308、学校に到着!
リッキーの家から学校までは早歩きの徒歩で10分くらいの場所なので、あっという間に学校に着いた。
……着いたのだが……そこから玄関までの時間が長かった。
なにせほとんどの学生が馬車通学なので、降車の為の渋滞が出来ているのだ。
ようやく俺たちの降りる番になったのだが……ここまでにかかった時間、体感で30分ほどだろうか?
……よし、明日からはもう少し早く家を出ようかな。
玄関で馬車からみんな降りると、馬車は学校の出口へと走っていく。
また帰りには迎えに来るとのことだ。
スコットさんに言わせると、学校初日の今日の予定は入学式だけになるそうで、全校生徒は体育館のようなとても広い場所へと案内されることになっているらしい。
案内標識に従って進んていくと、なるほど確かにかなり広いホールへと着いた。
そこには生徒らしき制服を着た子と一緒に、着飾った親御さんも立っている。
日本の入学式っていうと着席しているイメージがあったから、なんかちょっと不思議な感じだ。まるでパーティーみたい?
会場に着くと入り口で警備をしている騎士さんに「スノーホワイトの方ですか?」と聞かれ、「そうだ」と答えると「会場に入ったら先生のいる場所で待機していてください。」と言われた。
とりあえず中に入ったらスコットさん達は一旦先生のいる場所へと向かうことになり、俺達は3人だけで新入生の場所で待つことになる。……ちょっと不安だなぁ。
「いいか、後で俺達は合流するが、それまでの間に話しかけられても知らない奴にひょいひょいついていくなよ?」
リッキーがニヤつきながら俺の頭を撫でていく。
……俺、そんな子供じゃないし、大丈夫だよ!
「とりあえず俺たちは今日、みんなの前で臨時講師だって紹介されるから、それが終わるまではミスト達といろよ?……ミスト達も、この前会った奴らには気をつけろよ?いいな?」
「ああ、分かっている。こいつの事は任せろ。どこか行くにしろ、俺達がついていくからな。」
「ああ、よろしく頼む。」
リッキーはそう言うと、スコットさん達と一緒に先生のいる場所へと歩いて行った。
俺達も入り口で立ったままでいる訳にもいかず、3人で中へと入る。
すると会場にいた人達がチラッとこちらを見た後、それまでのガヤガヤとしていた会場が静まり返った。
そして俺たちを見てヒソヒソと話す人達やボーッと見ている人達、すぐに興味を無くしたような人達に分かれる。
「……お前、やはり相当目立つんだな。リッキーにはああ言ったが……ちょっと離れていても良いか?」
ミストさんが顔を引き攣らせながらそんな事を言う。
俺はリッキー達のほうを見ると、4人とも苦笑いをして……いや、リリーさんだけは胸を張ってドヤ顔をしていた。……何故に?
そしてその時に気づいたが、スコットさんたちから少し離れた所にリーシェさんがいた。
リーシェさんも俺が見ているのに気づくと、笑顔で軽く手を振ってくれた。もちろん俺も振り返す。
「お前、先生の中にも知り合いがいるのか?」
「うん、あの人はこの王都の近くにあるダンジョンで知り合ったこの国の魔法師団長さんだよ。」
俺に聞いてきたミストさんにそう返答するとかなり驚かれた。
「そういう話を聞くと、俺より年下なのにいろいろ人生経験豊富なんだなって気付かされるよ。」
「……。」
……俺、間違いなくミストさんより年上なんだけどなぁ。
この見た目だから年齢誤魔化しているけど。
実際こっちの世界の人間はみんな体格が良いから、現在同い年といわれている14歳のフォグさんより俺の方が身長が低い。少なくても172cmはあるんだけどなぁ……。
「……そこの君。名前は何ていうのかね?」
俺が現実を突きつけられて軽くショックを受けている間に、いつの間にか直ぐ側に服装が豪華な紳士とその子供らしい制服を着た女の子が立っていた。
その子は俺を見ながらニコニコと微笑んでいる。
そして、どうやら俺はその紳士から声をかけられたらしい。
「……俺ですか?」
「ああ、君だ。名前は何ていうのかね?」
俺が自分を指差しながらそう聞き返すと、その紳士は改めて聞いてきた。
名前ねぇ……本名を言うわけにいかないだろうし……そのまま『シエル』で良いかな?
「シエルといいます。」
「上の名前は?」
その紳士は俺が下の名前しか言わなかったので、再度改めて聞いてくる。どうやら俺を貴族だと思ったらしい。
するとミストさんが困惑している俺に代わってその紳士に声をかける。
「この子はスノービーク辺境伯の第一子、リッキーの友人です。あ、自己紹介が遅れましたが、私達2人はスノービーク辺境伯の甥に当たる、ミストとフォグと言います。」
ミストさんの説明を受けて、その紳士は少しがっかりしたような顔をした。……何故に?
「そうだったのか。どうもありがとう。……ほら、行くぞ。」
その紳士はにこやかにそう言うと、娘を連れてその場を去っていく。……何だったんだ?
その紳士が立ち去ってから暫くしてミストさんが俺に話しかけてきた。
彼によると「もしかすると娘の嫁ぎ先候補にとでも思ったのではないか」だそうな。
……え、あの子もまだ俺と同じ年くらいじゃないか?
嫁ぎ先って……かなり決めるの早くない?
この世界ってそんな早くから決めるの?
しかも親が子供の結婚相手を決めるの?
子供が自分で好きな相手を選ぶことは出来ない世界なのか?
考えてみればリッキーとリリーさんも小さい頃から『婚約者』だったとの事だ。
……まぁ、あそこは幼馴染たから例外とも言えるか?
でもこんなに早く決めるものなのか……?
俺がかなりショックを受けた顔をしていると、ミストさんが何を勘違いしたのか「別に平民なんだから、貴族と結婚することなんて気にすること無いだろ?」と言ってきた。いや、そこじゃないよ、ショック受けたのは。
「それにほら、俺がさっき少し大きめの声で言ったから、周りに来ていた貴族連中が離れていって都合が良いじゃないか。」
ミストさんの言葉に周りを見ると、確かに俺たちと周りの人達の間には少しだけ空間があった。
それ以降は話しかけられることもなく、時間が過ぎていく。
だんどんこの部屋が埋まっていくにつれ、部屋の中は色々な香水の匂いが混ざって具合が悪くなりそうだ。
……俺、苦手なんだよね、こういう匂い。
俺が少し気分が悪くなってきた頃、急に入り口付近で歓声が上がった。……なんだ?
俺がそちらの方を見ると、どうやら王族3人組が到着したようだ。
3人組は歩きながら周りの人達に挨拶をしている。
そして3人組が歩く先はまるで海が割れるように道が出来ていく。
彼らは徐々にこちらへとやってきているようだった。
……え?
何で俺たちの方に歩いてきてるの?
……これ、逃げてもいいかな?




