表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

第二部1 違和感

ここからは

以前読者さまから寄せられた感想、ご意見の中にあったものを取り入れました。

扉の一件ひとつでかなり展開が変わりました。

周囲がフェリシアに関わる事で更にその事の展開が本編とは変わってくると思います。

お楽しみ戴ければ嬉しいです。

「え……」


朝食に訪れた王家のための食事室で


わたしは呆然としてしまった。



昨日、あれからウィリアム殿下と沢山話をして


お互いの気持ちを確かめ合い、二つの事を約束した。


一つ、余剰魔力を吸収するとしても、過剰な接触はしない。


一つ、わたしは再び殿下と食事を共にすること。


これらの事を話しているうちに、


殿下の顔色が悪くなってきたので、慌ててライアン様を呼んだ。


そうしてわたしはその約束の一つを守るために


今朝からは再び、食事室に来ていた。


なのにそこに現れたウィリアム殿下の左手腕には


相変わらずリリナ様がべったりと装着されていた。


しかもリリナ様は殿下の手まで握っていた。



どういう事?


これじゃ何も変わらない。


交わした約束はどうなるの?


わたしは何も言えずにただ殿下を見つめた。


わたしの視線に気付いた殿下が思わず笑みを溢す。


「おはようシア。食事室に来てくれたんだね、今日からまたシアと一緒に食事出来ると思うと嬉しいよ」


全く悪びれた様子もなく殿下が言う。


わたしは意を決して言った。


「お約束はどうなってるんですか、それでは昨日までと何も変わりませんが」


すると殿下が少しだけ困ったように言った。


「昨日、あの後やっぱり少し具合が悪くなってリリナに余剰魔力を処理してもらったんだ。体調を戻すためには今日はいつもより接触する面積を多く取った方がいいらしいんだ、だから……」


「そうですよぅ。ウィリアム様ったらアタシから離れるからこうなるんです。今日は一日治療に専念しましょうねぇ」


勝ち誇った顔でリリナ様が言う。



「ごめんねシア、今日だけだから」



わたしは開いた口が塞がらなかった。


リリナ様にそう言われたから従うの?



約束はどうなるの?


昨日のあの真摯な眼差しはみんな嘘だったの?


……でも……あの涙が嘘だなんてどうしても思えない。


昨日の殿下のあの必死さ、あの時だけの気まぐれとはどうしても思えない。


なんだかおかしい。何かがおかしい。



わたしは頭の中を混乱でぐるぐるさせながら


とりあえず朝食を摂った。


向かいの席に座った殿下とリリナ様が


終始体を密着させて寄り添う姿を見ながら食べる食事は、

やはり砂の味がした。




初めて彼女に出会ったのは

母が主催するお茶会の席だった。


その日の茶会に参加する令嬢なら誰を選んでもいいと

言われたが、


僕は誰に会ってもピンと来なかった。


でもその時

婚約者候補とは関係なく、初めて会うイトコとして紹介されたフェリシアを見た途端、僕の心が歓喜に震えた。


見つけた!

この子だ!

僕が生涯かけて守り、慈しみ、そして共に歩いてゆく相手は彼女しかいない!


何故かはわからないけど

僕はその時確信したんだ。


わかりやすく言うと、

要するに一目惚れ、というヤツだったらしい。



可愛くて愛しい僕のフェリシア。


でも何故か彼女は自分の事を平凡の塊だと思っている。


世紀の美姫と謳われるフェリシアの母親には似ずに、

髪の色や鼻の形など特徴的なところが父親似だった為にそう思い込んだのだろう。

(彼女の父親の侯爵もそれなりに美形なんだが)


