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陽キャのトラブル、ボッチの憂鬱

まともな休みなどいつ以来だろう。希望に満ち溢れて希望した職場。しかし、実際はというと、召喚被害者の支援とは名ばかりの行方不明者の捜索と、その家族のクレーム対応が主な仕事だった。そもそも、召喚されて帰還した者の話しから知られることになった異世界。普通の人間には理解することも難しい。故に、省の存在は誕生する前から疑問視されていたし、単なる家出だったような相談も日々受けていた。

「魔法が無い(とされていた)世界で魔力探知機が発明されるってすごいよな… あれのおかげで、仕事がだいぶ楽になったっけ…」

同僚の功績を思い出し、自分のやってきたことと比較して、さらに気分が沈んでいく。今回は自分が活躍する番と意気込んではみたが、異世界勇者のスペックの高さに『勇者の御供』にすらなれていない。

(最初の町の宿屋だよこれじゃ…)

気分転換に外に出てみたものの、きらびやかな街の雰囲気に追い討ちをかけられてしまった。学生時代はバイト、就職してからは仕事。こういうイベントとは縁がない人生。耐性が無さすぎて人々の笑い声すら自分への嘲笑のように聞こえてしまう。

(ダメだ… ご飯だけ買ってさっさと帰ろう…)

足早に、いつものスーパーに向かう。先日、サフィニアと来たときよりはクリスマスムードが薄れて来ている。というより正月の売場が増えていた。自分としては、誰にも等しくやってくる正月というものはありがたいとさえ思える。

お昼前、まだ値下げされてないパーティー用のオードブルや寿司などがメインに並ぶ。お一人様向け商品は少ない。ついいつもの調子で入店してしまった。少量で値下げのものを買っていると、こういうイベント商品がとんでもなく高額に見えてくらくらしてくる。 (くそっ! もうヤケだ。ヤケ食いだ!)

ちょっとお値打ちのするローストビーフを買い家路を急ぐ。サフィニアにおねだりされて契約したサブスクで、見たかった映画を見ながらローストビーフを食べる。主人公たちが食事をしながら飲んでいるワインがあまりにも美味しそうに見えて、いつの間にか自分もコルクを開けていた。昼間から酒なんて初めてのことだ…



♪♪♪♪♪

「ん… ん? サフィニアから電話だ…」

気づけばすっかり夜になっていた。頭が痛い。飲み過ぎだ。ローストビーフは食べ尽くし、ワインの瓶も3本目が開いていた。

「もしもし、どうしました?」

「すまん!サクラ!トラブルだ!会場まで来てくれ!」

一気に酔いが覚めてタクシーで急行する。再びサフィニアと連絡を取ると、ライブ終わりの打ち上げに誘われ、メンバーの一人と二人きりになる場面があり、そこを週刊誌に撮られたと。なんでもないと説明するも、気づいたファンたちに取り囲まれて『口撃』を受けてしまい、仕方なくまだ片付けをしていた会場の控室まで逃げ込んだとのこと。向こうのマネージャーからも謝罪の連絡が入る。合間にSNSをチェックすると、既にかなりバズっていてトレンド入りしていた。

(私のミスだ。付いていかないまでも、想定出来た事象だ。いくらでもアドバイスしてやれたのに…)

「もしもし、直ぐに会見を開きます。ライブ会場を引き続き使えるように手配を…」



「疲れた…」

「油断していた。すまん」

「こちらも皆で行動していたので、すっかり油断していました。申し訳ありませんでした」

皆が頭を深く下げて謝罪してくる。直前まで酔って寝ていた身なので歯痒い。

「やめてくださいよ~ 私もちゃんとサポートしなければならない立場だったのに… まぁ、ちゃんと訂正出来たので万事OKです」

現在のSNSは捏造記事をでっち上げたとして、週刊誌が悪い意味でバズっていた。少しは懲りてくれるといいんだけど…

「しかし、今宵のサクラは格好良かったぞ。早々に会見を開き、群がる記者をバッサリと斬り棄てた」

「あれは凄かったですね。私たち芸能関係者ではマネ出来ない芸当。感服いたしました」

だから誉めないで!酔っぱらいなんです(泣)

気恥ずかしくて逃げるように退散させていただいた。こっそりマネさんと連絡先を交換したのは勇者様には内緒。推しのタレントさんにいつか会わせていただく約束♪

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