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くらくらさせて

 シャワーの音が耳に染みる。頭の中がまだ浮ついているままだった。

「早く流してよ」

 不満気な声がしてきたので、俺は泡だらけになったボディタオルを風呂の縁に引っ掛けた。美晴の肩に手をついて立ち上がり、シャワーのノズルを固定具から外す。彼女の小さな背中に向けて、やや勢いを弱めながら湯をかけた。

「今日、学校で何かあったの?」

「ん? まあ、あったよ。部活、作った」

 美晴は鏡台の横にあるボトルから洗顔液を手に出して、ゆっくりと顔に塗った。湯を溜めていた桶を使って、一気に洗い流していた。

「何部?」

「演劇部」

 顔だけ振り返ってくる。こうして見ると、やっぱり記憶の中の妹よりも幼い。

「サッカー部にしなかったんだ」

 俺は美晴の背中だけを見ていた。

「うん。……ごめん」

「なんで謝るの? ともの好きなことやりなよ」

「そうなんだけどさ」

「わたし、わかってたよ。もうサッカー好きじゃないでしょ」

「そういうわけでは」

「交代。わたしが背中洗う番」

 俺にあまりそれを考えさせたくはないという感じだった。場所を入れ替わりながら、俺は舌を巻いた。中学一年生に敵わないと思わせられるのは、美晴と一緒にいると珍しくなくなる。

「よかった。高校デビューちゃんとできたんだね。ハブられるかと思った」

「デビューって。美晴はどうなんだよ。好きな男子できた?」

「わたしは普通でーす」

「え? 普通? 普通ってなんだよ。いんの?」

「まずそっちから言えば? 演劇部作ったのさあ、女がらみでしょ?」

 俺は黙った。美晴は少し強めにタオルで背中を洗っている。ずっと黙っていると、左の肩甲骨のあたりを手のひらで押してきた。

「いたっ」

「あ、ごめん。ほんとに痛い?」

 その声が本当に焦ったようなものだったので、俺はからかうことなく首を振った。

「何となく言っただけ」

「なんだ。まだ痛むのかと」

「ああ、傷の?」

「まだ残ってるね」

 美晴は言葉の末尾を残すように声を小さくした。背中に肌の感触。振り返れば、彼女はおでこを背骨のあたりにくっつけてきている。そこから左上に少しずれたあたりに、八センチほどの白くなった傷跡があった。

「今日のご飯、わたしも作るよ」

 妹の声は少し震えていた。

「いいよ。俺が全部やるから」

「いいの。一緒に作ろ。そうしたい」

 俺は美晴の頭を撫でた。

「わかった。そうしよう」 

 今日は本で憶えたばかりのチーズ入りハンバーグにしようとしていたが、妹も作ったことのあるオムレツに変えた。こういう日は、映画やドラマは絶対に見ない。寝る時間まで馬鹿らしいバラエティ番組を見て、一緒の部屋で寝るのが恒例だった。でも美晴は、途中で別々の部屋で寝ると言い出した。就寝場所についての意見を変えることは、今までないことだった。……母さんが生きていた時は。

 すごすごと俺は自分の部屋に戻り、机のそばの椅子に座った。この部屋には、あまり自分のものが露出していない。家に貼っていた海外のサッカー選手のポスターや、家族写真などは全て棚の奥にしまわれていた。

 俺は入り口の方を見た。できれば扉は閉めたくない。美晴に見られてもいいものにしよう。そう考え、リュックの中から白い指輪とユニークの化身を取り出した。指輪の方に注目する。


 イオニアン・リング

    効果:大切な人と共に生きよう

    ペナルティ:ふられたら死にます


 全ての指に一度ずつ付けたことはあったが、何も起こらなかった。誰かにあげることで効果を発揮するものなのだろうか。大切な人。まず最初に美晴を思い浮かべる。だが、指輪をあげる相手には当てはまらない気がする。次に出てきたのが、一条だった。ありえない。普通に彼女に殺されるだけだ。ペナルティが怖すぎる。

 自分で判断できないものは、どうするべきか。机の上に立っている化身へと向き直った。

「イオニアン・リングを、好きな人にはめてもらう」

 浅く息を吸い込んだ。背筋が粟立つのを感じた。化身は少しも動いていない。だが顔は違った。可愛らしく閉じられていた小さめの口が一瞬にして裂け、端が耳元の辺りにまで到達していた。覗くがたがたの歯は、血まみれになっている。両目は異様に拡大され、中が全て真っ黒になっていた。

「やめ、やめろ」

『ディックヘッド!』

 おぞましい笑みから、普通の、見慣れた表情へと変わる。いつもは憎たらしく思っていたものなのに、今はほっとさせられた。リングをぞっとする思いで見てから、リュックの一番使わないポケットの底に入れた。当分は、それの存在を忘れることにした。

