314、解決方法?
「解決するにしたって、どうすればいいんだよ……。」
リッキーがため息をついてそう言う。
そうだよね、この話って国王に今の段階で話してはダメな案件なの?
国王に話して『次の王』を指名してしまうっていう手もあると思うんだけど?
その事をリーシェさんに伝えると、「今の段階でそれをするとクロード様の命が狙われる」と言われた。
「これは国王と私、宰相しか知らないんだけど……実はしばらく前から国王の命を狙って毒を仕込まれたり、道具に細工をして事故死に見えるような工作をされているんだ。これはまだ誰が犯人なのかは分かっていない。それをした犯人すら見つからないのだから、大元の犯人も見つからないんだ。」
リーシェさんはその場にいる人にしか聞こえないような小声で話をする。
そっか、国王は命を狙われていたんだ……。
だからパーティーでリーシェさんにわざわざ『毒の判定』をお願いに来たんだね。
よく小説では見かける話だけど、そんな事を実際にされてるとは思わなかったよ。
リーシェさんの話だと、今の所は何とか未然に防がれているんだけど、自分がまた学校に戻るとなかなかそれも難しくなるかもしれないとの事だ。
……ん?
毒や怪我を治す、もしくは未然に防ぐ魔導具って……俺、作れるじゃん!
俺はまだまだある『例の石』を一握り取り出す。
「……ん?それは何だい?」
リーシェさんは俺の取り出した石を見て不思議そうな顔をする。
「これはスコットさん達の婚約の時に4属性竜の長達が『祝福』してくれた時に空から降ってきた物なんですよ。ルーシェさんに言わせると『魔石と同じで魔導具に加工できる』との事で……実は親しい人達にこんな物を作ったんです。」
俺はそう言って、胸元からネックレスを取り出す。
リーシェさんはそれを暫くじっと見る。
その顔は徐々に驚きの表情へと変わった。
「シエルくん!それって……!」
「ええ、これなら毒にも対応できるし、例え身体の何処かを損傷したとしても即死でない限りは即座に回復します。さらには皆の話だと健康的な身体にもなるようですよ?」
リーシェさんの驚きの声に、俺はしっかりと答えた。
「それは凄いね!それに……その材料を取り出したってことは、もしかしてこれから作ってくれるってことなのかい?」
リーシェさんは期待のこもった目で俺に聞いてくる。
もちろん俺は頷いた。
……あ、もう一握り石を出すか。
石を追加で取り出した俺は、皆が見ている目の前で手慣れた調子で、手早く下処理をしていく。
リーシェさん一家だけではなく、スコットさん達も作るところは初めて見るので、とても興味津々のようだ。
「……そうやって作っていたのね。あんな硬い石がそんな水飴みたいに軟らかくなるなんて……信じられないわ。ねぇ……少し触っても良い?」
とても不思議そうな顔のリリーさんがそんな事を言ったが、さすがに国王にあげる品だからそれは遠慮してもらった。他の品を作った時に触らせてあげるね!
下処理が終わり、形を整える段階でリーシェさんに一応、形の希望を聞いてみた。
リーシェさんの話では、可能なら周りから身につけていることが分からない、もしくはつけていても違和感のない物が良いとの事だった。
急に魔導具を身に着けだすと、敵から警戒されて相手の尻尾を掴めなくなるらしい。
う〜ん……ブレスレットの方が服に隠れて見えなくなるかな?
さすがにネックレスは、この前の国王は身につけてなかったし。
かといって指輪だと仄かに光る指輪って結構目立つよね?
と、いうわけで、この石はブレスレットにすることになった。
俺はネシアの友人たちに贈ったブレスレットを思い出し、サイズ調整機能も入れることにした。
とりあえず下処理をした石を2つに分け、それぞれブレスレットの形に整える。
この段階で伸び縮みするようにイメージして、もう一度捏ねておくのを忘れてはいけない。
そして形を整えたブレスレットの内側に英語で「This person is the king」と記入してみた。
それを見た4人は吹き出し、爆笑する。
……わかりやすくていいじゃないのさ。こっちの人、わからないし。
そしてもう一つには「This person is the next king」と記入する。
すると4人はハッとした顔で俺を見た。
そう、このもう一つのブレスレットは次期国王と決めた者に渡すものだ。
現在の国王が命を狙われるのならば、『次代の国王』と決められた者も狙われる。それを前提にして作ってみたのだ。
それに、これを渡した時点でもう世継ぎは決まるのだから別に宣言を改めてわざわざしなくても良いので、渡された人はそのことが周りにバレるまでは普通に安全だ。
とりあえず形を整えたので、最後に魔法を注入する。
やはり入れる魔法はみんなのと同じに「瀕死でも即時に回復できるような魔法」を自動で発動するものにした。
同じ様に今まで作ったものに関しては病気なんかも治してくれることは分かってはいたが、一応「病気や体調不良にも効く様に」というイメージも一緒に付与しておく。
そして追加で「勝手に結界で防御してくれる」というイメージも付与した。……盛り盛りになったね?
それら全てをイメージして魔力を込めたこの2つの品は、アクセサリー作りでは今までにないほどの魔力消費を伴ったが、それだけ能力の高い品が出来上がったのだろう。
後で知ったことだが、俺が真剣に作業をしているのを見ていたリーシェさんは、目を見開いたまま一挙手一投足、僅かでも見逃さないよう注視していたんだそうだ。
そして完成した品をリーシェさんに手渡す。
リーシェさんの手は少し震えていた。……どうして?
「……シエルくん、本当にこれを国王に差し出すのかい?」
リーシェさんは真剣な顔でブレスレットを見つめながらそう聞いてきた。
「ええ、渡してください。ただし、誰から受け取ったのかは内緒ですからね?」
「ああ、それはもちろん秘密にする予定だ。これは絶対に秘密にしなければならない。君たちも、お前達も、この場にいる皆はこの事を他の誰にも話してはいけないよ?良いね?」
リーシェさんは真剣な表情で皆を見渡し、そう言った。
みんなもリーシェさんのただならぬ雰囲気を感じ取って、真剣な表情で頷く。
……え?
一体、何があってリーシェさんはそんな事を言っているんだろう?




