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第四部1 暴露

いつもお読みくださりありがとうございます!

誤字脱字報告も感謝です!

……誤字が多すぎる……。

失礼しました!


「なあライアン、僕はこの頃、おかしかったか……?」


ウィリアム殿下とフェリシア様が

南の庭園のガゼボでお茶をした日の夜。


就寝前の殿下がぽつりと言われた。


殿下は既に夜着に着替えられ、あとはもう寝るだけの状態である。


リリナは既に自室に戻っている。


眠っている間は魔力も沈静化するので

夜は癒しの乙女のお役目は無用である。


それでも心配だから側にいるとリリナが言うが、

最初から殿下は寝室にリリナを入れる事は断固拒否されている。




先程の殿下の言葉に、

俺は一瞬、躊躇したが

殿下の言葉を肯定した。



「……はい」


「お前は僕が最初からおかしくなってると

指摘していたものな」


「この事は兄上はご存知なのかな」


「はい」


もちろん告げたのは俺だ。


「謝るなよ?責めているわけじゃないんだから。お前の忠告を聞かなかったのは僕の責だ。そうなれば兄上に注進するのは当然の事だよ」


「殿下……」


「僕は……フェリシアをいっぱい傷つけたんだろうな……」


そう。


あの方は沢山傷ついて来られた。


でも、それでもやはり殿下の側にいる事を選ばれた。


俺は一時期


いくら魅了魔法の所為といえど


殿下がこのままフェリシア様を蔑ろにされ続けるのであれば、


自分があの方を守ろうと思っていた。


殿下があの閉まりかけた扉を押し開けた瞬間まで、


殿下が大切にしないなら……と思っていた。


でも、あの時の必死に手を伸ばされた殿下の様子と


その手を振り解けなかったフェリシア様を見た瞬間、


お二人はこのまま離れてはいけないと思った。


だから王太子殿下に話したんだ。


二人の為にも、これではいけないと。


その選択は正しかったと心から思える。


昼間のお二人の姿を懐かしく感じた。


この胸に広がった温かさが、そう感じさせてくれた。


「でも殿下。フェリシア様はああ見えて、とてもお強い方ですよ。少なくとも殿下よりかはずっと」


「そう…か?……そうだね、そうだった」


「はい」


夜が静かに深まってゆく。


窓の外には無数の星。


明日も良い天気になるだろう。






ある日突然、その事件は起きた。


庭師を装い紛れ込んでいた教会幹部の手の者に


フェリシアが拉致されかけたのだ。


庭園を散歩中のフェリシアを狙っての犯行だった。


幸いフェリシア専属の侍女のサリィは


叔父である近衛騎士団長仕込みの体術の心得があり、


相手を返り討ちにしたので事なきを得た。


僕には何故

教会側がフェリシアの身柄を確保したいのか理由がわからない。

兄上なら何か知ってるはずだ。

でもその話を聞く前に、

片付けなければならない事があった。



「リリナ、キミの癒しの乙女としての任を解く。

後任の癒しの乙女は必要ない。長い間ご苦労だった」


突然の解雇通告にリリナは耳を疑ったようだ。



「……は?え?え?解……雇?な、なんで?

ウィリアム様ってば頭おかしくなっちゃいました!?

魔力障害はどーするんです!?」


「その問題も解決済みなんだ。

内容は明かせないけどとにかく大丈夫だ」


「フェリシア様の所為ですか?」


「は?」


「あの人がいつまでも未練たらしくウィリアム様に付き纏ったから、あの人に言われてアタシをクビにするんですか?」


「違う。フェリシアは関係ない」


「だったらどうして!?」


「……魅了」


「……!」


僕が言った言葉を聞いた瞬間、リリナの顔色が変わった。


「僕に、王族に魔法を、しかも魅了魔法を掛けたキミをこのまま側に置いておくわけにはいかない。理由はそれだよ」


「……なんでわかったんですか?