 金切り声が聞こえてきた。

 椅子から転げ落ちそうになって、ギリギリでバランスを保った。それから全速力で自分の部屋から出て、隣の美晴の部屋の扉へと突進する。一度派手に跳ね返されてから、定まらない手でドアノブを回した。

「美晴!」

 真っ暗な部屋の中、彼女はベッドの上に座っていた。壁の隅に寄りかかり、両手で耳を抑えている。まだその口からは悲鳴が漏れ続けていた。俺は一度立ち止まってから、彼女を無理矢理抱きしめに行った。最初は驚くほどの力で抵抗したが、何度も声をかけながら優しく撫でると、やがて声が小さくなっていった。

「美晴。俺だ。俺だから」

「おか、お母さんが」

「大丈夫、大丈夫」

 美晴は嗚咽をもらしながら、見えない何かを見ていた。

「首が、すごく長くて。それで、それで」

「俺がいる。大丈夫だから。美晴のそばにいる」

「ごめんなさい、ごめんなさい……」

 これ以上何も言わずに、俺は美晴を抱きしめつづけた。途中から俺も泣いていたが、そんなのはどうでもよかった。一時間くらい背中を撫でながらくっついていると、美晴は横になりたいと言い出した。

 同じ枕の上で、お互いに見合う。美晴は目の縁を赤くさせながら、ぎこちない笑みを向けてきた。

「目赤い」「美晴もな」「とも」「ん?」「ありがとう。大好き」「俺は愛してるけどな」「わたしはもっと愛してる」「俺は美晴が生まれた時から愛してる」「じゃあわたしは生まれる前から」「江戸時代から」「ビックバンの前から」「はい反則。美晴の失格負け。罰として早く寝なさい」「はーい」

 本当は、こういう会話を永遠にでもしていたかった。そうすれば嫌なことなんてなくなるから。色々なことを、考えてなくてすむから。

 美晴の寝顔を最後に見て、目を閉じた。明日からのことを強く考えながら。




『続きまして、今週のヤングランナーズ! このコーナーでは世界へと走りだそうとしている日本の若者達に注目します。今回はなんと、アメリカで育ちハリウッド映画にも出演していたという、〝逆輸入高校生女優〟一条あいさんに来てもらいました』

『おはようございますー』

『おはようございます。それでは一条さん。コーナーの流れとしましては、まず簡単なプロフィール説明から参りたいところなのですが。その前に、昨日の夜に出された電撃発表について、皆さんが知りたがっています。どのような考えがあってのことなのか、教えてください』

『十三年、役者としての仕事をしてきました。その中で選択してきたこと、選択してこなかったこと。今まであまり考えていなかったのですが、昨日、それを思い出させてくれるような出会いがありました。高校に属する学生として、できることをしていきたいと考えています』

『出会いですか。ちなみに男性の方だったり?』

『どうでしょう』

『なるほど。詳しいことは、質問コーナーでじっくりと掘り下げていきましょう。それではまず、一条さんの簡単な経歴から……』

 後半の視聴者からの質問コーナーでは、ほぼ恋愛の話しかこなかった。しかも一条は全てに思わせぶりな回答をしたために、リアルタイムで寄せられる質問の熱は収まるところを知らなかった。SNSのトレンドにも一条に関する単語が複数個載った。要するに、荒れに荒れた。

 微笑みを浮かべながら手を振る一条の画を最後に、再生が止まった。空き教室の中心にいる一条は、スマホをしまってから入り口の方を見る。何人かの男子生徒が扉の窓から覗き込んできていた。この教室の前に集まっている学生の数は、かなり多いだろう。

「私でオナニーしたことある?」

 大勢の人が聞き耳を立てている中、一条は平然と言った。

「全く。僕文字でしか抜けないから」と辻田。

「三、四回かな。一条の顔って男女関係ないとこあるから」と藤野。

「や、そん、いきなりそんな、なんでそんな……」

 演劇部の全員が、俺を見てきた。藤野が吹き出す。

「倉下、動揺しすぎ。言っちゃってるようなもんじゃん」

「ちが」

「お前、私で抜いたことあるの?」

「そんなわけないだろ」

 嘘だった。かつての高校二年生くらいの時、一条の「軽い」写真集を利用したことがある。同じ学校に通っているという事実が、未知の領域へと連れて行ったことは否定できない。

