相談しに行ったんですよ。」
「なるほど……?」
俺の説明に対し、よく分かってなさそうな反応をしたロックさん。
……そっか、もしかすると『学校』自体が何なのか分かってないのかもしれないね?
「学校っていうのはいろんな事をその道に精通している人から学べるところなんですよ。」
俺が改めてそう説明すると今度は理解できたらしく、ロックさんは「学校っていうのはそんな所なんだね」と言って頷いた。
「それならば彼らは最適じゃないか。彼らはここにやってくることができるほどの腕の持ち主なんだしね。君以外の子は実戦を相当学べるんじゃないかな?」
ロックさんはニコニコしながらそんな事を言う。
……やっぱり他の人から見ても「俺以外」なんだね。
「まぁ立ち話もなんだから椅子に座りなよ!」
ロックさんはそう言ってテーブルに促してきた。
席に座るとロックさん自ら紅茶を入れてくれた。
「……ところで君は見たところ、まだ勇者になってないようだけど、何故なんだい?」
俺をじっと見ていたロックさんが急にそんな事を言い出した。……「まだ」なんだね?
俺は勇者にならない経緯なんかを話して聞かせる。
「なるほど……それじゃあ『勇者』にはなりたがらないよね。何で国に縛り付けるんだろうね?以前来た時はそんな事なかったようなのに。」
ロックさんはそう言って首を傾げる。
……『以前来た』なんだね?
俺はそれを聞いて、この前ここに来た時に帰り際呟くように「前世」がどうとかと彼が言っていたことを思い出した。
「そういえば前回ここに来た時に『前世の君たち』って呟きませんでした?」
俺がそう聞くと、ロックさんはしれっとした態度で「そんな事言ったかな?」なんて言った。……言ったよ、確か!
「まぁ……そんなことはいいから、結局聖剣はどうなったのか教えてくれない?精霊はそのまま封じ込められているの?」
ロックさんは誤魔化すようにそう言った。
……しかたない、誤魔化されてやるか。
「俺も詳しくは知らないんですけど、聖剣から精霊は出てきてないようです。完全に分離するにはユーリの力が必要だと言っていたので、まだ頼まれていないということはそのままなんだと思います。」
「なるほど……もしだったら聖剣から分離して、その鞄にでも入れておけば?何かあった時に役立つかもよ?」
ロックさんはそう言ったが……『あれ』のどこに役に立つ要素があるのだろうか……?
俺は内心首を傾げながらも「そうですね」と当たり障りのない返事をしておく。
するとロックさんは苦笑いをして「無理に同意しなくても良いんだよ?」と言った。……バレてたね?
「ところでここにはそんな事を言いに来たわけじゃないんでしょ?何があったの?」
俺はロックさんにそう切り出されて、ようやくここに来た理由を思い出した。……そっか、そうだよね、うっかりしてたよ!
「実はロックさんに今のこのダンジョンの現状を聞きに来たんです。以前と比べてやっぱり難易度は上がりました?」
俺からの質問に、ロックさんは少し考えてから「いや、そこまで上がらなかったようだよ?」と答えた。
「難易度的にはそこまで変化はなかったけど、多少出現する魔物が変わったかな?」
「えっ、それはこの前出ていた魔物とは違う、ってことですか?」
「あ〜……いや、『この前出た魔物に変わった』が正しいかな?そっか、君はこの世界に来たばかりだったね。もしかして初めてのダンジョンだった?」
「あぁ、はい。このダンジョンが初めてです。」
「そっかぁ、それはついてない……いや、この場合はついているのかな?いっぱいドロップ品を拾えたでしょ?ここまで来るのに倒したフロアボスもなかなかのドロップ品だったはずだしね。」
ロックさんはそう言って、ニコニコしながら頷いている。
……いや、確かにいっぱい倒して、いっぱいドロップ品を拾ったよ?
でもさ、その分、軍人さんや冒険者で死にかけた人もいたわけじゃない?
うちの仲間にも、俺があげたアクセサリーがなければヤバかったっていう状況の人もいたわけだし。
さすがにホクホクした顔にはなれないかなぁ……。
そんな俺の内心には気づかないのか、ロックさんはさらに爆弾発言をする。
「それに、あの魔法を使わない軍人さん?その中で一番強い人がいたよね。彼、かなりのドロップ品を拾っていたけど、ちゃんと皆で分けたのかな?周りが頑張って戦っていたのに、彼だけはホクホク顔でドロップ品拾っていたからねぇ。しかも2つの袋に入れていたみたいだよ?1つには大したことのないものを、もう1つには高く売れそうなものを入れているのが見えたからね。」
……え?
ロックさんがダンジョンコア本体で、このダンジョン内の出来事は全て把握しているのは知っていたけど、そんな細かいところまで分かるものなの!?
そしてミラーさん、何で2つに分けて回収してるの……?
……ねぇ、まさか自分の懐にもこっそり入れてないよね!?