今まで凄く上手くいってたのに」


リリナが俯いて足元を見ている、その顔には一切の表情が消えていた。


「先日のガゼボでフェリシアに手を握られた瞬間にやっと気付いたんだ、キミから微量におかしな魔力が注ぎ込まれていることに。それが魅了だと気づくにはそれほど時間はかからなかったよ。いつからだ?いつから僕に魅了をかけてた?王族の僕に、どうやって魔法をかけた?」


「…………」


リリナが押し黙る。


「王族に魔法をかけた者は厳罰に処される。きちんと裁判を受けて罪を償うんだ、リリナ」


僕がそう言うとリリナの肩が小刻みに震え出した。


恐怖で震えているのか?と思ったら、

急にリリナは大声で笑い出した。


「きゃはははっ!!あはははっ!!」


「リリナ……?何がおかしい?」


リリナは腹を抱えて笑った後、涙目を擦りながら言った。


「だって…!これが笑わずにいられますかっての。せっかく上手くいってたのに、どうしてこうなっちゃったのかしら?やっぱりフェリシア(あの女)の所為だと思うんですよね〜。まぁもうどーでもいいですけど」


「どうでもいいとはどういう事?」


「だーって、魔法かけたのがバレちゃったんならどう取り繕ったってムダでしょ?どーせ王太子殿下とかも知っちゃってるんでしょ?じゃあもうどーでもいいんですよ」


「大人しく裁きを待つんだ、リ、…リナ……?」


突然、僕の目の前が歪んで見えた。


何かおかしいと思った途端、急に足に力が入らなくなる。


「……!?」


「ぷっ…!あははっ!よかった!効いてきた、

保険を掛けといてよかったぁぁ〜」


今までのリリナとは別人のような

薄気味悪い笑顔を見た瞬間、僕は崩れ落ちた。


「リリ…ナ、何、を…したっ……!?」



体に力が入らず、


変な汗が止まらない。


これは一体どういう事だ……?


「ウィリアム様には“種”を植え付けてあるんですぅ、それが魔法に反応するんですけどぉ、さっきその種に毒に近い魔力を注いでおいたんです♪体の自由を奪うように♪それがじわじわ効いてきた♪」


種?僕に?何を言っているのかわからない。


「……くそっ」


体が思うように動かない。


まるで全身が毒に侵されているような感覚だ。



ライアンは?近衛騎士は何をしている……?


すぐ側にいるはずなのにっ……!



急に力が入らなくなった僕を


リリナが押し倒してくる。


仰向けにされ、膝立ちのリリナに見下ろされる。


一体、華奢な腕のどこにこんな力があるんだ?



「暴れちゃダメですよぅウィリアム様。

“種”からは毒に近い魔力が出てますから、動くと余計体中に回っちゃいますよ?あ、ちなみに認識阻害と空間結界を張ってますから、周りにはアタシ達が認識出来ません♪大きな声で助けを呼んでもムダですよ♡」


「…なぜ……こんな事をっ……というか、

何故リリナにそんな魔法が…使えるんだっ……」



認識阻害と空間結界を同時に施術出来るなんて、

魔導士並みの魔力量だ。


術を組み込んだ魔道具があるなら話が別だけど、

見たところそんな道具は見当たらない。


リリナにそんな事出来るはずないのに……


僕はただ、思考さえも麻痺しそうな状態の中で必死に抵抗した。



「ふふふ♪どうしてアタシにそんな力があるのか不思議ですかぁ?