「嘘っぽい」

「ふ、藤野だって、やってるじゃん」

「あのさ、冗談だってわかんないかな。一条だって明らかに真剣じゃなかったじゃん」

 辻田が首を傾げる。

「藤野は冗談のつもりで言ってたのか?」

「え?」

 演劇部の全員が、辻田を見た。どうにもならない恥ずかしさを紛らわすためにも、俺は辻田に使える小説がどんなものか、後で尋ねることに意識を向けた。

 一条は俺を見て鼻を鳴らしてから、指を一本立てた。

「これから私達は、同じ部員として活動してくわけだけど。当面の目的は一つ。十月にある文化祭で、()ること」

「文化祭? そうなの? 演劇の学生大会とかは、出ないのか?」

「私がいたらどうせ優勝するでしょ。何が面白いの? 私たちはここの学生を楽しませるの。楽しませて、二度と忘れさせないようにする。それが目標」

 一条の口から出ると、どんな言葉も鼻につかないような気がした。まだ彼女は、指を一本立てたままでいる。

「あと、ルールも一つだけ。ドラッグと差別は禁止」

「どういうルール?」

「うるさい。男のくせに、黙って最後まで聞けないの?」

「それって、性差別では?」

 一条は俺を見つめたまま、両手を打ち鳴らした。

「はい解散。帰っていいぞ」

「はっや。まだ四時過ぎたばっかだろ」

「くらくらは帰るな」

 辻田と藤野に向かって、一条は顎を振った。さっさと出ろと言いたいらしい。動かない彼らを見て、「副部長」の一条は舌打ちをした。

「やることは事前に言っておいた。さっさと家に帰ってやれ」

「お、俺は?」

「お前のやることは、これから言う。でもその前にそっちは帰って」

「ふざけてんのか?」

 辻田が一条の方へと近づく。

「やることはやる。でも、倉下だって部員だろ。ならこいつがどんなことやるのか、僕と藤野にも知る権利がある」

「なんか、仲間外れにされてるみたいでうざいんだけど」

 一条はさらに舌打ちをした。俺は彼らをハラハラする思いで眺めた、初対面の時もそうだったが、かなり喧嘩腰だ。さすがまずいのではないかと口を開きかけたところで、一条が俺に向き直った。

「お前のことは、まだ認めてない。時間のことも嘘だと思ってる。だからこれから言うことをやり遂げられたら、しばらくはこの部で頑張ってあげる。いいな?」

「わかった。何でもするって言ったのは俺だし」

「一つ、今度の中間テスト、学年で五位以内に入ること」

 勉強? いきなり予想外の方向から来た。だが、思っていたほどの難題ではない。高校一年生の最初の方の範囲は簡単だし、しかも二回目だ。がんばればなんとかなるだろう。

「二つ、スポーツ系の部活に入って、大会で一回勝つこと。ただしお前が未経験の競技に限る」

 え。

「三つ、私が指定した映画、漫画、ドラマ、アニメを一日に二作品ずつ毎日見ろ。次の日の朝に感想を言ってもらう。四つ、そっちに毎日新聞送るから、興味持った記事を切り取って、それも朝毎回プレゼンしてもらう。五つ、部活が終わったあと、私の家で台本読みに付き合ってもらう。これは週に五回くらい。六つ、これら以外にも随時追加される可能性があるから、備えろ。一つでもサボったら殺す。いいな?」

 どうしてこんなに大きくて、輝いて見えるような黒色なのに、逃げ出したくなるくらいの怖さを持つ瞳になるのだろう。

 辻田が手を挙げた。

「小説は? なんで小説だけ省いてるんだよ」

「辻が勧めればいいでしょ。何? 私に選ばせたいの?」

「それな」

 助け船がやってきたと思ったが、大した造りではなかった上にすぐ沈んだ。

 藤野もおずおずと挙手した。

「倉下にメイクしないと、あたし、登校しづらいんだけど」

「明日の朝からは私がそっちの家に行く。私がリリーの作品になってあげる」

「え、ありがと……」

 二隻目も轟沈して、結局俺は逃げられなくなった。いや、元々逃げるつもりはない。自分が言ったことを思えば、これでも手加減してくれている方なのかもしれない。一方で、要求の中にどうしても見逃せないことがあった。

「一つだけ言わせてほしい。部活終わったあとの台本読み、厳しいかも」

「は?」

「だ、だから、その。六時までには帰りたいんだ。住んでるとこに。妹と一緒に夕食摂りたいから。そこだけは譲れない」

 俺はすぐに両手を股間にやった。だが一条は少しも動くことなく、俺から目をそらしていた。信じられないことに、少し動揺しているように見える。ただそれはほぼ一瞬のことで、すぐにいつものように睨みつけてきた。

