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再繋《RE:コネクト》

あれから2日経った。昨日は急遽休みを頂いた。これまでの疲れやらなんやらが、気が緩んだことで一気にきた感じだった。あと、恥ずかしさと、なにも教えてくれなかったことへの当て付け。

休むと連絡を入れると、大臣が電話に出て「ごめんね」と謝罪をしてくれた。でも、今回ばかりは許しませんからね(笑)

サフィニアとリナは私に話していないこと自体忘れていたようなので、この二日間完全に無視を決め込んだ。当番も放棄です。罰です。私、あなた方のおかげで病人なので(笑)

しかし、カドマツも「なんとなくそうなのかも」って思っていたなら、もっと早く言って欲しかったよ。最近は、なんだかんだでお互いの偏見がなくなって、いい関係を築けているような気がする。少しだけ。


さて、二日もしっかり休んだことですし、仕事もだいぶ溜まってしまっただろうから、気合い入れて頑張りましょうかね!

「おはよう! 朝ごはんにするよ!」

扉の影からこっそりこちらを見る二人に声をかける。顔を見合せ安心し、子供のようなほっこり笑顔でテーブルに着く。

「いただきま~す」

カリカリのトーストにベーコンエッグをのせたものと、卵スープ。温野菜のサラダにはクルトンをちらしてシーザードレッシング。サボった分だけちょっと凝ってみた。

「んお? このトースト、少し鼻にくるものが… しかし旨い! クセになる!」

特製のカラシマヨネーズを塗ってあるのだ。このトースト、大好きなんだよねぇ♪

「サラダも少ししんなりしたお野菜に、チーズ風味のソースが密に絡んで最高でありますわ。この… クルトン? というものも、素敵なアクセントで食欲がそそられますわね♪」

そうそう。温野菜ってとこがポイントなんだよね。ってか、ちょっと誉めすぎ。さすがにわざとらしいわ。嬉しいけど♪


「さあ、今朝は時間に余裕があるから歩いて出勤しようか」

最近はリナの転送魔法があるので、ギリギリまでまったりしていることが多かった。おかげで運動不足が進み、おまけに地域交流も減っていたからね。せっかく天気もいいし、気持ちよく歩いていこう。

ひんやりとした空気が肌を差す。鼻から入った冷気が全身に染み渡るような感覚。魔法無しの生の感覚だ。久しぶりの当たり前のこの感じ。心地好いなぁ…

商店街を歩いていると

「おう!サクちゃん、勇者さん。久しぶりだな!」

と魚屋のおっちゃんが声をかけてくれた。

「久しぶりである御主人よ!」

「いやあ、ほんとにお久しぶりになってしまって。魔法は便利だけど、地球人類にはちょっと危険みたいです」

「はっはっは! ちがいないねえ! で、そっちがその危険な魔法を使うっていう大賢者様だね?」

「サントリナですわ。以後、お見知りおきお願いいたしますわ」

魔法をちょっとディスってみたが、リナは当然のこととのように話を流す。慣れてるねえ。

そんな他愛もない会話をしていると、他の店のシャッターも開き始め、次第に人が集まってきた。

「さすがはリナだ。あっという間に人気者だ!」

お前もな。この辺りの一般人にとっては芸能人と同じようなもんだからな。この人気と人だかりは当然だろう。直ぐに帰るものと思っていたから、こういう地元民との交流も怠ってしまっていたんだよね。これからは大使館長としてしっかり働いてもらわないと。



「は?」

「うん。だからニーレンベルギアに視察に行って来てほしいんだよ。サフィニアくんたちも、一回ちゃんと帰らないとだし、ついでにね」

大臣のあまりにも急な提案。ほんとにいつも唐突だ。

「もちろん、今日や明日の話しではないよ。いろいろ準備があるからね。君たちも私たちも」

それはそうだ。普通のことだ。「今日から異世界勇者と暮らせ」と言った人と同一人物とは思えない常識的な発言だ。

「というか、そういうのって普通、大臣が行きません?」

「なんだけど、僕が行っちゃうとさ~ 君、上の連中をうまく捌けるかな~って」

たしかに。いまだに多方面から口撃を受ける異世界召喚省。この人だからこそ理不尽な物言いにも上手く立ち回ってこられたのだ。まだ私には荷が重すぎる。

「それに、サクラくんってけっこう有名人なんだよ? ぶっちゃけ君が行く方がウケがいいし。あと、部下を成長させるチャンスだよ。引き継ぎ、ちゃんとやっておかないとね」

有名人… あいつらと一緒にいろいろやったからな… 私は静かに暮らしたいんだけどなぁ…

しかし、最近やっと増えた部下。彼らが私無しでどこまでやれるか。きっちり仕込んで見届けようじゃないの!



「そうか。一緒に来てくれるか!」

「楽しみでありますわ♪」

夕食の会話がはずむ。

「この前は王様への挨拶もちゃんと出来なかったし、お前らの国を直に見られるのも楽しみだよ」

「そうだな。サクラは大泣きして会話にならなかったからな!」

サフィニアがからかってくる。リナもクスクス笑う。カチーン。大泣きはしてねーし! そっちがその気なら…

「そうだね。ちゃんと話せなかったからね。ちゃんと報告しないとだよね~ いろいろあったもんね~ 血のハロウィンとか、総理官邸襲撃未遂とか、熱愛報道とか、初雪遭難事件とか、トイレ大公開祭りとか…」

「わー悪かった!私が悪かったから絶対やめてくれ!何卒、何卒ー」

サフィニアが椅子から飛び降り土下座で祈る。リナは赤面して両手で顔を覆っている。うん、私の勝ちだね♪

「さ、いいからさっさと食べてしまおう。私の当番の時はダラダラさせないよ!」

たった3ヶ月の間にいろいろなことがあった。思い出に浸りながら夜は更ける。あちらでは、どんなことが待ち受けているやら…


「あ、リア充大爆発事件もあったわ」

「やめてくれー!!」

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