柔らかくてキラキラしたキャラメルブラウンの髪に

真っ青な空色の瞳。


顔立ちも10人いれば10人が美少女だと評するほど愛らしい。


年頃になり、

華奢なのに出るところは出て、引っ込むべきところは引っ込んだメリハリのある体に成長した彼女に、何度理性を持って行かれそうになった事か。


おまけに彼女はとても聡明で手先が器用だ。


僕には到底理解出来ない魔道具の仕組みを

わずか10歳で理解し、

自らも開発を行い数々の魔道具を生み出した天才でもあるのだ。


そんな賢く、美しいフェリシアを婚約者に出来た僕は

本当に幸せ者だ。



……それなのに、


この頃の僕は、その一番大切なフェリシアを

優先させる事が出来ない。


というか、今まで何を差し置いてもフェリシアのご機嫌ばかりを気にしていたはずの僕が、彼女の気持ちを慮るという事を忘れてしまう事がある。


昨日、フェリシアから本気で拒絶され、

固い決別の意思を突き付けられる瞬間まで

その事自体に気付けなかったんだ。


どうしてだろう……。


考えようとすると、何かが思考の邪魔をする。


頭がモヤモヤしてなんだか吐き気もする程に気持ち悪い。


そんな時にリリナの声を聞くとスッキリするのは、

やはりリリナが癒しの乙女として優秀だからなのだろう。


リリナには本当に感謝している。


余剰魔力の排出が上手くいくと、

こんなにも体の調子がよいものなのか……。


今思えば、

前任の癒しの乙女は僕の魔力を全部処理しきれてなかったんだな。


でも、

いつまでもリリナの世話になるわけにもいかない。


リリナにはリリナの人生があるし、


何よりフェリシアと約束したんだ。


そのために魔力コントロールの訓練を始めた。


訓練はかなり厳しい。


僕の魔力は普通の人よりかなり不安定で

扱い辛いそうだ。


師事している魔術師は魔力コントロール出来るまで

10年は見た方がいいという。


でもそれでは長すぎる。


昨日のフェリシアの感じでは

10年かかる間に捨てられてしまいそうだ。


魔力コントロールの上手い

兄上にも相談しながら頑張ってみようと思う。


それがフェリシアと僕、二人の願いだからだ。





ウィリアム殿下の様子がおかしい。


明らかにおかしい。


今までは殿リリ(殿下とリリナ様の略)の姿を見たくなくて

接触を避けていたから気付けなかったけど、

よく見れば殿下の言動がちぐはぐでかなりおかしい事がわかる。


何故?魔法の気配を微かに感じる気もするけど、


生まれてすぐに魔術返しや呪い返しの術を施される

王族に掛けられる魔法などないはず。


「でも……何かあるのよね……」


魔道具の開発を進めたいのにそれが気になって手につかない。


「魔法書に何かヒントがあるかも。サリィ、図書室へ行くわ」


わたしは侍女のサリィに作業着からデイドレスに着替えるのを手伝って貰い、王家自慢の図書室へと向かった。



この王城にある図書室は王族専用の物だが

城に勤める者で、許可証さえ発行して貰えば誰でも利用出来る。


同じ王都にある王立図書館にも負けず劣らずの蔵書量を誇る、王家自慢の図書室。

“室”というには広すぎる気もするけれど……。


本が好きなわたしは、

子どもの頃からからいつもここで沢山の知識欲を満たしてきた。



魔法書だけでも三つの書架がある。


わたしはとりあえず、


一般的には知られていない、禁術とされている魔法について書き記した書を手に取った。


どの魔法書もそうだが、

手に取った魔法書も大きくて重い。


わたしは両腕に抱えながら図書室に設えられている

読書用の机と椅子の元へと歩いていた。


その時

低く静かに、わたしの名を呼ぶ声がした。



「フェリシア様」


驚いて振り返ると

いつの間にそこにいたのか

殿下の側近のライアン様が立っていた。



「ライアン様」



今まで殿下越しにしか会ったことのないライアン様。


こんな風に直接声を掛けられるのは

初めてではないだろうか。



「どうしました?何かご用でしょうか?」


わたしが言うと、ライアン様は更に声を潜められ


自身の斜め後ろに視線を促し、言った。



「……あちらでフェリシア様に内々にお話ししたい事があるというお方がおられます。お会いになって戴けますか?」


わたしに会いたい人?


しかも内々に話したい事?


素直に着いて行って大丈夫なのかしら。


でもライアン様のあの口調、


相手が身分の高い者であると示している。


……断らない方がいい。わたしは直感で判断した。



「わかりました、案内を頼みます」


「ご理解戴き、ありがとうございます」


ライアン様はそう言って、わたしを図書室の最奥の王族専用のスペースへと連れて行った。


コンコンコンと小さく3回、扉をノックをされ、

ライアン様は扉を開けてわたしを中へ促した。


読書をするには全体に的に暗めだが、

手元をライトで照らせば落ち着いて読書に集中出来そうだなと思いながら、わたしは部屋の奥へ進む。


そうして通された部屋のある一画に置かれたソファーに

その人は座っていた。



やはり……



ウィリアム殿下の実の兄。


王太子アルバート殿下の姿がそこにあった。














賛否両論が最も分かれたアルバートが早々に姿を現しましたね。

ターニングポイントを経て、

大きく物語の展開が変わってゆきます。多分。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 魔力コントロールより、教会が侯爵家に圧力かけてるのを婚約を解消する気がないなら王家側がどうにかしないとなのでは? あきらかに結婚の意思をみせてるのに、それを放置って(解決できないにしろ…
[気になる点] ウィリアムー(╬◣д◢)ゴルァ!! (`・д・)σ メッ ( ∩'-' )=͟͟͞͞⊃ )´д`)ドゥクシ [一言] フェリシアが魔力を吸収する魔道具だけじゃなくて、魔力返し、呪術返し…
[良い点] フェリシアとの約束を守るために魔力コントロールの訓練を始めたウィリアムに、すっごく好感が持てました♪(((o(*゜▽゜*)o))) この作品のウィリアムとフェリシア、幸せになれるといいな♪…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