「ならその妹も私の家に呼べばいい。ママのご飯、美味しいし」

「そこまで世話になるわけには。もうかなりの迷惑を」

「黙れ」

「はい」

 正直、ありがたい部分もあった。食費を削って別の、例えば美晴と一緒に映画を見に行くとかにお金を使えるようになるのは素晴らしい。ただあまりにも申し訳ないので、何か手土産は必要だと感じた。一条の母親のお菓子の好みくらいは、知っておいた方がいいだろう。

「じゃ、行くぞインポ」

「インポじゃないです。どこに?」

「部活選ばないと」

 ついてくるのかよと思ったが、彼女だけではなく、辻田と藤野も一緒だった。俺の部活選びが、演劇部全員でやる最初の活動だとは思いもしていなかった。だが、選ぶこと自体にはそう時間はかからなかった。決めるのは彼らでも、俺でもないからだ。

「テニス部か」

 それほど広くないコートで、部員たちが練習試合をしている。それを外から見ながら、一条は抑揚のない声で言った。

「サッカーと同じ球技だけど、足と手で使うラケットじゃ全然違う。それに個人競技だし。そっちの言う条件は満たしてるだろ」

「いいんだけど、他にも選択肢はあった。なぜ?」

 大会を勝ち進むというアイデアの中で、なぜかテニスだけが〝ビューティフル〟だったから。皆の目を盗んで、化身に話しかけるだけの時間はあった。

「面白くなると思ったから」

 一条は黙って頷いた。もしかすれば、これを使い回せばある程度は通用するかもしれない。

 去り際、離れたコートで練習していた女子テニス部の一人が近づいてきた。半袖の白シャツと黒のジャージ下という健康的な姿は、かなり懐かしさを感じさせるものだった。

「あれ、なんでもっとも来てんの?」

 沙良は驚きつつも嬉しそうな様子で話してきた。

「見学。俺、テニス部入るから」

「ほんと? 演劇部は?」

「その一環というか……。とにかく、全力でやるよ」

「私目当て?」

「なわけ。絶対沙良より上手くなってやるから」

「こわ。ま、がんばりなよ。ワンセットくらいは取れるようになるかもね」

「言ってろ」

 テニス部も、サッカー部と同じでそれほど力を入れてやっているわけではなさそうだった。少し不安を覚えたが、集団競技ではないと思い直して、見学を終えた。いつの間にかいなくなっていた一条たちは、コートから離れた、グラウンド横のベンチに座っていた。

「とにかく、部活は決めた。今日は終わり?」

「わかっちゃったんだけど。あのキラキラ女子、多分倉下のこと好きだろ」

 辻田が得意げな笑みを浮かべた。

 藤野が辻田の頭を叩いた。

「本人前にして言うのはだめでしょ。わかってないな」

「いや、別に知ってるからいいけど」

 藤野と辻田はこそこそと話し始めた。「陽キャは皆こうなの?」「知らん。でもこいつは無害そうで実はたらし顔してる」「こわすぎ」仲良くなっているのはいいことだ。でも、沙良の話題でこの二人が盛り上がっているのはなぜか嫌だった。沙良なら辻田と藤野とも仲良くできそうなのに、その想像ができない。途中で消えてしまう。

 一条が俺の脛を蹴ってきた。

「痛」

「何突っ立ってるんだよ。帰れよさっさと」

「あ、じゃあ終わり? 一条の家で台本読みとかは」

「今日はいい。気分じゃなくなった。消えろ」

 俺、一応部長なんだけど。部員たちの様子を見て、さらに不安になった。



 翌日から、俺の「やること」が本格的に始まった。空港で生活をする男を題材にした映画と未来の日本の公安組織を描いたアニメ映画を見て、一条から送られてきた新聞を読む。登校してから、それらの感想を一条にすぐ話す。終わったあともあまり気は抜けない。授業も集中して聞かなければいけなかった。

 二時間目の数学の授業を受けている時、それは起こった。

 今までになく真面目にノートと黒板を比べて見ていた俺は、教室の後ろの扉が勢いよく開かれた瞬間、体をびくつかせた。他の生徒も皆驚いて、入ってきた一条に注目していた。彼女のは氷の表情を浮かべながら、早足で向かってくる。俺は身構えたが、彼女が目指していたのは別の席だった。

 辻田が座っているすぐ横で立ち止まると、一条は右手を伸ばした。拳の状態から徐々に開いて行き、辻田の頭に細かくちぎられた紙をぱらぱら落とした。

「何これ」

 辻田の眼鏡に紙片が引っかかっている。彼は前を向いたまま固まっていた。一条は針のような目つきをしたまま、首を傾けていく。口を辻田の右耳へと近づけた。

「全部だめ。お前のオナニーなんて見たくないんだよ。明日までにもう十本、書いてこい。わかったか?」

「……ぁい」

 一条が辻田の椅子の足を蹴った。財布を取り出して、五千円札を乱暴に机の上に置いた。

「ヤングマガジン二〇一九年四号に私の水着姿、それと映画〝ストリート・ブラッド〟の一時間二分三十秒から私の入浴シーン。ちゃんと見ろ。二回は抜け。それから十本書け。釣りはいらない。わかったら返事しろ辻!」

