230、しっかり今夜は疲れを取ろうね!
お風呂が出来上がったので、その延長として少し地面より高い身体の洗い場も作り、更にテントを張って周りから見えないようにする。もちろん、シャンプー&ボディソープは完備だよ!
「さあ、これであとはお湯をいれるだけだね!皆〜、夕飯の前にお風呂入る?」
俺は振り返って皆に聞く。
『スノーホワイト』のメンバーはもう慣れてしまっているから驚かないけど、『大樹の木漏れ日』の方はいまだにまだ信じられないという目で見てきた。
「……お前、めっちゃ目立つんだけど?まぁ……今は他に誰もいないのと、周りをテントで囲ってあることで他からはわからなくなっているがな。」
リッキーが呆れた顔でそう言った。
……そんなこと知ってる!だからテント張ったんだよ!
俺はぷりぷりと怒りながらつい拗ねてしまった。
するとリッキーが苦笑いをしながら頭を撫でてくる。
「まぁお前がみんなを労りたい気持ちはよく分かったよ。ありがとうな。」
「そうよ、こんな所でお風呂に入れるなんて幸せだわぁ〜。」
リッキーだけではなくリリーさんもそう言って喜んでいる。
もちろん他のメンバーも嬉しそうだ。
結局お風呂はご飯前に入ることになり、先に女性陣に入ってもらう。
男性の入った後のお湯はなんか嫌なんだってさ……。
まぁ男性の比率が多いのもあるからしょうがないけど、軽くショックを受けちゃった。しょぼん……。
俺は皆のために適温のお湯を張り、ふと「源泉かけ流し」みたいにお湯を溢れさせるのはどうか?と思いつく。
そして手持ちの魔石に『お湯を出す魔法』を手早く付与し、お湯の底に入れてから魔法を起動した。
すると、次第にお湯がせり上がり、湯船の縁からお湯が流れ出す。よし、これなら皆綺麗なお湯に入れるね!
俺はホクホク顔でお風呂のテントから出ると女性陣に声をかけた。
「お風呂良いですよ〜。俺はこれから夕飯の準備をしますので、ゆっくり入っていても大丈夫ですよ。」
「あら、良いの?悪いわねぇ。じゃあ先にお風呂に入らせてもらうわね、しーちゃん。」
リリーさんは全く悪いと思っていない顔で嬉しそうにお風呂へと向かった。……姉さんは相変わらずだなぁ。
他の2人も苦笑いしながら姉さんを見送っていたが、俺にありがとうと言ってテントの中へと入った。
その瞬間、歓声が上がる。
……良かった、気に入ってもらえたのかな?
俺はその声を聞きながら、作り置きのビーフシチューを何で食べるか考える。やっぱりパンかな?
「ねぇリッキー、今夜はビーフシチューにしようと思うんだけど、主食は何にする?」
すると焚き火を起こしているリッキーから「俺はおにぎり〜。」と返答があった。……いや、そうじゃないよ。
俺はそれを聞いて1つため息を着くと、男性陣の他のメンバーにも声をかける。
スコットさんはご飯にかけて食べるそうで、その他はみんなパンにするそうだ。
俺の鞄の中だと時間停止するからパンもご飯も出来立てホヤホヤの状態で出せるので、直前まで入れておくことにする。
なのでリッキーが火起こしした焚き火ではスープを作ることにする。
何にしようかなぁ……と考えていたが、メインをビーフシチューにするからあっさりした野菜たっぷり具沢山スープにすることにした。
使用する具材は日本産の人参、キャベツ、もやし、鶏肉だ。
味は日本で俺がよく使っていた「鶏塩鍋つゆ」のキューブにする。俺、これ好きなんだよね!
テーブルとまな板、包丁、大鍋を取り出し、野菜を綺麗に洗う。
鍋に水魔法で水を張ると焚き火に石魔法で竈を作るとそこに置いた。
人参は短冊切り、鶏肉とキャベツは一口大の大きさに切り、鍋が沸騰するのを待つ。
沸騰してきたら鶏肉と人参、キャベツを入れ、程よく煮えてきたらもやしを加える。
途中臭み取りのために料理酒を少々入れて具材が煮えるのを待ち、最後に鍋つゆの素を適量入れたらくつくつと煮込めば完成だ!
「……君、何でもできるんだなぁ。」
俺の作業を見ていたアインスさんは感心したような顔でそんな事を言った。
「そうですかね?ありがとうございます。」
俺がはにかんでそんな事を言うと、後ろからユーリが俺を抱きしめて「にぃには渡さないよ!」と俺の肩越しにアインスさんに牽制した。……でかくなったねぇ!?
「大丈夫だよ、君のお兄ちゃんは『スノーホワイト』のメンバーのままだから安心しな。勧誘はしないから。」
苦笑いしたアインスさんはそう言ってユーリの頭を撫でた。
それを聞いてユーリは嬉しそうに頷く。
それからしばらくして女性陣がお風呂から上がり、入れ替わりに男性陣がみんなで入る。
セバスも誘ったんだが、「私はこれで十分です」と言って『クリーン』っていう魔法を自分にかけた。
……ゼバスって、ホントに風呂嫌いだよねぇ……。
俺やユーリもみんなと一緒にテントの中へと入る。
スコットさん達はもう慣れたものだが、何故か『大樹の木漏れ日』の3人は少し戸惑っている。
「ほら、気にしないで風呂に入れよ。あ、身体を綺麗に洗ってから入れとは言わないが、身体にしっかりかけ湯だけはしてから入ってくれな?」
リッキーが3人にそう声をかける。
そういうリッキーは俺と同じく体を洗ってから入る派だ。
スコットさんはどちらかというとかけ湯をしっかりとしてから入る派なんだよね。
先に湯船に入ったスコットさんから「はぁ~……いい湯だな。」との声が聞こえた。
「おぉ~、温泉じゃないがかけ流してあるんだな。これならいつでも綺麗なままだ。……ん?もしかしてこの魔石がお湯の素か?」
そう言って魔石をつまみ上げる。
すると石からは思ったよりたっぷりのお湯が出ていた。
実はそのお湯、地面に触れると何故かすぐに吸収されているみたいで、周りは全然びしょ濡れになってないんだ。不思議だねぇ?
それからみんな揃って湯船で寛ぐ。
ガタイの良い男が4名と他3名が入っても余裕があるように、温泉旅館のお風呂みたいにかなり大きめに作ってある。
だからテントは、俺たちのチームテントの予備を使っているんだよ!
「……それにしても、まさかダンジョンでこんな快適な環境で過ごせるとはなぁ。俺たちは運が良かったな。」
そうアインスさんは寛いだ表情で呟く。他の2名も頷いていた。
「そうだよな、俺達もシエルと会う前まではお前達と同じ冒険者環境だったからよく分かるよ。」
「そうなのか?やっぱりそこは高ランクパーティーでも中堅パーティーでも変わらないのか。」
「そりゃあそうだよ、普通はここまで能力ある奴いないからな。……まぁ、こいつは新たに加わりはしたが、元々俺たちの『身内』だからな……やらないぞ?」
リッキーはニヤリと笑ってそう言う。
……いや、俺の意見抜きでの『あげる』『あげない』は意味なくない?
俺は呆れた顔で2人を見る。
すると2人は顔を合わせて笑い合った。
そんな2人を見て、皆で笑い合う。
……なんだか、こういうのも良いもんだね!