簡単ですよ、ウィリアム様から吸収した魔力を昇華せずに使わせて貰ってるんです♪」


「えっ!?…は!?」


「これまでも色々使わせて貰いましたよぅ。とりあえず、ウィリアム様の周りの人たちはみんなアタシが魅了をかけてまぁす♪あ、あのライアンってのには掛からなかったけど」


そもそも何故リリナが魅了魔法を扱えるんだ。


そんな使用が許されないような禁術を。


倫理的な問題から術の管理は教会がしているはずだ……


「……!」


「あら、バカだと思っていたら意外と頭は働くんですねぇ。そういえば座学は優秀だとウィリアム様の侍従の一人に聞いたっけ。そうですよ、教会がアタシに魅了を授けてくれました♪」


「な……教会が何故、そんなことを……?」


「さあ?教会の目的は知りませんが、アタシとの利害が一致したのは間違いないですね♪アタシはねウィリアム様、贅沢な暮らしがしたいんですよ。生まれた時から孤児ですんごく苦労したんです。でも癒し系の魔力があったから教会に拾われて。色んな事を学ばされました♪でもアタシはもう利用されるのはイヤなんです。これからは利用する側の人間になりたい。だからホントはずぅぅっとウィリアム様の側に居たかったです。王子様の側でずぅぅっとぬくぬくしていたかったのにぃ。でもそれも叶いそうにないですねぇ」



「そうだっ……だから諦めて大人しく捕まれっ」


「えーイヤですぅ。でもこのまま逃げるのも癪なので、フェリシア様に嫌がらせだけして去ります♪」


「フェリシアにっ!?……ダメだ、許さないっ……何をする気だっ」


「ふふふ♡」


混乱の真っ最中の僕の上に

リリナが馬乗りになった。


「っ………!?」



「うふふ♡ウィリアム様、アタシとハ・ジ・メ・テしちゃいましょ♡」


「なっ!?」


「このままいけば二人は来年結婚するんでしょ?初夜?きゃーヤラシイ!でもウィリアム様のハジメテをアタシがいただいちゃったら、幸せな気持ちも半減でしょうねぇ♪とくにフェリシア様は複雑だと思いますよ〜♪あ、ちなみに隠したってムダですよ、絶対にバレるようにしますから」


「ひ、卑怯なっ」


「あ!コラぁ!」


僕は意識が朦朧としつつもなんとか身の周りに結界を張った。


「ムダな足掻きを〜!ま、中和して破っちゃいますけどねぇ♪」


リリナは僕の張った結界を侵食し始めた。


こ、怖っ!!


バ、バケモノに見える…!


ああっ!結界が破られるっ…!


でももう魔法が使えないっ


だ、誰か、誰か助けてっ……!




その時だった。


眩い閃光と共に地の底と天上が震撼するほどの轟音が轟いた。



「っ!!??」


「キャーーーーーッ!!」


僕は自分の結界がなんとか守ってくれたものの、


リリナはダイレクトに爆風に煽られて僕の上から吹き飛んだ。



激しい爆風と共に大量の瓦礫が僕たちに襲いかかる。



張られた結界がしなる程、凄まじい衝撃だった。


何故、この国で一番堅牢に護られた城が襲われたのか。


敵襲か!?


騎士団はどうした!?


と、とにかく体勢を整えて次の攻撃に備えないと……!


僕はリリナに乱された服装のまま、


動かない体を叱咤する。



そんな時、耳に届いたのは


爆音でも轟音でもなく


涼やかな女性の声だった。



「ごめんあそばせ。ちょっと急いでいたものだから勝手に入り口を造らせて貰ったわ」



巻き上がる砂埃と魔法残滓の合間から


その人の姿が現れる。


「……フェリシティ様……!?」



侯爵夫人にして


僕の叔母、


そして現役を退いたとはいえ


未だ最恐と謳われる伝説の魔術騎士。



フェリシアのお母上の

突然の入来だった。









































いよいよ終盤です。

ウィリアム殿下ピンチです。

今回の話の流れから、

「僕の王子」は登場させませんでした。

R15付けてませんからね〜。

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― 新着の感想 ―
こいぬです、ましゅろう先生の追っかけで参りました。カクヨム版、アルファポリス版と読み比べたくて。たのしいです!
[一言] つ・い・に、フェリシティ様キターッ!☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆ さぁ、お仕置きの時間だよリリナ。    _, ,_  ∩  ( ‘д‘)彡  パンパンパンパン   ((⊂彡☆…
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