「はい!」

「リリー」

 俺の斜め前に座っている藤野が肩を大きく上下させた。

「はい」

「くらくらの部活が終わるまで、駅前で私の服選べ。放課後すぐにA組まで来い」

「はい! わ、わわかりました!」

 一条は最後に俺を視線で突き刺してきてから、教室を出て行った。

 その後辻田はもごもごと早退する旨を言ってから荷物をまとめて出て行った。藤野は机の上にファッション雑誌を広げて、必死に何かをメモしていた。多分一番の被害者は、数学の教師だと思う。まだ二十代前半の彼女は、自分の授業中に起きた嵐にまるで対応できていなかった。

 藤野も昼休みからいなくなったために、全ての好奇心の矛先が俺にやってきた。できれば辻田から借りた短編小説を読みきりたかったのに、その対応に追われてできなかった。テニス部での自己紹介の時も、同じような空気感だった。そのお陰で、部活の知らない先輩や同級生とも気安く話せたため、一概にだめだとは思えなかった。、俺がまだ一条に「やられて」いないから、言えることかもしれないが。

 テニス部最初の活動が終わり、電話がかかってきた瞬間、俺の番がやってきたと思った。

「もしもし、一条さん?」

『ワンコールで出ろよ、殺されたいのか? 今、リリーと別れた。正門の方に車停めるから乗れ。私の家まで行く』

 俺は、部活用のバックを抱え直した。唾を飲み込む。

「あーっと、俺さ、歩いて行くよ。送ってもらうの、悪いし」

『……お前の妹も途中で拾う』

「そういうことじゃないんだ。とにかくごめん。妹と一緒に歩いて行くよ」

『黙れ』

 俺は声をやや強めに出した。

「お前が運転するわけじゃないだろ。お前だけじゃなく、お前を大事に思ってる人にも迷惑かけてる俺が、お前の家に行くのに送ってもらうのはだめだろ。一条、頼む」

 大きな音がした。何かが転がる音。それからまた物音がして、一条の呼吸音らしきものが聞こえてきた。

「一条?」

『わかった。歩いてこい。場所はラインで送る。もう二度と電話してくるな』

「電話してきたのはお前……」

 俺はスマホの画面を見てから、釈然としない思いでポケットにしまう。一条の声は明らかにいつもと違っていた。電話越しだからだろうか。

 振り返ると、沙良が呆気にとられた顔で立っていた。

「どうしたの?」

「えっと、亮吾たちとマックで勉強するから、どうかと思って」

「ごめん、これから用事。あと、多分マックには二度と行けないと思う」

 俺の意識は既に、美晴をどう迎えに行くかにしか向けられていなかった。一度住んでいる所に帰って、美晴に事情を再度説明。彼女は黒の長袖Tシャツの上にブラウンのカットソー、下は同じくブラウン系のデニムスカートに着替えた。訊けば、藤野に勧めてもらった服らしい。俺は感動して、彼女単体とツーショットの写真それぞれ数枚づつスマホで撮った。その写真をお礼と共にラインで藤野に送っても、既読がすぐにはつかなかった。おそらく、一条に連れ回された後で疲れているのだろう。

 俺の方は制服姿のまま、美晴と共に目的地へと向かった。一条の家があるらしい住宅街は、とても静かな雰囲気だった。アパートやマンションは少なく、立てられてからそれなりに時間が経っていそうな一軒家が多く並んでいる。夜の六時という人通りが多そうなこの時間帯でも、仕事終わりのサラリーマンや学生が疎らに歩いているだけだった。

 白い壁が立っている家の前に来た時、騒がしい気配を感じた。壁の前で、カメラを持った男女の集団がたむろしている。今日の朝、学校の前で多くの生徒がマスコミに捕まっていて、安藤先生らが追い払っていた光景。それを思い出し、美晴をかばうようにして前に出た。

 一番近くにいた男性が、俺たちに気づいて近付いてきた。人の良さそうな笑みで「こんにちは、どうも」「こんにちは」「君も一条さんに用?」「マスコミの方ですか?」「いや、違うよ」「パパラッチ?」「違う違う。ちょっと依頼されたりして、彼女の写真を撮ってるだけ」「パパラッチですよね?」

