黒騎士は孤独なまま生き続ける

　魔法技術が栄える魔法大国に、黒い鎧で全身を包んだ黒騎士がいた。

　国で一番の魔法剣の腕を持つ騎士には、主がいた。

　菫色の髪をした、少女。

　菫姫。

　黒騎士はその少女を慕い、毎日危険から守っていた。

　しかし、その少女は命を落とす事になる。

　せめてきた隣の国の兵士、科学王国の兵士達の手にかかって。

　黒騎士は、主のなきがらをかかえて、己の無力を嘆いた。

　主を失った黒騎士は、失意のまま生きる事をよしとせずに、命を絶とうとしたがそんな彼に魔女がささやいた。

　気まぐれに各国を旅する魔女。

　破滅の魔女が。

「私がその姫を生き返らせるとしようか。しかしそのためにはーーが必要だ」

　黒騎士は破滅の魔女の望みを叶える事にした。

　永遠の命を欲する魔女の願いを。

　その日から黒騎士は、堕ちた闇の騎士として各地で人を斬っていく。

　ただの人も、強い人も。

　目的の前に立ちはだかるものにはすべて、剣をむけてきた。

　そして、闇の騎士は破滅の魔女の望みを叶えた。

　永遠の命の源である、全ての人間の命を奪って捧げた。

　数多の命を得た破滅の魔女は、完璧な存在となった。

　そして、闇の騎士に菫姫の幻を見せて、約束を叶えて、とりつくろった。

　闇の騎士は幻の菫姫と共に、幸せな日々を送る。

　破滅の魔女がどこか彼方へ旅立った後、誰もいない世界でただ一人きりのまま。