 家の玄関へとつながる扉が、いきなり開かれた。そこから現れたのは、白装束を身に着けた女性。顔は般若の仮面に隠れて、何もわからなかった。「死ねええ!」とおぞましい叫びを上げながら俺に突進してきた。あまりにも突然のことで、動けない。そのまま相手に押し倒されて、彼女が手に持っていたナイフが俺の腹部に向けて振り下ろされた。

 俺は女子みたいな悲鳴を上げた後、すぐに美晴のことを考えた。不思議と、痛みがやってこない。家族のことを考えるのは、鎮痛剤にもなるのだろうか。よく見れば、ナイフの刃が引っ込んでいた。

白装束の女は既に立ち上がっている。カメラマンの集団に話しかけていた。「ありがとうございました」「おつかれー。いやあ、あいちゃんもよかったけど、男の子のリアクションもいいね。いいの撮れたよ。報酬はいつも通りの感じで」仮面を外した一条は彼らを見送った後、ようやく俺に振り返ってきた。

「さっさと立てよ。それとももらしたの?」

 もらしてはいないが、説明は欲しかった。美晴はたいして驚いていない様子だったので訊いてみると、どうやら事前に藤野経由でこういうドッキリがあることを知らされていたらしい。納得できない思いで、一条家の敷居をまたぐことになった。

 まず、リビングへと案内された。想像していたよりは普通だ。今俺と美晴が住んでいる所より少し大きいくらい。よくわからない絵画や、高そうな壷といったいかにもなものは何一つ配置されていなかった。その代わり、本やCD、レコードプレーヤーといったものが邪魔にならない程度に配置されている。これは、一条の趣味ではないような気がした。

 柔らかい黒色のソファの上で、俺は背筋を伸ばしていた。

「一条茉莉です。あいの母親兼マネージャーをしています。よろしくお願いします」

「こ、こちらこそ」

「よろしくお願いします」美晴の方がいくらか落ち着いていた。

 黒のスーツを身に着けた、ミドルヘア―の女性が名刺を渡してくる。こういう経験は初めてだったので、一気に緊張が増した。茉莉さんは向かいのソファに座ると、更に背筋を伸ばした。

「単刀直入に言います。演劇部を解散してください」

 美晴の視線を感じる。一条の視線はもっと刺さってくる。

「あいが被った違約金、いくらになるかわかりますか?」

「え、あ、じゅ、えっと」

「九千万円です。うちはフリーランスなので、全ての負担がやってきます。貴方はその責任を負えますか?」

「む、無理です」

「では、演劇部をなくしてください。いえ、あいを辞めさせるだけでも結構」

「嫌です」

 言葉が勝手に強く出ていた。鋭くなった相手の視線に、しっかりと顔を合わせる。

「やめなさい」

「嫌です。俺は、無理やり一条さんに頼んだわけでも、卑怯な手を使って脅したわけでもありません。もちろん、貴方のご子息がどれだけのものを犠牲にしたのかは、想像するのもおこがましいと思っています。とにかく全力で進んでいくつもりです」

 視線をそらしたら負けだと思っていた。

 壁に掛けられた丸時計の針の音が聞こえるほどの静寂。その圧力にも負けずに茉莉さんを見続けていると、先に彼女が顔をそらした。その顔は今までの厳しい表情とは変わり、優しげに苦笑している。

「はい、もういいわね? あい」

「ばらすの早すぎ」

 動けないでいる俺に向かって、茉莉さんは何度も謝ってきた。俺としては、これ以上の仕掛けがないか一条に確かめたいくらいだった。茉莉さんは気を取り直すようにして、美晴の服が可愛らしいと褒めてきた。とてもいい人だ。一条を産んだ母親とは思えない。

「よかった。じゃあ違約金の話もそこまで……」

 俺は強制的に黙らされた。茉莉さんは笑っていたが、目だけは一条あいの母親だと納得できるくらいの迫力があった。俺と一条は二階へと上がった。

 部屋の中は整理整頓されていた。藤野の部屋とは大違いだ。床に余計なものが転がっていることはなく、机の上もすっきりしている。その奥にある棚には、演技論やら映画に関するエッセイやらが綺麗に並べられていた。水色のベッドも皺がほとんどなく、まるでホテルのそれを見ているようだった。

 そして、壁や天井にはおびただしい数の写真が貼られている。全て一条が映っているものだった。それのせいで、他の部分がいくら印象を良くしていても無駄だった。悲鳴が出かけたくらいだった。

 一条は机の前の椅子に座ってから、黒のハイソックスに包まれた長い足を伸ばしてベッドを示してくる。そこに座れということらしい。俺は圧倒されながらも、何とか指示に従った。直後、茉莉さんが部屋の中に入ってくる。俺に微笑んでから、壁にスタンドのようなものを取り付けていった。その先端部分にはカメラが固定されている。

「これは?」

「私、自分の部屋に男呼ぶの初めてだから。心配してるんじゃない?」

 まるで他人事のようだった。万が一俺がそういう気になったとしても、返り討ちに遭って殺されるから問題ないと思う。訊きたいことはいくらでもあったが、既に一条は台本を取り出してきていた。黄緑色の表紙に、あっさりとした書体でタイトルが書かれている。

「これ、私が出演するはずだったドラマ。今再編成でおおわらわ」

「俺の、せいか?」

「私はもう憶えてるから、これ使え。最初からできるとこまでやる」

 事前に身構えていたほど、きついものではなかった。一条が演じる役以外は全て俺が読んだが、指摘らしい指摘はまったくされなかった。自分でもひどいと思うくらい棒読みだったのに、舌打ちすら飛んでこない。反対に、一条の読みは圧巻だった。動きは全くなくただ椅子の上に座って読んでいるだけなのに、それっぽい感じが溺れるほど伝わってくる。

 劇薬のようなものだった。少し気を抜くだけで、彼女に引きずり込まれる。そばで一条の演技している声を聞くと、そういう危機感を持たざるを得なくなる。喋ることよりも、聞くことの方が消耗させられるなんて、思ってもいなかった。

 一時間ほどやっただけで、先に俺の声が枯れ始めた。

「今度からは、口を大きく開いて声を出して。喉を開くイメージで」

 ようやく指摘のようなものをしてきた後、一条は椅子から立ち上がり、俺から台本を取り上げた。当たり前のように隣に座ってくる。ベッドのへこみがやや大きくなった。

「気にならないの?」

 一条の瞳が、部屋の灯りに照らされている。

「ど、どこが?」

「写真」

「あ、ああ。なんでこんなに?」

 彼女は横へ体をねじりながら、後ろの壁に貼ってある写真の一枚に触れた。かなり幼い一条が、差し出された誰かの手に掴まっている。表情は不敵だった。雰囲気だけなら、今と全く変わっていない。

「自分を観察する機会って、貴重だと思わない? 一日に一枚は、撮られることにしてる。今日の一枚は、お前を殺そうとしてる私で決定」

「もう、ああいうのはやめてくれ。心臓に悪い」

「得体が知れないって思ってる?」 

 俺はちらりと横を見た。それでもう、顔をそらせなくなった。一条は少しだけ目を細めて、不気味な微笑を浮かべている。今まで見てきたどれにも当てはまらない顔だった。一体彼女には、どれだけの数の表情があるのだろう。

 淡々としているのに、温度の感じられる声が出てくる。

「こういう部屋も、今までの振る舞いも、全部意味がわからないと思ってる?」

「まあ少しは」

「どの口が言ってるの?」

「な、なんだよ」

「私の演技で泣いてる奴は、いくらでもいた。でも、お前のあれは違う。感動というより、安心してるみたいだった。そんなのは初めて。なぜ?」

 一条はその言葉に強い確信を持っている。ごまかせばより追いつめられる。そう思っていても、あの時の気持ちをそのまま言う気にはなれなかった。

「俺は、一条の役者としての実力を信じてた。信じてたけど、不安もあった。だからあの時初めて生で一条の演技を見て、ほっとした部分もあったんだと思う」

 一条は小さく首を傾げてから、顔を一気に近づけてきた。蛇のような笑みになっている。

「お前、主人公みたい。物語に急き立てられてる主人公」

 頭の裏に、じんと来た。俺が、主人公? もしそうだったなら、今ここにいないはずだった。訳の分からない文字の言葉をすぐに理解し、何事もなく乗り越えられていたはずだった。卒業式の後に母さんと美晴の好きな寿司屋に行って、帰りに映画を見て帰ってくるはずだった。大学に入って勉強して、良い所に就職して、母さんに海外旅行をプレゼントするはずだった。何度も何度も、美晴の涙を見たり俺の涙を見せたりなんてことにはならないはずだった。

「私が憎いの?」

 言われてから、自分が歯を食いしばっていることに気がついた。

「いや。いや違う」

「それでいい。何でもいいから、お前自身の激しい感情を見せて。私にぶつけてきて。もっと尖らせて。私を、くらくらさせて」

 いつの間にか、一条の手が俺の膝に置かれていた。制服のスラックスごしなのに、嫌というほど体温を感じる。彼女は上半身を少し曲げて、顎を俺の肩に触れさせてきた。

「クイズ。演劇部の中で一番たちの悪い奴は誰でしょう? 答えろ」

「い、一条さん」

「ぶぶー。正解できたら、ご褒美あげる。私が〝倉下ともに一目惚れした一条あい〟を本気で演じてあげる。四十八時間限定で」

 入口の扉が勢いよく開かれた。入ってきた茉莉さんは、前を見ながら固まっている俺と既に椅子に戻ってくるくる回っている一条を見比べてから、夕食ができたことを報告してきた。

 献立はチーズ入りハンバーグ、きんぴらごぼう、ひき肉入りあんかけ豆腐、レタスとトマトの和風昆布出汁ドレッシングサラダ、きのこの味噌汁だった。レシピは既に教えてもらった。これだけで、一条家に来た価値があると思ってよかった。

 美晴はどこか一条を怖がっているようだし、俺も似たような感じだった。そういう気まずくなる条件が整っている食卓で、やはり茉莉さんが上手く話を回してくれた。とはいえ、ほとんど俺に対する質問だったが。

「倉下君は、あいとどういう出会いをしたの?」

 茉莉さんは既に普段着に着替えていて、その上にエプロンを付けていた。

「どういう、ですか。まあ、その」

「こいつがいきなり告白してきた。必死な顔で、付き合ってくださいって」

 ずっと美晴を見ながら黙々と食べていたのに、こういう話題になると一条は参加してくる。

「必死ではなかっただろ」

「嘘つき」

「それに、あれは違う。こう、わかるだろ。とにかく面白くなるために……」

「それ言っとけば、何とかなると思ってるだろ」

 茉莉さんがくすくす笑い出したので、注目が彼女に集まった。

「ごめんなさい。ちょっと思い出したから。懐かしくなっちゃって」

「どういうことですか?」

「ロラン、夫も同じだったから。いきなり告白してきたの。一目惚れだとか言って」

「わあ、詳しく知りたいです、その話」

 美晴が楽しそうに喋っているのを見てから、俺は箸を動かした。茉莉さんは時折一条に目をやりながらも、リラックスしてきた美晴を基本的には見ている。一条はずっと美晴だけを見つめていた。楽しげな話し声、食器と箸がぶつかる小さな音、台所の換気扇の音。俺は食べる手を早めた。ずっと聞いていると比べそうになるから。料理の味もあまり感じないようにした。どっちの手料理が美味しいかなんてどうでもいいはずなのに、考えずにはいられないから。

 食事が終わったところで、八時近くになっていた。風呂も勧められたが、さすがに断った。玄関まで来たところで、驚くべきことが起きた。いきなり一条が、美晴に抱きついたのだ。

「くらくらと同じ股から産まれてきたとは思えない。また来て」

「あ、ありがとうございます」

 美晴はびっくりしていたが、緊張をほぐす契機にもなったらしい。頼まれてサインを描いている一条は、俺には全く向けたことのない優しい眼差しをしていた。

 玄関から外に出ると、門の前で茉莉さんが車を停めて待っていた。

「送りますよ。もう遅いし」

 美晴が一瞥してくる。俺は少し迷ってから、再び歩き始めた。ここまで来て断るのは失礼だ。もう、それらしい理由が思いつかない。

 美晴が先に後部座席の奥に入る。俺は開いたドアに手をかけて、中をさっと見た。少しも散らかっている所はなく、狭苦しい感じはあまりしないように思える。屈んで頭と首、肩を中に入れた瞬間、どっと汗が額から出てくるのを感じた。

「とも」

 美晴の声すら、遠くなっていく。座席の底に手を突いて、大きく息を吸い込んだ。思考は前に進もうとしているのに、体は中途半端に車外に出たまま動けない。呼吸が苦しくなってくる。周りの壁が一気に動いて、自分を押し潰してくる。わずかに開いた隙間から、大量の。

「倉下君? どうしたの?」

 息ができない。

 俺は車から逃げた。転がるようにして走り、一条の家の門壁にぶつかった。何とか倒れることは防ぎながら壁から離れ、排水溝の側にまで寄った。えづいたが、何も吐きはしなかった。茉莉さんの料理を無駄にしなくてよかった。それが、最初のまともな思考だった。 

 小さな手が、背中をさすってくる。誰のかはすぐにわかった。美晴は何も言わずに、俺の苦しさを紛らわせようとしてくれていた。まともな視界が戻ってくると、茉莉さんが慌てるようにしてスマートフォンを取り出すのが見えた。俺は手を横に振った。

「そこまでは。大丈夫なんで」

「でも、明らかに」

「ちょっと、車がだめなだけなんです。すみません。美晴だけは送っていただけると助かります。俺は、歩いて帰りますから」

 何度も止められたが、俺の意思を伝え続けると、茉莉さんは引いてくれた。美晴は俺と一緒に帰ると言って聞かなかったので、結局二人で歩いて住んでいる所に帰ることになった。



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